第33章 捕縛と正体の暴露
第33章 捕縛と正体の暴露
ラナはゆっくりと意識を取り戻した。視界が徐々に定まり、目の前にはギルド地下の暗い壁が広がっていた。周囲には仲間たち——副官と首領——が倒れている。彼らは生きているのか?
部屋の隅、机の前にはアンドレイが静かに座っていた。まるで自分の家のように書類をめくっている。
「目が覚めたか?」と彼は視線を上げずに言った。
アンドレイはラナに小瓶を差し出す。
「飲め。回復する」
ラナはまだ光に目が慣れないまま、それを受け取った。数秒後、体に力が戻り、呼吸も落ち着いた。
「次は首領を起こすか」アンドレイはそう言うと、軽い回復魔法を首領へ向けた。
首領はゆっくり目を開き、周囲を見回した。
「何が……起きた?ここはどこだ?」
アンドレイは冷静に答える。
「あなたたちは私の捕虜だ。私は無意味に殺しはしない」
彼は机の上の書類を手に取り、読み上げた。
「アルベリヒ公爵の調査、地方の衰退原因の確認……そして多数の小規模任務」
アンドレイは首領を見据えた。
「あなたたちはただの傭兵ではない。これは国家と関係する組織だ」
首領は顔色を変えずに答える。
「違う。我々は独立した組織だ。依頼をこなしているだけだ」
アンドレイは視線を逸らさず、嘘探知魔法を発動した。瞳が魔力に輝く。
「王家と関係しているか?」
「いいえ」と首領は答えた。しかし魔法は明確に“真実ではない”と示した。
もはや疑いはなかった。これは単なるギャングではない。国家と繋がる情報組織だった。
「取引をしよう」とアンドレイは言った。
「私に干渉しないなら、命は保証する」
「どうだ?」
「いいえ!」首領は即答した。その言葉は確かに本心だった。
アンドレイは机の資料を手に取る。暗号、機密記録、諜報ネットワークの符号。
「これらは私が預かる。もし追跡を続ければ、敵対組織に渡す。あなたたちの暗号も符号も全てだ」
首領は青ざめた。情報は組織そのものより価値がある。彼は沈黙し、長く考えた末にようやく口を開いた。
「……もう追跡はしない。その代わり、資料を返せ」
魔法はその言葉が真実であると示した。
「成立だ」とアンドレイは頷いた。
内省
「彼らを殺すか、記憶を消す方が簡単だった」
アンドレイは思考する。
「だが、すでに情報は広がっている。組織を壊せば逆に注目を集める」
彼は理解していた。
情報網はすでに機能している
自分の存在は拡散されている
組織壊滅は連鎖的調査を招く
「生かして制御する方がいい」
それが最適解だった。
首領は屈辱を抱えたまま条件を受け入れた。ラナと他の者たちは解放されるが、警告も与えられた。次に干渉すれば容赦はない。
アンドレイは確認を終えると静かに地下施設を後にした。
暗いギルドの奥に彼らを残し、自身は次の行動へと向かう。
もはやこの世界で、自分の動きが完全に無視されることはないと理解しながら。




