表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
幕間一
81/138

幕間一の6◆亜人4(ミノ太)

 俺、ミノタ。

よろしく。


 俺、頭、あまり良くない。

理由はある、だけどどうにもならない。


 俺、実は転生者。

でも、いい方向には働いていない。

逆に、邪魔。


 俺、マスターに会った頃から、武器作って持ってた。

これ、前世の記憶のお陰。


 ただ、問題ある。

今は、単に邪魔にしかならない。


『おいおい! 邪魔はねえだろ! 邪魔は!』



 この、ウルサい奴が、俺の前世の人格。

名前、ザムス。


 マスターの配下になった時、俺、人格、得た。

でも、前世の記憶、放置されてしまった。


 マスター、そして隊長、二人から知識得た。

それに刺激されて、前世の人格、別で復活した。


 他の、亜人三体に比べて、俺、頭悪い。

予想としては、考える力、大半がザムスが持って居る。

俺、全然考える力無い。


『おいおい! 俺のせいかよ! まぁ、確かにそんな思考能力じゃ厳しいな。俺といい加減代われ? な?』


いつも、この流れ。

正直、ザムス邪魔。




 ☆ ☆ ☆




 マスターから、魔物と戦う訓練、やるように言われた。

俺、頑張っている。


 元々は、暗器、得意。

でも、暗器、基本的に、威力小さい、リーチ短い。

不意打ち以外、あまり、有効じゃない。


 俺、皆の盾役。

みんな、俺が、守る。


 マスター、俺の為に、斧くれた。

片手と、両手用の、両方。


 俺、片手の、選んだ。

盾と、片手斧。


 盾、裏に、色々と仕込んでもらった。

あと、小手、格闘戦用。


 防具は、革メイン、部分的に金属。

頑丈、でも動きやすい。


 今日は、勉強の後、戦闘訓練。

俺、頑張る。

でも……中々上手く行かない、少し、悲しい。




 ☆ ☆ ☆




 俺、勉強、頑張った。

でも、やっぱり、覚えが悪い。


『大丈夫だって! 俺が覚えてるからよ! だから早く代わってくれよ~』


ザムス、相変わらず、ウルサい……。


 いつものやり取り、でも今回は少し、違った。

隊長が、こちらを睨んでいる……。


「……ミノタ、その五月蠅いの何?」



 俺、正直に、話した。


「……五月蠅いから、邪魔。……消す」


そう言って、集中、《無限浸食》によって、浸食する。

浸食した後、更に圧縮する。


『おいおい! 止めてくれ! 俺が! 俺が消える! 真っ暗闇だ! おい!! 止めてくれ!!!』


ザムスが喚く。

でも、隊長は止めない。


 ザムス、静かになった。

浸食された、ザムスだったもの、感じる事が出来る。


「……それ、もう思考能力は無くなった。魔素と私の記憶で潰した。もうくっついても大丈夫」


隊長、そう言った。

ザムスだった物、何とか、くっついてみる。


 精神的な物の感覚、距離が見えない、近寄るの、難しかった。

でも、なんとかなった。


 ……触れた瞬間……一気にもやのかかっていた俺の思考は一気に晴れた。

ふむ。

何故、あんなに考える事に苦労していたのかが分からない。

そんな気分だ。


 今までの記憶は勿論ある。

それに加えて、ザムスの記憶と隊長の知識も同時に理解出来た。


 ザムスは隣の大陸の暗殺者だった様だ。

比較的平和なこの大陸でも、マスターが被害にあった事があるように、貴族の間には色々ないさかいの種はいくらでも転がっている。

そうした暗部に生きた男、それがザムスだった。


 ザムスの知識を得て、俺の暗器への理解度は一気に上がった事が認識出来た。

加えて、マスターの《格闘術(異世界)》についてもだ。

その事を隊長に伝えると、


「……それ、使えるかもしれない」


そう言って、隊長はオガキチに向けて《無限浸食》を使った。


 先程の攻撃的な高密度のものでは無く、特定の方向性に従った規則正しい知識……そんな感じを受ける。


「……オガ吉、調子が悪い所はある?」


「いえ、自分は特に問題はありません。《格闘術(異世界)》についても把握出来ました。これからはこの戦い方も組み込んでいきます」


との事。


 オガキチに行った事は、密度のそこまで高くない魔素と《無限浸食》でスキルに関する知識と感覚を押し付けた感じの様だ。


「……上手く行った。ただ、これはどこまでが危険か判らない。少しづつ……時間を置いてから順次やっていく」


との事。


 マツリには《強弓(多世界)》、ゴブスケには《回避(多世界)》を伝授し、今回は終了。

今後はマスターと相談しながら順次行うという事だ。

……マスターに確認せずに新しい事をやるのはリスクが高すぎるので、これからはその方が良いと俺も思う。




 ☆ ☆ ☆




 何と言うか……ようやく俺も生きて居る感じを得られた!

