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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第一章
19/138

19◆作成出来る品の確認、そして作成に明け暮れた私

 早速翌日、領主から師匠へ依頼が正式に告げられた。

そして、すぐに領主が保持している魔石を見せて貰いながら師匠と相談している。

足りない分があったら、領主に伝えて出来る限り購入して貰う方向だ。

ざっと見てから最低限作成する予定の品と、それに使えそうな魔石を確認していく。


「それで、この一番大きい魔石は何に加工する予定なの?」


「それは今回の最大の目玉とも言える、防御用の魔法具に使用する予定です」


師匠の疑問にそう答える。


「一つはMPのタンク用にします。寝ている間は持って欲しいので、最低でも八時間は持たせたいですね。そしてもう一つは魔素……魔法物質のタンクです」


「防御魔法って《アースシールド》を使うんでしょ? 八時間も持たせるのは不可能じゃない?」


普通に作ればその通りだ。


「出力を下げます。呪文で使う場合は無理ですが、魔法具ならば可能ですので約10%の出力で《アースシールド》を維持する方向で作成します」


「その程度の《アースシールド》で役に立つの? 一撃耐えられれば良い方って程度じゃない?」


「はい。これは一撃持てば良いと思っています。実際には持たなくてもいいんですが。この一枚目の壁は侵入防止と警報の役割にします。これにダメージが加えられたり破壊されると小屋ギリギリの位置に本命が即時発動するようにします」


「成程……一つの魔法具にかなり色々な回路を組み込むつもりなのね?」


「はい。正直に言えば、今回の魔法具作成は私の修行も兼ねているので簡単な部品から作っていき、ガンガン熟練度上げに活用させて頂く予定です」


「さ、流石エル……したたかね……」


「なので、複合パーツでの魔法具等も色々作って、出来るだけ師匠の付与方法を勉強させて貰う事も目的の一つとしています」


「例のエルの中に存在する魔法物質で塗り替える方法ならば、確かに有効な手段になりそうね」


「はい。今はまだ魔法物質のある部分を私の魔素に置き換えることしか出来ませんが、複数匹を一つの魔石としている場合の微妙な誤差すら均一に修正するので使い勝手も格段に上がるはずです」


「……その言い方だと、置き換える事無く魔石を作る事も可能だと考えているの?」


「はい、そうですね。可能だと思います」


「その言い方だと、作成方法もある程度は確立してそうね」


「そこまで難しい事ではないですよ。要は私の魔素に合った原魔石を作成すれば良いのですから。最も、そこで苦戦してるのは確かですが」


「成程ね。それが出来るようになったらそれだけで大儲けね……」


「私達は冒険者なのでどこで命を落とすかわかりませんし、田舎の家族が十分に生活できる分は出来るだけ早く確保しておきたいんです。儲けが出せる所は容赦なく出しておかなくては! と言う感じですね」


「エルやルークの能力があれば、それはすぐ貯まりそうだけどね」


そんなやり取りをしながら色々決めて行った。


 師匠に私が必要と考えている魔法具で、現状作成が可能な物と不可能な物を確認してこの日は終了した。

現状でも私だけで出来る簡単な加工の品を工房に持ち帰り、魔素で魔法物質を塗り替えてから次々と魔法を付与していく。

今日はMPに余裕があるので、一人で出来る事をまずはやってしまおうと張り切ってやってしまった。

付与魔術も《ショートカット》が活用出来るため、一度理解した工程は再現出来る。

そのおかげでさほど疲れる事も無く、順調に付与魔法も上がって行く。

当然少ないとはいえ、各自然魔法や変換魔法も熟練度が上がって行くので、魔法に関しては春までにそれなりの形になるだろう。

出来れば《格闘術(異世界)》を少し身体に馴染ませておきたいのだが、ルークは私がぶちのめしたお抱え冒険者の代わりに、お世話になって居るパーティーごと領主発行の仕事を受けてあまり工房に居ない。

