第8話 氷の謎
第8話 氷の謎
新しい冒険者カードを手に入れたことで、アンドレイはそれがこの世界での正式な身分証明になると理解した。
彼はギルドの依頼掲示板へと向かう。
そこに並んでいる依頼のほとんどは、高いランクを必要としなかった。
必要ランクが書かれているものでも1〜7程度で、それ以上の難度の依頼は存在していなかった。
内容も、希少な薬草の採取、小規模な魔物討伐、商隊の護衛など、比較的平凡なものばかりだった。
そのとき、ギルドの扉が開き、「ペガサス隊」と呼ばれる一団が入ってきた。
続いてギルド長が姿を現し、室内の視線が一斉に彼らへ向けられる。
「森の中で……」隊の一人が語り始めた。
「巨大な氷塊を発見した」
「その氷は異常に硬く、ほとんど溶けません。間違いなくドラゴンアイスです」別の隊員が続ける。
ざわめきが広がり、ギルド長の顔色が変わった。
「どうやらドラゴンはそこにはいなかったようです。すでにこの地を離れたのでしょう」
その言葉に場の空気が少し緩む。
しかし次の報告で、再び緊張が走った。
「ですが……その氷塊の大きさは」
「測定したところ、ギルドの建物より大きい」
室内に沈黙が落ちる。
「一日経っても、ほとんど溶けていません」隊員は続けた。
アンドレイはその話を聞きながら、背筋に冷たいものを感じた。
それが昨夜自分が召喚したドラゴンの痕跡だとすぐに理解した。
ギルド長は状況を詳細に確認し、すぐに長老会議の招集を決定した。
さらに複数の調査隊と、魔法学院の魔術師たちが現地へ派遣されることになった。
アンドレイは内心でため息をついた。
「もう少し目立たない存在を護衛に選ぶべきだったか……」
しかし後悔しても遅い。
ドラゴンはすでにいないはずで、氷も森の奥深くにある以上、直接的な危険はないと判断した。
そのときギルド長がふと呟いた。
「それにしても……この強力なドラゴン、そして最近現れたエルフの冒険者」
「本当なのか?」ペガサス隊の一人が尋ねる。
「本当だ。私は彼女に第十ランクを与えた」
その言葉に、ペガサス隊の表情が曇る。
彼らは第七ランクの実力者であり、第八ランク昇格まであと一歩の位置にいたが、適切な任務がなかった。
この国で高ランクパーティはわずか二十組ほどしか存在しない。
彼らはその中でも上位を目指していた。
「何もしていないのに最高ランクだと……」と一人が苛立ちを隠さず言う。
「俺たちは八年もかけてやっとここまで来たのに」
アンドレイはその会話を聞きながら、ペガサス隊の中にわずかな敵意を感じ取った。
以前は友好的だった彼らの態度に、明らかな変化があった。
それは単なる嫉妬ではなく、長年の停滞と失敗による焦りだった。
彼らは過去四度、第八ランク昇格試験に失敗していたのだ。
アンドレイは静かにその空気を観察しながら、次に何が起こるのかを考え始めていた。




