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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第二章
22/138

22◆実戦での感想はまだまだこれからと言う感じ(想定通り)

 《フルブースト》を使って駆け出した私だが、《識別》を使用して無い事を思い出して使った。

師匠に聞いた話だと《識別》は熟練度で見える項目が増えるらしいので、新しい敵には随時使う方が良いらしい。


オーガ族:グリーンオーガ:男 LV18

 特殊情報:《剛力ごうりき》《再生(小)》


レベルは18か。

私より下ではあるが、魔物のレベルは同レベルだとパーティーで戦う強さらしいので、普通に考えれば格上だ。

しかし、どうも負ける気がしない。

自分の動きが、スピード以外はまだまだ鈍いのは理解している。

しかし、それでも尚コイツの攻撃が当たる気がしない。

まぁ、それでも安全を確認する為に、取り敢えずは様子見をしてみる事にする。


 ちなみにコイツは亜人と呼ばれるタイプの魔物だ。

基本的に亜人とは、知性が低い人型の魔物の総称となる。

ゴブリンやオーク、リザードマン、ミノタウロスやラミアといった人間の特徴を持つ者達で、基本的に人間と意思の疎通が出来ず好戦的。

ラミアと同じ様に上半身が人間で下半身は蛇ではなく魚であるマーメイドは友好的で交流もあり、エルフやドワーフと同じ妖精種として扱われる事からも意思の疎通の点が分かれ目のようだ。。

これらに加えて種族的分類としてはもう一つ、獣人種が存在する。

この種族は内部で二種類に分類され、獣寄りか人寄りかで見た目が全く違う。

獣寄りは身体能力が高く、獣が二足歩行となった姿をしており、人寄りは人間に獣の耳と尻尾がある程度。

獣寄りはあまり人間の街には出てこないで自分達の集落に住み、人寄りは比較的多く街で暮らしている傾向がある。

これは人寄りの獣人は集落では身体能力の関係で、お荷物扱いされる事が多い事に由来する。

逆に獣寄り獣人には集落での中心的な立場やプライドの点から人間の街はあまり好まない。


 さて、この目の前に居るグリーンオーガは森林地帯に多く、水と土属性に強く、火属性に弱い。

これは色付きの個体特性らしく、属性魔法習得での耐性上昇と傾向が異なる。

ルークは弱点を突くために《ファイアジャベリン》を使用したようだ。

グリーンオーガは一瞬怯んだが、すぐに立ち直ってこちらを迎撃する体勢を取った。

掴まれるのは、恐らく不味い相手だ。

私は真っ直ぐ向かってから直前で方向を変え、左側へ姿勢を低くしてから足を引っかけるように蹴りを入れてすれ違う。

相手がバランスを崩したのを感じて、即反転する。

こちらを攻撃出来る状態では無い事を瞬時に判断して、脇腹に爪先からの蹴りを一撃、即離脱。

相手が足を掴もうとして居たが、その程度の速度では私について来る事は出来ない。

しかし、そこで敵スキル欄に文字が浮かぶ。


スキル:握り潰し…………聖眼獲得率40%


よっし! これは使えそうな予感がする!!

若干顔にも喜びが滲み出てしまった気がするが気にしない。


 そこからは完全に私のやりたい放題だった。

蹴っては離れを繰り返し、《握り潰し》を誘発させて聖眼の確率を上げる。

100%になったら即獲得。

獲得したが、手を握り込んでもあまり違いは感じられない。

スキルが低いからかな?

そう考えながら蹴った後に適当に掴めそうな箇所に手を伸ばして、一瞬掴んでから一気に離脱する。

その一瞬だけで掴んだ場所が紫色に変色した。

ふむ、掴む瞬間だけ一気に握力が上がる感覚がある。

常時発動では無く、瞬間発動タイプっぽいな。


 その後は特に何も無く、淡々と進んでいった。

基本的に全く私の速度について来れて居ないので、時間は掛かるが負ける要素が無かった。


「流石お姉様、凄いです!」


シェリーがそう言っていたが……正直それ程大した敵では無かった。


「これは実戦ではまだまだ使えるレベルとしては厳しいわね。グリーンオーガは精々ランク四で相手する程度の魔物で動きは直線的かつ単純、それを単体相手にこんなに手こずる様ではまだまだね。スピード重視のタイプや技をメインに戦う相手にはこんなに簡単には行かないと思うしね」


