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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第一章
20/138

20◆調子に乗ってそれはもう作りまくったが後悔はしていない

 作業を始めてからしばらく経ち、魔法具の製作も大体落ち着いてきた。

私だけでやれる部分はほぼ終了。

正直、かなり色々やった!

最近はそれだけに留まらず、ランクが最低の魔石は大体二ランク上に引き上げられる事から、それなりに数を用意して貰って好きに色々作りまくっている。


 特に量産しているのは冷蔵庫と送風機もどき、そしてMPタンク用に加工した魔石だ。

まず冷蔵庫だが、氷魔法を付与した魔法具とMPを貯めておける専用の魔石をセットにした物だ。

前世の様に常時冷蔵する感じではなく(保存に関しては冷所に保管する場所がすでにある)、飲み食いする前に冷やしておく為の物と言う感じだ。

特に夏場の飲み物や果物等に使用するようだ。

送風機の方には風魔法は勿論だが、火魔法と水魔法の切り替えが付いており、発熱と冷却機構が付いて居る簡易エアコンの様な仕様になっている。

普通なら、この仕様の魔法具、それも燃料用の魔石ではなく、MPをエネルギー源に出来る物となると使用人が自由に使えるような値段にはならない。

それを格安の魔石を使って、大量に作ってしまって居るので驚かれたのは言うまでもない。


「エル殿、支給した金額ではあれ程の数が出来る訳が無いのだが、本当に大丈夫なのかな?」


領主からそう聞かれたが、私には都合の良い台詞がある。


「ええ、大丈夫です。《女神の加護》にも絡む話ですので詳しくは伏せさせて頂きますが、私のスキルを育てる意味合いが強いので、要求した材料だけ用意して頂ければ今の予算で作らせて頂きます。他にも何かご要望があれば言ってください。作成出来る物ならば作成いたしますので」


うん。

嘘は言ってない。

《魔素の泉》に関しての事は言ってはいないが、熟練度上げとかは《女神の加護》も絡んでるので嘘ではない。

全部言ってないだけだ!

という事で、自分的に納得しておく。

ちなみに大量に作った送風機は使用人全員の部屋に配置されて大変喜ばれた。

更に、違う使い方すら編み出されて愛用されて居る事を聞かされた。

MPの吸収は測定値の九割で固定になって居る。

最低限の回路で構成されて居る為、昏倒防止等の機能は付いて居ない。

これを利用して、何回も吸収させて最後にMP一桁から更に吸収させると0になって昏倒する。

理由は定かではないが、昏倒した場合は必ず六時間でMPが全回復すると共に目を覚ます。

寝付きが悪い人や、目覚まし代わりに便利との事。




 ☆ ☆ ☆




 魔法具の作成もほとんど完了した。

後は小屋に設置した場合の稼働試験や、小屋自体の魔法付与は随時行う事になって居る。

最近は、邪魔をしない程度に良く作業を見に来ていたシェリーが時間に余裕が出来て来たのを知って、お茶の時間に誘って来る様になった。

最初は魔法具作成の進捗しんちょく状況や、その他のたわいもない話をする。

しかし話が一段落すると、ルークの話を聞きたがる事が多い。

十二歳前後と言う年齢。

丁度肉体的にも成長する境目の年齢である三人は、シェリーとラナは幼さは残すものの、身体的な成長は既に十分な所まで来ている。

ルルに関しては……今後に期待と言っておこう。

そんなお年頃の少女、しかも領主の唯一の娘で大切に育てられたらしく、同年代の男の子と話した事が無いらしいシェリーには、ルークは結構な衝撃だったらしい。


「ルーク様に初めてお会いした時は驚きました! 少し緊張なさっておられましたが、誠実でお優しい方だと言うのはすぐに判りました。その上、あの御歳おとしでは考えられない程の実力をお持ちだと聞いて居ましたし、私も初めてお会いした時から、鼓動の音が聞こえはしないかと思うほど胸が高鳴るのをいつも感じています」


箱入りのお嬢様がいきなり会うには年齢も実績も強烈過ぎたか……。

この街の一般的な冒険者が、二日間でクリムゾンベアを三匹とか有りえないしなぁ。

護衛任務の移動時は馬車の中と外なので余り共有する時間が無いから良いが、小屋に入った後は少し気を付ける様にしよう。

このテンションを維持したままだとしたら、一寸ちょと不味い方向に暴走されても困る。

そして気になる点としては、ルークの話をシェリーがご機嫌に話す時のラナがする苦い表情だ。

理由は判らないが、あまりいい感情は持って居ない様子。

ルークもまだまだ常識が足りない部分も多いので、私が気を付けておかなくてはならないだろう。

……突っ込まれる前に言っておく……私自身が常識的な行動を取る人間かどうかは別問題だ!!