いや~、本当にザムスが居た頃は感覚は鈍い、思考能力は貧弱、記憶力は小鳥並みと言わざるを得ない状況だったからきつかった!


 何とか魔法の習得だけは出来ていたから良かったものの、それが出来て居なかったら本気でお荷物だっただろう。

良かった……本当に良かった!


  さて、俺もようやくまともな状態になったので、色々と確認して行こう。

《浸食共有》についてだが、これは中々面白い物だった。

今まではマスターから魔法具を通して魔素を供給して頂いていたが、現在は《浸食共有》で直接隊長から送り込まれて来る様だ。


 それに加え、MPも受け渡し可能。

これはとても意味が大きい。

何故なら、オガキチは殴りながらどんどんMPを吸収出来るからだ。


「……これ、凄く便利。オガキチのお陰でMP、無くならない」


と言う隊長からのお墨付きすら頂いている。


 更に試した結果、隊長が《ショートカット》と言う物に設定した魔法が、俺達でも同じ条件で使用可能な事も判った。

正確には、自分が使える魔法であった場合に無詠唱で使える……かな。


 正直に言えば、俺達が使える魔法系統は各自一つ。

ゴブスケだけが最初からあった為に二つだ。

しかもこれらは全部が別系統。


 そうなると八個しか無いらしい《ショートカット》ではあまり効果が無いと言う事になるのだが、一つだけとても有効な魔法がある。

《フルブースト》と言う魔法だ。


 《フルブースト》は四属性のブースト魔法を同時に発動させる。

ただし、時間は短くMPは馬鹿食いする魔法である為、普通は有効では無い魔法なのだが……魔素を供給する事で時間はほぼ無制限になる。

では、俺達が使った場合どうなるのか?


 結果は、MP消費はそのままで自分が持つ属性だけ発動する。

そうなると、効果は一つなのに四倍以上のMPを消費する訳だが、戦闘開始時に無詠唱で強化できるメリットは計り知れない強みとなる。

しかも、隊長の《自動MP回復》&《自動MP回復(極大)》に加え、オガキチの《闇の魔手》によるMP吸収効果で回復が可能。

使わない方が損と言う物だ。


 しかも、《フルブースト》発動時に魔法の発動可能範囲内の相手には、コストが一倍増えるだけでブースト効果が発動する。

要は、俺が《アースブースト》の効果を得る際にゴブスケが範囲内に居た場合、四倍が五倍になるだけでゴブスケにも《アースブースト》を発動できる。

同時にゴブスケも《ファイアブースト》を発動して居れば、五倍で俺にも効果が出る訳だ。


 戦闘開始時に居る位置ならば、大抵は効果範囲内に居る。

これはどう考えても有効だと言える。


 まぁ、隊長を除く全員分を使う為には七倍のコスト。

結構重たいコストなのは確かだ。 

それ故、基本的にはオガキチが《ウィンドブースト》を全員に使うかどうか程度に抑え、強敵が出た場合には全開で行く方向が良いだろう。


 因みに、一度発動させたらそのままで行くと言う事も実行してみたが、これはマスターや隊長の様に直に魔素を供給できる方達以外は燃料切れで途切れてしまう上、ブースト状態に慣れて居ない為か疲労感も酷かった。

結果、今の俺達には無理。


 このまましばらくはここで腕を磨く事になる訳だが、正直な所……そろそろ相手が弱く感じてはいる。

その点も、次回マスターが来た時に隊長に進言して貰おう。


 こうしてザムスから解放され、晴れ晴れとした日々がこれからも続く俺は……上機嫌で魔獣に格闘戦を挑んでいくのであった。

よし、まだまだ行くぜ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