第27章 平原の狩り
第27章 平原の狩り
アンドレイは信頼する影の狼に乗り、蛇行する小川沿いを駆けていた。正午の光に水面が銀色にきらめき、軽い風が茂みの葉を揺らし、湿った草の匂いが思考を研ぎ澄ませる。
川辺の浅瀬で何かが蠢いていた。沼ネズミだ。太った体で泥の中を這い回り、餌を漁っている。
彼は下馬し、アレクサンドルの姿に切り替えると、すぐに状況を評価した。敵のレベルは5。「ちょうどいい訓練だ」
最初の一匹が跳びかかる。牙が噛み合い、爪が地面を引っかく。
アンドレイは横に跳び、すれ違いざまに剣で首を正確に斬りつけた。音もなく倒れる。残りの個体の赤い目が茂みの影で光った。
周囲を確認すると、さらに数匹が潜んでいた。茂みの奥で赤い目が瞬き、位置を教えている。
その瞬間――視界に半透明のパネルが浮かんだ。
周囲の生物の情報が表示されている。
「評価」スキルを獲得していた。レベル1。
アンドレイは歓喜した。
敵ごとに数値が表示されるようになり、戦闘の予測が可能になる。影の狼も近くで待機し、いつでも介入できる状態だ。
さらに狩りを続け、2匹を倒したところでレベル16に到達。その後も17へと上昇し、技術と経験が確実に積み上がっていくのを感じた。
しかし同時に疲労も蓄積していた。休息を取りながらエリクサーで回復するが、精神的な消耗は残る。
アンドレイは理解した。普通の人間が40レベルに届くのが難しい理由を。
剣技スキルは1から始まり、訓練によって3まで上昇していた。
「評価」スキルは観察の結果として生まれた。世界は、能力が師か実践によって得られることを示している。
しかし彼は重要な問題に気づいた。
これまでに約5000ゴールド分のポーションを消費していたのだ。しかもそれはこの世界で希少な完全回復薬だった。
「これはまずい…」
彼は決めた。
希少なポーションは最終手段に限定し、通常戦闘では技術と基本回復に頼ると。
その後、彼は進み続けた。
15レベルの野生の猪と遭遇する。突進を回避するが、わずかに装備をかすめる。反撃を試みるも、猪は即座に反転し、脚を牙でかすめた。
痛みは鋭いが、彼は退かない。距離を取り、弱点を突く。血が流れ始めた。
影の狼を召喚し、騎乗して距離を保ちながら戦う。上からの攻撃で徐々に出血を蓄積させる。
やがて猪は力を失い、最後の一撃で倒れた。
しかしアンドレイはそこで初めて自分の傷に意識を向けた。足からの出血が続いている。
回復ポーションに手が伸びるが、止めた。
「いや…」
そのまま耐えた。治癒なしで進む。
すると奇妙な変化が起きた。出血が本来より早く収まっている。
ステータスを開くと、新たなスキルが追加されていた。
「傷への耐性」レベル1
・出血軽減
・ダメージ軽減
・最大HP微増
彼は理解した。
楽な方法を選ばない時、スキルは生まれる。
アンドレイは静かに息を吐いた。
「力に頼るだけでは、何も身につかないな」
痛みはまだ残っていた。しかしそれは、もはや敵ではなく――経験の一部になっていた。




