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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第一章
15/138

15◆ついに私の実力を見せる時期がきたようだ

 帰ってきたルークは相当疲れた感じだったが、今後の事で相談があると話し始めた。

勇者のスキル云々はルヴェールさんしか知らなくとも、計クリムゾンベア三体と冒険者四人を倒したと言う事実がある為に面倒な仕事を依頼されたらしい。

春になったらお嬢さんが王都の学校へ入学の為に移動するので、護衛を頼みたいとの事。

この入学は、領地持ちの貴族は義務であるらしい。

期間は十二歳~十五歳の三年間。

同行者は十八歳まで。

初代国王が決めたらしいのだが、すごく迷惑なルールであるようだ。

当時は色々あったらしいが、いまだにそのままとか……もう少し考えろと言いたい。


 今回の問題点としては、近隣に同じ年代の貴族の子供がいないらしい。

居た場合は、同じ立場の親で連携を取って話を進めるようだが今回は無理。

苦肉の策で身を守る為の高額な魔法具を取り寄せたのだが、明らかに妨害されたようだ。

ここの領主は先代から善良で有名なので、噂を信じるならば、今回邪魔をしたのは二つ隣の領の領主、ヴァルツァー第五爵の可能性が濃厚だ。

先代の領主の時代に悪政を行っていた為に粛清されたのだが、後継ぎである現五爵もあまりよろしくない人間らしい。

粛清に加担した現六爵に対して、時々ちょっかいを出しているらしいので可能性は高そうだ。


 この話、ルークとしては受けても良いと考えているようだ。

今お世話になって居るパーティーには、元々が私次第で春に抜ける可能性も話してあるらしいので問題なし。

むしろ問題となるのは私、と言う事らしい。

まぁ流石に、ほぼ実戦経験が無い私を連れて行くとは考えないだろう。

その考えは常識的判断として正しい。

しかし、私としてはそのまま行ってらっしゃいとは言えない状況だ。

ルークはこの領のギルドでなら、すでにそれなりの実力を持つに至っている。

この短期間でと考えたら十分な実績だろう。

しかし、護衛の人数が下手をしたらルーク一人と言う事ではお話にならない。

魔物相手でも危険なのに、五爵側の馬鹿がからめ手で来たらまず対処出来ない。

そもそもルークがこれだけの実績を残した戦い方は、《スティールMP》というMP吸収魔法で、相手のMPを無くして昏倒させる戦法が効いているだけだ。

もし効かない相手が居たり、数で押されたらそこで終わる。


「私も一緒に行くわ」


そう伝えたら、流石に無理だと説得された。

まぁ聞く気は無いが。


「僕が納得できるだけの実力があるなら、領主様に同行者について相談するよ」


予想通り、そう言ってきた。


「それじゃここで身につけた実力を、お見せするとしますかねぇ」


そう言って《ショートカット》の中身を入れ替える。

ちなみに、元々のスマートフォンの感覚が残っていたのか、これまでの練習で恐ろしくスムーズに各コマンドを押せるようになっている。

八個の《ショートカット》を使う時など、上からスパッっと全てをなぞる様にして『押す』事すら可能になっていた。

まだ試しては居ないが、戦闘中ですら《ショートカット》の中身を替えられるスピードに達しているはず。

入れたのはルークに自分との威力の差が判るように、《変換魔法》で現在丁度ルークの適正クラス辺りにある《ファイアストーム》……っぽい魔法だ。

そこで気がついた。

これ、ここで撃つのは不味いな……と。

仕方がないので街から出て少し離れた所へ行く事にした。




 ☆ ☆ ☆




 さて、実際に魔法を見せるのだが、この魔法は《ファイアストーム》っぽいが、実は私の手が入れてあるオリジナル魔法:《灯油火炎竜巻》……すみません……私が見てわかればいいやと名前で手を抜いています……。

まぁ、見たまんまです!!

