18◆小屋の相談と領主の事情、そして師匠の承諾
午後になって私は領主館に来ている。
今日の話のメインは、小屋についてだ。
私の希望としては三点、ルークとは寝室が別、そしてお風呂とトイレだ。
私と二人ならどうでもいいのだが、流石にシェリー達三人と一緒は私以外の全員が気を使う可能性が高い。
そしてお風呂! これだけは絶対に欲しい。
最悪、私は強引に魔法を使いながら身体を洗う手段はあるが、それだと問題の解決にならない。
因みに、強引に体を洗う手段というのは、
1、大きな簡易簡易錬金窯を変換魔法で作成
2、水魔法と火魔法でお湯作成
3、裸で入って水魔法の水流操作で流れを作る
4、水魔法での油脂集積、そして土魔法による粉塵集積で汚れを身体から剥がす
5、風魔法と火魔法で全身ドライヤーをかけて乾かす
と言った物だ。
MPを全力で無駄使いするが、やれない事は無い。
問題は、この方法を普通の人には使えないので、完全に私専用となる。
何故なら、簡易錬金窯に入ると言う事が普通は出来ないからだ。
私の場合、魔素で強引に穴を開け、入った後はその魔素を使って修復すると言う酷い手段で入る。
基本的に簡易錬金窯には、生物を入れる事が出来ない。
この辺りは危険防止の為なのか、それとも単純に最初からそうなのかは判らないが変える事が出来ないルールなのだ。
上手く行けば水場で身体を洗う位は出来るだろうが、やはり可能であるならばお風呂には入りたい。
私だけこっそり入るのは、流石に気まずいので無しだ。
そうなると、是が非でも作らせる事になる。
最低で個人用浴槽、まぁ首だけ出して後は自動洗濯魔法で洗えばいいか。
出来るならば、二~三人が入れる別の小屋が欲しい所かな。
次にメインの小屋だが、五人が食事や寝るスペースを考えると、二階建ての五mの正方形で高さは三~四m位はあると有り難いかな。
高さを考えたら二階は寝るだけにして、一m程度の高さで我慢しよう。
起きた時に、頭をぶつけなければいいや。
移動に必須な馬の危険も絶対に回避すべき事なので、こちらも五m四方で良いかな。
結構、狭い感じになってしまうが仕方が無い。
……結果を言えば、本当に狭かった。
二頭で考えていたのに、結局四頭連れて行く事にしたからだ。
前世では膝を折ったり、寝転がって寝ていた画像を見た気がするのだが、どうやら自然に近い馬は立ったまま寝るらしい。
そのおかげで狭いが何とかなって居るので、これで我慢した。
因みに、疲労による故障が怖いので、毎日足を中心とした回復魔法でのダメージ回復は行う予定でいる。
これに加えて、メインの小屋にはトイレを用意したい。
まず消音機能。
そして、貯め込みは却下、水洗は無理となると、後は分解で行くしかない。
基本的には、洗濯魔法と同じような事をするだけだ。
排泄物を一度水中で撹拌してから匂い成分を収集。
残された残留物を土魔法で固形物、水魔法で残された不純な成分を分離してから目視出来ないレベルまで分解してから外へ排出&霧散する機構を考えている。
細かい魔法具の集まりみたいな構造になるが、その方が私の熟練度アップに都合が良い事は言うまでもない。
コスト的にも小さめの魔石を多数で構成した方が安くつくので、問題は無い筈だ。
普通なら製作者の手間(主にMP)の関係で同じ位の値段になる上に、パーツが増えると親和性が高い物じゃないと上手く機能しない可能性があるので好まれない。
しかし、私には裏技があるので問題なく作る事が出来る。
魔石には作成した際の魔物固有の特徴が出てしまう為、同じ魔物や同系統の魔物の物と親和性が高い。
この魔石を、私の手の平から外へ流出させた魔素の塊に浸してしまうのだ。
魔石のランクによって浸す時間を変える必要があるが、この作業をすると全て私固有の特徴に塗り替えられてしまう!
