作戦12
全体重を乗せて鉄塊を振り下ろすが片手の槍で防がれて逆に吹き飛ばされる司。
「(だんだん追いつけるようになってきた・・・けど火力が足りねえ!)」
トリシュが接近するとその間に壁が現れ直撃を回避する。
「ちっ」
直撃を回避しているだけで完全に避けきれているわけではなく、トリシュの槍が切り傷を作る。
「3体1でこれとか情けないなぁ!ゼロワン。前も出来ねえ俺のように後方支援も出来やしねえ。後ろから援護してくれてる2人はどう思ってるのかねえ?情けないと思ってんじゃねえの?俺みたいにさ」
その言葉がただこちらを惑わすつもりで言っているのは無我夢中でトリシュに噛みついている司でも分かったが、それでも実際は・・・という心が司の視点を2人へと変えさせた。
実力に差があっても不意を突かれれば強者でも弱者に負ける事があるのだ。弱者がそんなことをすればどうなるか、考えるまでもない。
壁が砕かれ破片と共に司の右腹部を襲う。
「・・・・・・・・・———!!!!!」
抜き取る事はなくそのまま差し込み奥へ奥へと身体の中に入っていく。こうなれば試作品5号たちの能力では止められない。
槍を回して傷口を広げていく。顔が痛みで歪む。
だがそれも織り込み済みだったのか、空いた左手でトリシュを掴むと2人に声を上げる。
「囲え!」
それだけで2人は司が何をしたいのかを理解し司たちを囲う。
囲いは非常に狭くそれ以上の動きを取ることが出来ない。
防御も回避も出来ないこの狭さなら有利不利の差を小さくなっている筈だ。
トリシュもならばと槍を押し込んでいく。どう見ても司の方が不利だったが、まだ考えがあるのか諦める様子はない。
「(まっちゃんごめん・・・!)パワードスーツ強制解除!」
言葉をスイッチに上半身に残っていた装甲を拡散させる。腹部位はあまり吹き飛ばなかったが、残りの部位はしっかりと弾けてトリシュに細かい刃が突き刺さった。
拡散し切る前に反応してはいたものの、トリシュを放すことなく食いしばって掴んでいた司の腕力に勝つことは出来ずに直撃を身体中に受けた。
小さかったが声が漏れる。
「トリシュ・・・・・・俺はお前とは戦いたくない戦うとしても傷つけたくない。頼む、これ以上は・・・!」
傷で左目を閉じたまま今度はトリシュの番だと言うように更に力を込めて槍を押し込む。
「ぐっっっっっっ!!!!!トリシュ!」
パワードスーツの強制解除で無線連絡も出来ず、この囲い自体の狭さで動きことも出来ない。力でも負けている。だがまだ勝つ手はあるはずだ。破片で止まるとは思っていなかった。
「右足にトロワを武装同調!膝を骨大剣へ!痛いだろうが我慢してくれ!」
膝が変形する。いや正しくは骨が飛び出してその骨がまるで大剣のようになっているというべきか。司は乗られている状態だった為膝は動かせない。膝部の骨のみが皮膚を突き破って来たのだ。
「シックス!!!!!」
囲いが消えていく。大剣を突き刺したまま残った手足で身体をなんとか起こして次の指示を出す。
「ゴーファイブ!!!!!」
四方八方から一斉に弾丸が司ごと襲いかかる。こうでもしなければ司では止められなかった。2人も理解した上で可能な限り司に当たらないように狙いを定めて銃を撃った。
ズシャズシャズシャズシャズシャズシャズシャズシャズシャズシャズシャズシャズシャズシャズシャズシャ!!!!!!!!!!!!!!!
飛んだ銃弾のいくつかは司を貫いたが、その貫いたものも含めてほぼ全部がトリシュを襲った。
「ぐふっ・・・・・・」
トリシュの口から血が流れ溢れる。今度は決まったと確信して右膝の大剣を抜き取り、呼び出したトロワに押さえ込ませた。カオちゃんやチェンちゃんが奪われた筈だがなぜトロワが取られなかったのか。今は知ることではないので後で考察すればいい。あとはオリジナルを倒すだけだ。
飛び出た膝のまま身体を震わせながらも立ち上がり、小型の鉄塊を作り出す。
「あとは俺だなぁ!試作品!だがその足でどうやってここまでたどり着く?近寄れたとしても返り討ちに遭うだけだぜ?」
「そんなこと元から考えてる!俺は少しぐらい頭は使ってる!」
オリジナルの周りに壁が出来る。どうするのかを見る為なのか、余裕があるのか。おそらくは後者であろうが、なにかを構えることもなく壁に包まれた。
そして声を張り上げるオリジナル。
「さあ見せてみろ!試作品9号の時みたいに俺を殺してみろよ!」
「2人を助けるためにお前を・・・自称オリジナルのてめえをぶっ飛ばす!」
そう叫ぶと機能しない右足を前に突き出してオリジナルへと向かった。