21◆頑張れレイク君、君のことは忘れない!そして私達の旅立ち
旅立ちの日が近くなって来た。
製作者や入手経路は秘密にする約束で渡した大量の魔法具が、王都で売れに売れまくって最初に購入してあった緊急転移魔法具以外の経費がほぼ回収できたらしい。
当然私に対して相当な割合での追加報酬を提示されたが断った。
お金が欲しくない訳ではない。
むしろ早めに欲しい。
しかし、ここで貰うのは不味いのだ。
親和性が高すぎる未知の特性で統一された魔法具が大量に出回れば、当然悪目立ちする。
《付与魔術》で解析していけば、結構色々と看破されてしまうのだ。
そこで、領主に全て押し付けて私は関与しない事により、しばらくは私の事がばれる事は無いだろう。
あの執事の爺さん有能だしね。
そんな面倒なことになるならやらなければ良かったのに、そう言われるかもしれないが、それは違う。
師匠と一緒に居られる内に極力熟練をあげる為には、効率が圧倒的に良いこの手段は最良の手だったと思う。
私独自であの魔石の数を確保出来るのか?
無理だ。
あの数を販売できるのか?
それも無理だ。
熟練度が高いほうが、高い価値を持った品が作れる。
当然の話だ。
要は、面倒な事は全て領主に押し付けて、私はより高価な物を作れる技術を手に入れている。
ギブアンドテイクどころか、純粋に私の為の行動なのだ。
回収できたお金はある意味私の事を秘密にして貰う手間賃だ、まぁ額は大きいが。
それとは別という名目で、師匠には結構な額のボーナスが出たらしいので、私としてはそれだけで満足だ。
師匠には、本当にお世話になってるからなぁ。
当然、私が《ウィンドウ》を得られた結果ではあるが、師匠抜きでは有り得ない修行の成果が現在の私だ。
弟子としての期間は短いが、一生頭が上がらないレベルの恩を受けている。
ここは実家にも近いので、帰省する際には出来るだけ寄らせて貰うつもりだ。
そう言えば、私達より先にレイクが旅立つ事に決まった。
三日後に出発するとの事。
こんなまともに魔物との実践も出来ない場所で育った勇者では、まだまだ一人で旅をするのは難しいと考えた神殿関係者の配慮で、女神に選ばれた仲間が見つかるまでは臨時の随行者を用意するらしい。
それを見送ったら今度は私達の番だ。
しっかり最終確認をしておこう。
☆ ☆ ☆
レイクの見送りはして来たが内容は省略。
まぁ頑張れ、と言っておいた。
「人事だと思って……」
と言われたが、敢えて言おう! 人事だ。
サラバレイク、またいつの日か逢おう!
以上
次は私達の出発だが、やはりと言うか当然と言うか、私達二人だけが護衛という事に決まっている。
該当者が居なかった事に加え、私の行動の酷さに直面して、それで行けると判断したらしい。
余程の事が無い限り、これだけの魔法具があればなんとかなると思うしね。
もし私達が手も足も出ない程の猛者を相手が用意した場合は、最低でも私と同じかそれ以上の追加人員が必要だ。
そう考えると、まず居ない。
すなわち、これで最善だと言う事だ。
☆ ☆ ☆
出発の当日が遂にやってきた。
師匠も一緒に領主館へ行き、《アイテム》内のラインナップのを最終確認してから、こまごまとした出発の準備を終わらせた。
ルークのお世話になっていた冒険者達が領主お抱えの冒険者になった事は聞いていたが、師匠も弟子が居なくなる関係で色々今までと変えなくてはならなかった所で、領主からのお誘いがあって直属の錬金術師になるそうだ。
領主側と一緒に、やる気や素質を考慮して弟子も育てていくらしい。
「弟子も居なくなったし、今後弟子を募るか、仕事を受ける量を縮小したままで行くかを悩んでいたから丁度いいお話だったわ」
執事の爺さんの所で話をしていた師匠に旅立ち前のあいさつに行くと、そう言われた。
正式に決まったのはついさっきらしいので、こんな出発直前まで私すら知らなかった話らしい。
いざ旅立ちの時が来て、領主から宜しく頼むと言われた。
当面はルークが御者で、私含め女四人が荷台に作られた隔離部屋に乗って行く。
この馬車にも《アースシールド》発生の魔法具が装備されているが、小屋用とは別の物だ。
理由は私が基本的に乗っているので、そこまで大容量のタンク用魔石が必要無い事。
そしてもう一つは、私からの魔素供給が常時可能な魔法具の開発が出来ていた為だ。
正確には、開発したと言うより出来てしまっただけだが!!
