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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第三章
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59◆エルナリアの街への迷宮設置に対する根回しみたいな事

 シェリーを狙っていたのがヴァルツァー五爵である事と、現在は王都の軍でその対策を立てている筈だと領主達に伝えた。

軍の邪魔をしないように、私達は出来るだけ関与しないで様子を見るように指示を受けている事を伝えると、領主からは了解したとの答えが返ってきた。


 さて、これから色々と準備をする事になるのだが、まずは師匠に手伝って貰って魔送流の腕輪(仮)と同じ仕様の物を作っておきたい。

それも含めてまずは相談かな。


「領主様、幾つか相談しておきたい事はありますが、まずはお願いしたい事が一つ。護衛の際に使用した三個の小屋を全て譲って頂きたいのです。勿論相応の対価を支払います」


私がそう言うと、領主からはすぐに了承を得られた。


「我々が持っていても有効に使る物でもないし、護衛が終わった後でもこのまま繋がりを持てるのであれば、譲る事に何の問題もない。そもそもあれの作成費用すら、エル殿が作って余剰した魔法具の売却だけで全て賄えてしまっているしな」


そういや、そんな物もあったな。

私的には自分の為に熟練度を上げた際の副産物なので、自分とは無関係で行く気だったので殆ど気にしていなかったが。


 さて、ルーク達の事は言ったし首謀者についても伝え、小屋も話が付いた。

後は、迷宮に対する領主の考えを聞いておくかな。

と言うのも、色々考えた結果、ジムルの所には迷宮本体を置かないほうが良いと言う結論に至っている。

理由は、あの場所には女神関係の光る岩があった。

あれが魔法物質を使用していないと言う確証が無い。

余計な事をする危険を考えると、あそこには扉だけの方がいいだろう。


 そうなると、実家に一つ、移動迷宮にもう一つは確定として、近いうちに作れるはずの第三迷宮をどこに置くかが問題になる。

私達にとって魅力が無い所に置いても意味が無いので、私としてはこの街の近くを候補地に考えているのだ、

一番の利点は、シェリー達がいつでも安全にエルナリアの街へ戻れる事。

最初は私の実家に馬車を常備して往復してもらう気だったが、迷宮の数が複数持てるなら話は変わる。

扉だけを置いても良いのだが、可能であればここの近くにおいてしまう方が都合が良いのだ。

そこで、


「領主さま、一つお聞きしたい事があります」


「なにかね?」


「護衛の最中に迷宮を持つ魔術師と遭遇した事は先程話しましたが、その時に私は迷宮を作る能力を得て居ます。そこで、この街の近くに迷宮を作ろうかと思うのですが、それに対する領主様のお考えを聞きたいのですが」


そう私が言うと、少しだけ領主が考え、


「街の近くに迷宮がある事は、街が発展する可能性の一つであると言われている。王都もそうだし、迷宮を擁する街は基本的に豊かだ。勿論ある事は望ましいが……ルーク殿の件はどうしても爵位を得る事が前提となる為、そこまでして頂いても私が利するだけになってしまい、エル殿は得る物が無いと言う事になる可能性もあると思うのだが……」


と言った。


 領主の認識は正しいと思う。

迷宮は魔物が居て危険に感じられるが、実際には魔物が外へ出ない為に危険は無い。

この理由は、迷宮が吸収する為に周囲の魔法物質は濃度低下が激しく、その濃度は通常の三割程度まで落ちる。

魔法物質は大半の魔物にとって空気と同じ様なもので、常に吸収して消費する為に、生きる為に無くてはならない物の一つである。

そして、魔物はこの三割の魔法物質濃度の中では生きていけない為、必然的に周囲は安全になるのだ。

街の中での魔法の使用を考慮するなら少し迷宮から距離を置いて街を作り、逆に魔法を必要としないのなら、迷宮の近くに街を置くと魔物に襲われる心配も無くなり、安全に生活できる様になるのだ。