雑用が多いとの事だが、春までの期間で実績を作ればお世話になって居るパーティーがお抱えになれる可能性が高いらしいので、リーダーさんが相当な意気込みで仕事をこなしているらしい。

某勇者さんであるレイクも残念ながら最近はこの街に居ないので無理だ。

街に居ればチョコチョコと顔を出していたが、成人する今度の春にようやく魔王討伐の旅に出る為の準備で、出発前の洗礼だとか直接神託を受けるとか何とかで一生懸命動き回っているようだ。

私的には解放された役割なので、まぁ頑張ってくれ! としか言うつもりは無い。

いや、もう一点。

間違っても私は巻き込むな、と言っておこう。




 ☆ ☆ ☆




 翌日からは、師匠のMPをフルに活用できる配分で色々教えて貰い、私が出来そうな部分は後回しにしながら作成していった。

魔法物質の流れや作業工程を完全に把握する事が出来れば、他人が使った《付与魔法》も魔法欄に新規登録出来るとわかったので、行った作業は全て《ショートカット》で使える様にした。

あまりに熟練度が足りないと使用する事は出来ないが、いずれ可能になった時の役に立つはずだ。

こうして次々と魔法具を作成し、私の修行は順調に進んだ。


 基本的に私が作成できる部分は私がやる上、MPに余裕がある私の作業時間は普通の付与魔術師より圧倒的に長い。

そこで師匠は暇になる時間が出来た時に、シェリーが使う為に購入した魔法具を解析していた。

《付与魔法》による《サーキットアナライズ》と言う魔法だ。

この魔法で、理解できる部分の回路解析が行える。

自分の知識で理解できない部分は解らないので、これさえあればコピーできるとか言う美味うまい話は無いようだ。

これに使われているのは、私達が今回作ったような複合型魔法回路の様だ。


1、個人用防御魔法の発動

2、1の発動に使用するMPを装備者から吸収する機能

3、装備者のMPが約一割になるか、最低基準値に達した事を感知する機能

4、魔法具に蓄積されたMPの残量計測

5、魔法具に蓄積された魔法物質の残量計測

6、4と5が一定量を割ると発動する機能

7、対になる魔法具の位置認識

8、対になる魔法具への装備者の転送


師匠が解析出来ただけで、これだけの数の付与がされていたらしい。

単純な属性を付与した武器などとは違い、こういった『特定条件への指示』を込めた魔法回路は実際に見て知識を蓄える必要があるので、師匠と一緒に作業が出来るうちに出来るだけ多くを学びたい。

因みに新しい回路を作る為には、『指示』に相性が良い回路をパズルの様に組み立て、当たりを一つ一つ試す必要がある為、とんでもない時間がかかる恐れがある。

まずは既存の回路を習得して傾向に慣れていなくては、チャレンジしても無駄と言えるほどの難易度らしい。


 ふと気になった事があって師匠に尋ねた。

7と8を解析出来るという事は、師匠も作る事が出来るのか? と言う事だ。

答えは、


「無理ね。私では技量も若干足りないと思うけど、圧倒的にMPが足りないのよ」


という事だった。

師匠が、その又師匠から回路作成法は受け継いでは居るのだが、過去に弟子を含めて四人で作業してもMPが足りなかったらしい。

それ故、実際に自分が継承した回路が正常に作動するかの確認も取れていないとの事。

私の様に《ショートカット》前提でオリジナル魔法化する事など出来ないのだから、記憶違いで上手く動作しない事は意外と多いらしい。


 この緊急転移魔法具、私とルークはともかく、メイド二人には出来れば欲しい。

私達二人なら自力で逃げられる状況でも、お荷物が二人増えたらアウトという状況も考えられるからだ。

最悪三人に帰還して貰えば、依頼は失敗だが命だけは助かるので気分的にも余裕が持てる。

MPには自信があるので全ての作成が終わった後にでも、実力的に可能なら試してみたい品ではある。


 こうして順調に私の《付与魔法》の熟練度と知識が育って行きましたとさ。

ご協力頂いた皆様、有り難うございました。

(当然、お金や物を出した領主にも感謝してるよ!!)

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