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裏・代役勇者物語  作者: 幸田 昌利
第一章
13/138

13◆師匠には色々ばれていたので自重するのはもう止めます

 工房でしっかりと怒られた後に、当然今回の件について聞かれた。


「あなたの中に、時々だけどおかしな魔法物質の流れを感じられる事が有ったわ。それは知っていたけれど、流石にあれは異常すぎるわね」


ルークに確認させていた事だが、私の魔素の流れは普通の魔法物質と違って感じる事が出来ない様なのだ。

理由は分からないが、都合は良いので助かっていた。

しかし、師匠にはバレていたか……。

時々と言う以上、何らかの条件があるのだろう。

後でそこも調べないと駄目かな。


「あれはまぁ……生まれ持った特殊な体質と言うか何といいますか……そういう物を使った結果です」


「普通の魔法発動に使用する以外にも、魔法物質を操る事が出来るという事?」


「まぁ、そういう感じですね。正確に言えば、私の身体から魔法物質を供給出来る感じです。それもかなり濃密な」


それから少し師匠は考える様な仕草のままとなり、沈黙が流れた。

そうなると、私は私で少し整理しておく事がある。

あれだけの炎が発生しているのに、火傷やけどの被害が少なかった。

師匠が怪訝な顔をしたのは、傷の治りの速さに違和感を覚えたのではないだろうか?

そこで考えられるのは、表面だけがダメージを受けて、内部に到達していなかったのでは?

始めは熱さを感じても、燃える事は無かった。

杖に触った時に燃え上がった事から、炎の発生は魔素の投入自体ではなく、そこから発生した二次的要素が絡んでいそうだ。


 そう考えている内に、もう一点思いついた事がある。

魔物の肉体に取り込まれた魔法物質は普通見えない。

私も同じ感じだとすれば、普段は魔素が見えない事も納得がいく。

ただし、皮膚まで魔素が浸透しているのならば、流石に普段から見える気がする。

今回表面だけ焼けていたのは、魔素が表面付近には無いからなのではないか?

そう考えたら納得はいく。

腕部分だけ魔素の流れを切り離した結果、行き場を失った勢いによってにじみ出た魔素が外部で何らかの反応を起こした、と考えられないだろうか?


 試しに、先程と全く同じ魔素の分断を行ってみる。

私自身、外部から魔素の流れは見えないのだが、自分の中を流れる魔素の流れは意識すればハッキリとわかる。

分断された魔素は流れが多少緩やかになったが、そのまま切り離された部分だけで循環を始めた。

腕という細長い部分での循環なので、切り離した面と指の先の二か所にぶつかって少し勢いを削がれてから反転しているようだ。

この際に極微量だが魔素が外部へ飛び出している。

次に肘を曲げて確認してみる。

指先の様に180度ではなく、90度で確認したがあまり流出は見られない。

次に出来るだけ肘を曲げてみると、指先と同様の漏れが起きた。

最後に分断していた魔素を全体の流れに融合させる。

流れを確認してみたが、指先も含めて特に漏れ出している場所は無いようだ。

この漏れが無い循環を私が無意識に制御しているのか、それとも他の要因があるのかは今後の課題としておこう。

次回行う際は今回の考えを念頭に置いて、流れを阻害しない様にやってみる事にする。


 そこで我に返ったのだが、自分の考えに没頭してしまって居たので師匠の事を忘れていた。

師匠はどうやら私のやっていた事を見ていたらしく、私の指先を中心に観察していたようだ。


「指先から魔法物質が出てくるのが見えたわ……亜人は身体の中に魔法物質を吸収して貯め込む事が出来るらしいから、その系統の能力かしら?」


「いえ、私の場合は身体の中に魔法物質がき出す様な感じなので、吸収する亜人や魔物とは別の能力ですね」


「それは昔からなの?」


「生まれつきですね……」


そこで師匠が一旦言葉を止め、言うかどうかを悩む感じを見せたが、最終的には聞いてきた。


「あまり個人的な事を聞く気は無かったのだけれど、こうして普通ではない能力がある事が判ってしまった以上、聞いておく事にするわ」


う~む、他にも色々バレてそうかな。

……結果! 色々おかしかったとの事です。

MP量がおかしい事は以前指摘されたが、魔法の習得速度や魔法物質の変化の見極め等、最低数ヶ月~数年かかる内容を数日で覚えてしまったり、ある時を境に急激に熟練度が上がりだしたりと、普通では有りえない事の連続だったとの事。

流石にやりすぎだったようだ……。

まぁ、今覚える事が今後の役に立つ事が解っているので、後悔はしていない。


 転生については伏せたが、他言無用を条件にその他の事は大体話す事にした。


「成程ねぇ。それならばおそらく《女神の加護》を持ってるわね」


「《女神の加護》と言うのは?」


「基本的には勇者とその仲間が、専用のスキルを使用する為に必要な加護ね」


「それは一般の人にも得られる物なんですか?」


「女神の祝福を受けた人間はたまに生まれるのよ。一説によると、勇者の仲間が転生する際に前世の力を一部受け継いでるのではないか、とも言われているけどね。その人達は勇者やその仲間専用のスキルを使用できると同時に、《女神の加護》も持って生まれるみたいよ」


「それって確認する手段はあるんですか?」


「私の師匠が使う事の出来たスキルで、《識別》と言うスキルなら確認可能よ。最も、鑑定系のスキルを最低五種類以上、相当熟練度が上がった場合に覚える可能性が僅かに発生するという程度のものだから、最大手の商人・王家・大貴族のお抱えでもない限りはまず使用者が居ないけどね」


要は、あまり目立つ事はしない方が良いという訳か……最低でも、ある程度の力を身に着けてからじゃないと権力者達に利用される恐れがあるし。

信用出来ない相手との接触は、出来るだけ避けるようにしよう。

まぁ、今回の事もあるし、そうそう隠し通せるとも思ってはいないけどね……。




 ☆ ☆ ☆




 翌日からは今まで隠していた事も全て見せて、容赦無い仕事ぶりを発揮した。

昨日までは下準備だけしかしていなかったが、私でも出来る下位の回復薬や毒消し等は全て担当した。

ある程度の実力さえ伴っているならば、私の《ショートカット》は相当凄まじい能力なのだ。

一度手順を確立させると自動で行ってくれるのは以前から判っていた事だが、待ち時間まで再現出来る事が最近判明していた。

最初の魔法を何秒使い、何秒後に何の魔法をどの威力で使うのか、と言った感じに流れ自体を一つの変換魔法として、オリジナル魔法:《初等回復薬》等と言う風に勝手に作れてしまうのだ。

素材の質や各個の条件の違いを見極めて、若干魔法の強さを変える作業も観察しながら微調節可能なので問題なし。

微調節する際にはその分のMPが消費されるのだが、私にとっては何の問題にもならない位の量だ。

最初と最後の段階では微調整が必要無いので、別《ショートカット》での同時作業も可能で効率が二割程上げられる。

師匠はこれを見て、流石に呆れていた。


 私が担当する分が多くなれば、それだけ師匠に余裕が生まれる。

今までは加減していた部分を、容赦無く教えて貰う。

特に《付与魔法》についてはほぼ手付かずだったので、色々と覚える事は多かったが楽しかった。

予想通り、錬金術同様に付与魔法も知識が伴わないと使いこなせないスキルだったのだ。

こうして冬になる前に私の本格的な修行はある程度始まり、毎日MPが尽きる程の魔法を使って修行をする。

充実した日々を送り、転生出来た事や師匠に対しても感謝する日々が続いた。

そして冬が訪れ、より一層修行に励む予定……だった。

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