どのランクの魔石でも私の特徴なので親和性は最高。
しかも魔素で塗り替えられると質が上がって、ランクが一~二上がるというおまけつき。
正直、その事実を知った時は笑いが止まらなかった。
子供の頃からルークは《ウィンドウ》で、私は役に立たない《魔素の泉》だけとか思って御免なさい!
本気で役に立ってます!!
難点は、買った魔石のランクを上げて売るって事は無理な事位か。
魔石は固有の特徴を把握して売り買いされるので、他の素材と親和性の無い、未知の魔石は買い手がつかないのだ。
私の場合は魔法物質が存在する素材ならば、素材自体を私固有の特徴に塗り変えてしまうので、好き勝手やれるんだけどね。
故に!! 私自身が付与魔法を上げて行かなくてはならないのです。
まぁ、がんばります。
この日は私、建築の師匠さん、領主、執事の爺さんがメインで話し合い、小屋についてある程度決めた。
予算を確認しながら色々話し合った結果、私が魔石のランクを上げなくても問題無い位の資金提示と、師匠への依頼が快諾された。
この王国の中でも僻地にあるこの領地は魔物被害も比較的少なく、軍備も最小限で済み、領主の生活もパーティの類や無駄な付き合いを滅多に行わない為、農作業で若干の不作が続く近年の状態でも民を飢えさせる事無く、上手くやりながら蓄えを増やして来たらしい。
そこには領主から溢れる、娘への並々ならぬ愛情が少なからず関与している。
娘が二歳の頃に流行病に妻を奪われた領主は、後妻は取らずに唯一残された娘だけを大切に育てて来た。
大貴族と言われる第一~三爵位クラスの領主ならば複数の妻を娶り、多くの子供を持つ事が殆どだが、僻地に存在する第六~七爵位の領主では一人の妻しか娶らない事も多いので不思議な事では無かった。
ただ、それ故に問題となるのが今回の入学についてだ。
近隣に同じ歳の子供が居ない事はすでに確定しており、二年前辺りから該当する年齢の冒険者を探して居たが見つかって居なかった。
一応王都でも探して見たらしいが、シェリーを任せるに足る実力と人間性を満たさなかったそうだ。
苦肉の策で取ったのが帰還の魔法具の購入であったのだが、それが切っ掛けでルークが見つかり、そして私の参入に至る訳だ。
話は逸れたが小屋の概要は決まった。
一辺が五mと十mで構成された長方形で、中が半分に区切られた、馬小屋付きの物。
一辺が五mの正方形でお風呂専用小屋。
更に追加されたのが三mの正方形で、長さ五m、太さ十cm程の足が八本ある特殊な構造の物だ。
足自体が魔法具となっており、足場に合わせて複数の関節を可変させる。
更にロープ型魔法具を周囲に撃ち込んだりして固定する。
どんなに足場が悪かろうが、お構いなしに固定出来るとんでもない仕様だ。
その上、何らかの都合によりバランスを崩しても十数秒なら魔法具に込められた風魔法により浮く事も出来る為、体勢の立て直し、それが不可能であった場合に地面直前で再度浮遊する事で衝撃を無くす二段構えの安心設計だ。
問題点としては馬が収納出来ない事にあるが、保護用ネットを周囲に張ったり外敵や地形による事故を防ぐ処置は色々施す予定だ。
魔法具が関与しない部分は早速今日から取り掛かるとの事で、建築の師匠によろしくお願いしますと言って今日は帰る事になった。
☆ ☆ ☆
工房に帰ると師匠が居たので先程の話を伝え、正式に依頼をしたいので、明日領主館に私が行く際に同行して欲しいと言う話をした。
「随分大口の依頼を持ってきたわね……喜んで受ける事にするわ」
「これも全て私の付与魔法修行の為ですから!」
「正直、エルのその行動力にはチョット感動すら覚えるわね……」
「褒め言葉として聞いておきます!」
よし、これで話は纏まった。
明日から魔法具の相談と作成だ。