負ける要素は無いが、満足出来たとは言いがたい。

今回余裕だったのは、単体だからと言うのもある。

余裕だったからこそ、気を引き締める必要があるだろう。

ついでにルークには、《通話》で更に追加情報を伝えておいた。


『前に魔素を使用して《フルブースト》で蹴った際に私が再取得したスキルがあるんだけど、《格闘術(異世界)》ってのがあるのよ。まぁ私が前世で使っていた戦い方なんだけど、思いっきり現在熟練度が1だったわ……。これから再度熟練度を上げて行かないとこの先役にたたないわね』


正直な所、前世で無意識に出せて居た攻撃が上手く出せて居ない。

熟練度に足を引っ張られているのか、この世界独自の法則による縛りがあるのだろう。

出来るだけ早めに熟練度は上げておきたいものだ。




 ◇ ◇ ◇




 この辺りで遭遇する魔物や亜人は私なら余裕な相手が多い事が判ったので、その後はルークの修行をメインに考えた戦い方にしている。

《危険感知》に反応があった場合には私が御者になり、ルークが開幕は魔法を使ってから接近戦で戦い、幅広く色々なスキルを使用して頑張らせている。

盾等も使い始めているし、様々な状況を考えて色々熟練度を上げて行って欲しい。

頑張れ、ルーク!


 日が暮れる前に森を抜けた。

多少の起伏はあるが魔物が潜める場所は確実に減ったので今日はこの辺りで移動を終わる事にする。

道から少し外れてあまり目立たない場所を探して、小屋を《アイテム》から出した。

ルークが、馬達を馬車から外して馬小屋に入れて行く。

私達女性陣は、先に小屋に入ってお茶の準備をする。

最も私は魔法具へのMP供給や魔素充填があるので、そちらをまず行う。

ルークが中へ入ってくると、シェリーの顔が一気に明るくなるのが見えた。

……私と違って、本当に乙女度全開でわかり易いだ。

あれ程素直に表に出せるのは羨ましいと思いつつ、私には無理だなと悟る自分も居る。

最も、ラナが後ろで睨みをかせているので、ルークはシェリーに対して距離を保とうとしてる節がある。

そこまでルークが気に入らないのか……。

あんまり人に嫌われるタイプじゃないんだけどなぁ、ルークは。


 この場所には面積的に余裕があったので、当然お風呂も全員中に居るのを確認してからルークが設置した。

ルルがお風呂の用意をしに入って行く。

中に入ったルークは、すぐに手を洗っている。

これは昔から、私が徹底してやらせている習慣だ。

前世からの習慣だったが、こちらの衛生状況を考えると家族みんなでやった方がいいと思い、やらせ続けていた。

私も充填作業を終え、《アースシールド》の稼働確認を終えて椅子に座る。

淹れて貰ったお茶を飲み始めると、ルークも同じ様に座って飲み始めた。


「ルーク様、今日もお疲れ様でした」


シェリーが優しく微笑みながらルークを労う。

ルークも嬉しそうだが、その後ろに居るラナの視線が気になるらしく、あまり積極的に話しかける事も無いようだ。

以前、ラナに何故か睨まれていると相談された時には、


「ルルはほんわか、ラナは若干キツイ性格ね」


とは伝えておいたが、シェリーに対して農村生まれの平民が対等に話すのが気に入らないのが理由だと結論付けた様だ。

それ以降ルークがラナに向ける視線は、若干萎縮している様に見える。


「そうなのです。その事について、ルーク様はどのようにお感じになります?」


今も他愛のない話をシェリーに振られて、無難な対応を繰り返す弟が哀れだ……。

ラナとは一度、話をつけないと駄目そうだ。


 この後はお風呂が沸いたら順番に入る事になる。

先ずはやはりシェリーが入り、その際にはラナが一緒に入って世話をする。

次に私とルルが入るのだが、容姿や体型に幼さがまだまだ残るルルはどう考えても妹の世話をしている気分になる。

最後にルークが入るのだが、この時に二階の寝室にラナが上がって行った。

丁度いい機会なので私も二階へ上がる。

カワイイ弟の為に、ちょっとお話でもさせて頂きましょうか。

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