先ずは水魔法と土魔法、変換魔法を使用して可燃性の液体を作り出す。

最初は原油やガソリンなんかをイメージしようとしたが、よく考えたら私は車も自分で乗った事が無いからガソリンなどほぼ見た事が無く、サッパリ再現出来なかった……で、馴染みのあった灯油にしたら上手く行ってしまったという訳だ。

そこに通常の《ファイアストーム》を発動すると通常の二倍の火炎竜巻が出来た。

そして、そこに魔素を流す練習を重ねた結果……実に元の十倍程度まで威力が上がってしまった。

これを見せればルークは何も言えまい!

そう思って、見せてあげました!

ちなみに、MPにものを言わせて延々と魔法を使っていた結果、《ショートカット》の発動後にあった若干の魔法展開時間すらかなり削れていた!


ルークは呆然としたまま立ち尽くしている。

……フフフッ! そう、その驚く顔が見たかった!!

いや~、ルークを驚かすのはやはり楽しいな。


「今はまだ研究が全然出来ていないけど、そのうちもっと効率の良いやり方も研究するわ」


と、追加ダメージも加えておいた。

ルークはこのあまりにも自分と違う威力を見せられて愕然としていたが、この威力が逆に問題である事と感じたらしい。

MPの消費量的にも異常だからだ。

もしルークが変換魔法を使えば、適正レベルの二属性変換魔法で二~三回が限界の筈。

四属性は使えないのだが、もし使えても二回撃てないだろう。

しかし私のMPがあれば問題は無い!


「今のルークのMPは二百には少し足りない位でしょ? 私はもうすぐ六千って所だから、まさしく桁が違うMPって奴なのよ」


はい、最後の止めを刺してあげました。

敢えて言わなかったが、単純なMP量に加え、熟練度上昇で適正スキル以下の魔法は消費MPが下がるので、すでに魔法熟練度全般がルークより上である私は回数自体も多くなっている。

簡単に説明すると、適正熟練度の魔法は一属性だけ上げた場合で個人差はあるが四~五回程度使える。

熟練度が一つ下の場合そこに二回加わる。二つ下なら四回分の加算。

これはその熟練度に対する慣れによる物なのかは定かではないが、五回程度の消費MP減少が起こるようだ。

その為に自分の適性熟練度の魔法よりMP効率が圧倒的に良くなるため、同じMP消費なら格下の魔法の方が総ダメージ量は多くなるが、かかる時間は膨大に増える事になる。

短期決戦や長期探索等で、使い方を考える必要が出てくる事は言うまでもない。

ちなみに一属性で説明したのは、魔法熟練度上昇でもMPが上昇するからだ。

全属性上げている過程を見ていた感じとしては、属性数が増えると効率はどんどん下がっているようだ。

二属性目が二分の一、三属性目が三分の一、以下略な感じのようだ、


 私が同行する事を認めさせるのが目的なので、この際だから色々と暴露してしまおう。

私のHPは普通にルークより低い。

しかし、私の肉体は魔法物質で強化されているため、肉体自体の防御力が異常に高い。

例の火傷やけど事件の後に確認したが、相当な強化のようだ。


「前世で魔素の過剰供給で肉体崩壊起こしたのが死因だから、同じ過ちだけはしたくなくて子供の頃から徐々に魔素を肉体に流し続けたら異常に防御力が高くなったのよね。勿論魔法防御は更に高いわよ」


もうすでに反対する気力は無いルークは、静かに聞いている。


「子供の頃は何もしてないように見えただろうけど、私だけ何もしてなかった訳じゃないのよ」


ついでに、そう付け加えておいた。


「甘く見ていて御免なさい、姉さん……」


「まぁ、理解できればそれでいいわ」


フフフッ、勝った! いや、元々負けは無いのだが。




 ☆ ☆ ☆




 ルークは私の同行を認めたので、ギルドへその旨を伝えに行った。

その結果は、実力を見て判断との事。

まぁそうなるだろう。

領主館へ行く事になったが、明日の夕方にして貰った。

基本的には《ショートカット》を使用しない方向なので、ちょっと考えをまとめる時間が欲しかったからだ。

まぁ、頑張るとしましょうか。

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