詳しい仕様説明は次の機会に回すとして、領主館に居るほぼ全員に見送られながら私達の旅は始まった。
☆ ☆ ☆
私達が街を出てから三日が過ぎた所までは順調に何事も無く進んだ。
問題となる可能性はここから高くなる。
ここまでの平地と違い、ここからはそこまでは高く無いとはいえ高低差のある丘や森林が左右に広がる地帯がしばらく続く。
隠れる事が出来る分、様々な生物が潜んでいる。
特に冬を越して飢えに耐えてきた者達はようやく訪れたこの季節を存分に堪能する為に派手に獲物を狩り続ける。
魔法物質で強化された魔物等は特に凶悪だ。
消化器系まで強化されている為にガンガン食べて即消化して次の獲物を探す。
恐ろしき狩りの季節なのだ。
いきなり襲われても馬車に使用されている《アースシールド》の魔法具によりすぐに被害は出ないが、事前に対処出来た方が良いのは当然の事と言える。
この地帯は流石にルークだけでは危ない魔物も出現するので、御者をしているルークの横に移動している。
基本的には私が《フルブースト》を使用した方が対処が速いので、ルークのMPが無くなるまでは私が前衛として動く事にした。
最も、本当の理由は私の《格闘術(異世界)》の再習得を少し進めておきたいと言うのが大きい。
感覚が馴染んでいない為に、どうしても違和感を感じるのだ。
そして、ルークには一つ禁止事項を付け加えた。
どうも楽な戦い方を覚えて、考えて戦う事を疎かにしている感じがある。
《スティールMP》を中心に、昏倒させる戦い方を覚えたルークはそれに頼りすぎている傾向が強い。
確かに強い魔法だと思うが、そこにばかりに頼って他が疎かになって居る気がする。
「《ショートカット》前提で、しかも普通なら使えない闇魔法、その上この先闇耐性がある魔物が出た場合に他のスキルを育てて居ないリスク、良い事なんて何もないわ。一人で仕事させていた時には危険との兼ね合いで止めてなかったけど、私が合流した以上《聖眼獲得値》を有効に使う方向で戦いなさい。ただし! 無駄な行動では無く、使用できるスキルでどう戦えば良いのかしっかり考えて戦う事」
ルークは素直に頷き、御者をしながらこれからどう戦うべきか、それに伴った《ショートカット》構成等を考えていたようだ。
実際には闇魔法を上げる効果は大きいので、そのうち解禁して上手く構成に組み込む様には言うつもりだ。
まずは一度、色々と考えさせる事を覚えて貰ってからなので、早くてもこの旅を終えてからでいいかな。
そう考えていると、ルークが左前方を見た。
そちらに私も集中すると、《危険感知》が警報を鳴らす。
う~む。
やっぱり熟練度の差が出ているな。
私は殆ど魔物との戦闘経験が無いので、どうしても《危険感知》の熟練度が低い。
しばらくはルークに頑張って貰うとしよう。
現れたのはかなりの巨体だった。
身長二百五十cmと言った所か。
緑色の身体を持った人型の魔物。
亜人と呼ばれる、意志の疎通が不可能な相手。
強靭な肉体がボディービルダーの様に膨らんでいる。
恐ろしい程の筋肉の塊に対して、私は敢えて格闘戦を挑む。
《フルブースト》を発動させて一気に駆け出した。
さて、楽しませて貰いましょうか!