 繁栄に関しては、迷宮が産み出す素材は街で流通して商人の出入りが激しくなる。

売り買いが激しくなれば、そこで利益を上げる為に街に居ついて商売を始める者が現れ、人が増えれば食料の消費も増えて更に流通が増す。

活気が出れば冒険者も集まり、素材の産出が増えて更に商売の拡大に繋がる。

冒険者が集まれば、当然それを相手にする店が増え、腕の良い鍛冶屋等の技術職人の流入がおきて街自体の技術力も向上していく。

あるだけでそこに富を約束する物、それが迷宮なのだ。


 一つしか迷宮を持てないのであれば流石に私も考えはするのだが、爺の文献には迷宮を四つ支配していた不死族の魔術師についての逸話が載っていた。

不死である事を有効に使い、長い年月をかけて熟練度を上げたのだろう。

何代か前の勇者に討伐された時に、四つの迷宮を駆使して戦い続けていたらしい。

この事から、最低四つまで持てるのは確実。

予想では三個目はそう遠くないうちに手に入るはずだ。

根拠としては《迷宮創造》の機能を使用する際に、時々意味が分からないゲージのような物が見える。

最初は本当に意味が分からなかったが、二個目が作れるようになったタイミングでゲージがマックスになっていたので、このゲージが進捗度を示していると予想している。

実際にこれが次の迷宮獲得までの物だとしたら、次の獲得までそれ程時間はかからないはずだ。


 領主としては迷宮があった方が勿論良いが、後でやはり他へ移動なんて事になった場合に問題が起こる事は確実。

私の意思をしっかり確認しておかなくては、簡単に話を進める事など出来ないのであろう。


「迷宮をここに置く事には幾つか意味がありますので、後で迷宮の撤去などと言う事は致しません。そもそも、私は現在二つの迷宮を作れます。ここに置く予定なのは三つめの迷宮となりますので、領主様が思っている程の重要性は無いのです」


流石に三つ目と聞いて、全員が最早呆れて笑うしかないと言う顔をしていた。


「それならば是非ともお願いしよう」


こうして領主からの賛同を得られた。

細かい決め事は後で詰めて行こうと言う事になり、領主は次の用がある為に今日はここまでとなった。




 ☆ ☆ ☆




 取り敢えず、村へ戻る前にやる事は魔送流に腕輪(仮)の生産だ。

これは相当数作っておきたいのだが、私一人では作る事が出来ない。

単純に実力が不足しているので、師匠と二人がかりでやっとなのだ。

そして、これを作るのに師匠は一個作るだけでMPが枯渇する。

日数をかけてコツコツ作る必要があるので、出来るだけ毎日作りたい。


 予定としては今日一つ作り、明日も午前中にもう一つ。

作り終えたら村へ移動を始めるのだが、歩きで三日かかる道中も今なら頑張れば丸一日程度で着く。

明後日は村で移動迷宮を破棄してから迷宮を作成。

迷宮が出来たらジムルの家へ行き、扉を設置してから向こうの迷宮を破棄する。

その後は移動迷宮を作り直すか、エルナリアの街近くに作ってしまうかは状況次第かな。

どちらも利点があるだけに今は悩んでいるし、その段階で三つ目の迷宮が作れる様になっている可能性も否定は出来ない。

まぁ、流れに任せましょう。




 ☆ ☆ ☆




 師匠の工房はそのまま存在するが、領主館にも同様の工房が存在しているようだ。

私はそこにお土産の素材を置いていく。


「これはまた……とんでもない状況になってるわね……」


私が出して行く素材を眺めながら師匠は呆れて居た。


 各種魔石を魔素でランクアップさせた物を大量に出す。

次にアイアンゴーレム産の鉄を十体分や、シルバーゴーレムとゴールドゴーレムの両腕を魔素で融和性の向上を行った物を出す。

金や銀は表面にメッキの様にする事で、装飾品として加工出来るのでとても重宝される。

この世界では魔法具に貴金属をメッキ加工する事は、価値の向上とされるものが多いので重宝する。

魔法具は融和性の兼ね合い等があるので、アクセサリー等でも魔石と融和性の高い素材がそのまま使われる事が多く、鉄や銅や木材等に直接魔石を嵌め込んだ物も多い。


 その他にも、爺の迷宮や自分の迷宮で得られた品を多数置いていった。


「まぁ、この後しばらくは私の依頼を受けて貰う事になるので、その支払いだと思ってください」


「分かったわ。それで、どの位の数を作るの?」


「まずは十個程度、その後も余裕を見てそれなりに作って行きたいですね」


そう言うと、師匠は快く引き受けてくれた。

それじゃ、まずは一つ目の作成と行きましょうか。

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