表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/70

第9章 試練

第9章 試練


長老会議は約一時間続いた。


シルヴァナはその間ずっと神殿の中に留め置かれ、監視されていた。誰も彼女に話しかけない。余計な視線すら向けない。


それでも彼女には分かっていた。

——これは重要な決定になる。


やがてエルフたちが戻ってきた。その表情は変わらない。いつものように静かで、読み取れない。


長老が一歩前に出る。


もはや質問はない。


代わりに提示だった。


シルヴァナはこの村に滞在することを許可される。

単なる客ではない。


“共同体の一員として”。


それは予想外であり、同時に重い意味を持っていた。


彼女は一瞬だけ考える。


安全。

知識。

この世界で最も強い種族の情報と環境。


しかし——


「私は旅をしたいと思っています」

彼女は静かに言った。

「この世界を見てみたいのです」


長老はわずかに目を細めた。


「すでにレベル100に達している。それでも“十分に旅をしていない”と言うのか?」


シルヴァナは迷わなかった。


「私はずっと一人でした。主にダンジョンでレベルを上げていただけです」


その言葉に、空気が変わる。


長老の表情がほんの僅かに動いた。


「ダンジョンだと……」


一拍の沈黙。


「つまり、あの場所にいたということか」


彼は続ける。


「理解しているか? それがどれほど異常か」


短い間。


「エルフがレベル100に到達するには、通常400年以上かかる」


視線が彼女に集まる。


「お前は例外だ。最初の存在だ」


シルヴァナは黙っていた。


長老は姿勢を正す。


「我々はお前の力を見たい。戦い方もだ。護衛たちと戦え」


「分かりました」



訓練場は村の外れにあった。


広く開けた地面。周囲は森に囲まれ、風が葉を揺らしている。


戦闘前、護衛たちには防護魔法が施された。


シルヴァナは中央に立つ。


無駄のない動き。

静かな呼吸。


彼女の手に二本の剣が現れる。軽く、湾曲し、完璧に調整された武器。


対するエルフは一人。


長身の男。黒髪を後ろで束ね、姿勢は崩れない。


訓練された者特有の、迷いのない動き。


短い自己紹介のあと、彼は構えた。


沈黙。


そして——


戦闘開始。


最初に動いたのはエルフだった。


鋭い踏み込み。

最小限の動作で放たれる一撃。


狙いは胴体。


シルヴァナは避けない。


わずかに身体をずらし、刃を滑らせるように受け流す。同時に、もう一本の剣が反撃へと入る。


流れるような動き。


まるで舞踏。


エルフは即座に防ぐが、その次の瞬間にはシルヴァナは消えていた。


横。


背後。


再び攻撃。


連続。


彼女は押さない。

力で圧倒しない。


“流れている”。


動きは途切れない。すべてが次へ繋がる。


エルフは速度を上げる。


攻撃は鋭さを増し、連撃になる。


だが——追いつけない。


すでに一手先にいる。


シルヴァナの刃は防御に触れ、滑り、隙間を探し続ける。


そして見つけた。


一撃。


バリアに刃が触れる。


光が走る。


——割れる音。


防護結界に亀裂が入った。


空気が鋭く震えた。


そして。


戦闘は止められた。


議論はない。


エルフは一歩下がる。


シルヴァナは剣を下ろし、静かに立つ。


沈黙。


その場にいた全員が理解していた。


彼女は“強い”のではない。


戦い方そのものが——異質だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