第7章 帰還
第7章 帰還
アンドレイはさらに半年間、この世界を放浪していた。
しかしその間、どれだけ手がかりを追っても答えには辿り着けなかった。まるで世界そのものが、何かの力によって真実を覆い隠しているかのようだった。
真実を求め、彼は再びダンジョンを訪れる。
かつて古代のドラゴンと対峙した場所だ。
そこで分かったのは、ダンジョンに存在するドラゴンの記憶が完全に消去されているという事実だった。
アンドレイは実験を繰り返した。
何度もドラゴンを倒し、その過程を詳細に観察する。
その結果、ある共通点に気づく。
新たに生まれるドラゴンは前世の記憶を失っている。
しかし、その“知性”だけは変わらない。常に理性的で、目的に忠実だった。
彼はピラミッドを調査し、魔法陣、封印構造、儀式体系を解析した。
だが、どれも決定的な答えには繋がらない。
どれだけ探しても、世界は沈黙していた。
誰も、何も、真実を語ろうとはしなかった。
やがてアンドレイは、わずかな疲労と共に帰路につく。
――家へ。
久しぶりに戻ったその場所は、静寂に包まれていた。
まるで世界の喧騒から切り離された、小さな避難所のように。
ここだけは、安らぎがあった。
ほんの僅かな時間でも、思考を整理できる場所だった。
さらに半年が過ぎた。
春は穏やかに訪れ、世界は柔らかな緑と光に包まれていた。
アンドレイはインベントリの整理をしていた時、古い一冊の本を見つける。
その瞬間、記憶が蘇る。
かつて人間の最古の図書館で手に取った本――。
タイトルは『魔法は錬金術である』。
その内容は、魔法とは金属のようなものだという理論だった。
不純物によって性質が変化し、組み合わせによってまったく新しい形へと変質する。
銅と錫から青銅が生まれるように、
魔法もまた“混合”によって別の力へと変化する。
アンドレイはページをめくる手を止めたまま、息を呑んだ。
魔法とは、固定された力ではない。
“素材”のように扱い、組み合わせ、調整し、再構築できるもの――。
わずかな違いが、結果を完全に変えてしまう。
同じ呪文でも、組み合わせ次第で未知の現象へと変貌する。
ページを読み進めるごとに、彼の中で世界の構造が再構築されていく。
魔法とは流動する存在。
精錬され、混ぜられ、形を変え続ける“生きた概念”。
それは、無限の可能性を秘めた発見だった。