 ☆ ☆ ☆




 小屋が順次出来上がって行き、また仕事が増えて来たので色々忙しい日々が続いた。

メインの防御機能である《アースシールド》の発生装置を取り付ける作業は地味に時間がかかった。

発生源から単純に全体を覆うのでは結構なロスが生じた為、細い線状の魔法物質伝達経路を全体に張り巡らせる事で最大十二時間の継続発動を可能にした。

使用した中で最大の魔石を利用しているメイン部分だが、これは取り外して使い回す構造だ。

流石に小屋の数だけ用意するのは無駄過ぎるからだ。

最低でも欲しいと希望した品は十分に揃った。

あれば良いな的な物も結構揃っているので、快適な旅を三人にはさせてあげられるだろう。

まだ成年にギリギリ足りない程度の護衛だけでは舐められる可能性もあるので、簡易ゴーレムと呼ばれる自律行動がルーチン的な少ないパターンしか行えないゴーレムを用意した。

私がMPを消費すれば、かなり自在に操れる様なので採用したのだ。

そして、熟練度的にこの辺りから付与可能になった、MP消費型コンロを作り始めた。

あまり雪が降らないとはいえ、当然冬に料理をする為には大量の燃料を必要とする。

これを一部とはいえMPで賄えるのならば、いざという時に役に立つ。

そして、今回は私がガンガンMPを供給して料理を作って貰い、出来た物を《アイテム》に収納して行った。

これで旅の間の食事問題はクリアー。

それに伴う燃料の消費も抑えられたので、文句の無い結果だろう。


 しばらくして、ほとんどの作業は終わった。

こうして私としても、満足の行く修業期間を過ごした。

冬の間はあまり仕事が無い師匠も十分な収入を得られて満足していたし、私のここでの目的もほぼ達成できた。

後の残された時間も有効に使える様に頑張ろうと思う。

取り敢えずは領主に、魔石のおかわり要請だな。

この時期は魔石の供給が激減しているので、領主の手を借りないと魔石が手に入らない。

まだまだ熟練度上げに協力して貰うよ!




 ☆ ☆ ☆




 後日談となるが、この熟練度上げで大量に作ったMP消費型エアコンとMP消費型コンロ等は、領主館だけでは使い切れない程と言う言い方が可愛らしく聞こえる位作った。

私的には美味しく熟練度上げに利用させて貰ったのだが、そもそもが価値を引き上げて作成された品なので、余剰分を売却した際に二ランク分の魔石の差額(この辺りの二ランクは価値が百倍位違う)と付与の手間賃が加わり、何故か今回使用した経費の大半を補填してしまったと言う。

そこに関しては私が利益を貰う気は無いので放置。

結果、とても有り難いと感謝されてしまった。

追加報酬を払うと言われたが、共に利用した結果という事でお互い納得して終了にして貰った。

かなり無茶苦茶やった後なので、下手に余計な所で金銭を絡めると面倒が起こる可能性があるのでパスだ。

何かあったら領主側で対応して貰う。


 その後、そういった大量の作成を終了してから、師匠が保持していた魔石を使用して緊急転移魔法具の作成を行った。

結果としては出来なかった。

MPは確実に足りているのだが、どこか正常に働いていない様だ。

まぁ、別の用途としては使える物が出来たので良しとしよう。


 さて、ついに旅立ちの日が近くなった。

……そういやレイクはどうなったんだ……?

最近ずっと見てないな。

まぁ、勇者の存在感知に引っかかってるから死んでは居ないだろう。

ふむ……、放置の方向で!

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