第5部 第1章 レベル500
第5部
第1章 レベル500
見慣れた灰色の世界に、一人の男が突然現れた。
黒い髪は乱れ、濃い髭が顔の一部を隠している。
男は自分の手を見て、それから身体を見下ろした。
そして気づく。これは自分だ。ゲームの中で使っていた自分のキャラクターだった。
感覚はとても自然だった。
まるでこれが本当の身体で、ゲームのキャラクターではなかったかのように。
彼はステータスを開く。
「レベル500……?」
信じられないように呟いた。
ゲームの最大レベルは100だった。
彼は何度も瞬きをしながら数字を見直す。
「まあ……いいか。想像してたより、ずっとすごいじゃないか」
心臓が速く鼓動する。
今まで感じたことがないほど強い力を感じていた。
同時に、新しい可能性に満ちた世界が目の前に広がっているようだった。
彼は集中し、試してみる。
すると――できた。
彼の前にファミリアが現れる。
巨大な白い竜のような獣だった。
翼を広げれば建物一つを覆えるほど巨大だ。
羽は光を受けて水晶のように輝き、爪は鋭く光っていた。
身体は騎乗に完璧で、力強く、美しく、そして危険だった。
男は笑みを抑えられなかった。
ゲームで一番のお気に入りだった存在が、今こうして本当に目の前にいる。
まるで世界そのものが、この存在の力を認めて静まり返ったようだった。
彼は空へ飛び上がる。
その先には、新しく驚くべき世界が広がっていた。
山々、高い建物、空を飛ぶ他のファミリアたち。
空気そのものが力と冒険に満ちているようだった。
そんな中、彼は一人の冒険者と出会う。
経験を感じさせる目をした男が、彼を見た。
「お前、冒険者か?」
黒髪と髭の男――ダークが尋ねる。
「ああ」
冒険者は誇らしげに答えた。
「レベルはいくつだ?」
「100だ。最大レベルだぜ」
ダークは笑い、自分のステータス画面を見せた。
「見ろよ、雑魚。俺は500だ」
冒険者は一瞬固まり、信じられない顔をする。
「嘘だ! そんなのありえない!」
二人は力を確かめるため、地上で戦うことにした。
「準備はいいか?」
ダークは薄く笑いながら言う。
「いつでも」
冒険者は身体に力を入れ、戦闘態勢を取った。
そして――
ダークは一撃で冒険者を倒した。
たった一撃で、冒険者の身体は真っ二つになった。
血が飛び散り、身体は崩れ落ちる。
だがダークはまったく動じなかった。
「へえ……NPC一人、こんな簡単に死ぬのか」
ダークは世界を旅し始めた。
そしてすぐに理解する。
自分に敵はいない。
彼は好き放題に暴れ、やりたいことを何でもやった。
誰かが囲もうとしても、数十、数百、数千の敵が彼の前に倒れていく。
彼はその光景を見ながら思う。
「これがレベル500の力か……俺はこの世界の神だ」
そして彼は決断した。
「もう逃げ回るのはやめだ。決めた――俺が皇帝になる」
ダークはもう隠れなかった。
レベル500の力で北の二つの国を征服し、自分の支配下に置く。
軍は簡単に崩れ、法律は彼の思うままに変えられた。
人々もすぐに新しい現実に慣れていった。
逆らう者は容赦なく嘲笑し、力を見せつけた。
勇敢な者ですら彼を恐れた。
伝統も道徳も関係ない。
欲しいものはすべて手に入れた。
世界そのものがゲームの舞台になったようだった。
ダークは自分に言う。
「俺には何でもできる。俺はこの世界の神だ」
時は流れた。
皇帝となったダークも、ゆっくりと老いていく。
レベル500の力は残っていたが、身体は時間には逆らえなかった。
彼は側室たちを愛した。
特にエルフの女たちを。
彼女たちは老いず、いつまでも若く美しい。
その美しさと優雅さは、ダークを強く魅了した。
宮殿は贅沢と支配の空気に包まれていく。
その中の一人のエルフを、彼は皇后にした。
圧倒的な美しさだけでなく、自分の絶対的な支配の象徴でもあった。
だが人類も黙ってはいなかった。
彼らは技術を発展させていた。
それは普通の技術ではない。
レベル500にすら対抗できる未来の兵器だった。
反乱は静かに広がっていた。
だが皇帝が老いる間、誰も動こうとはしなかった。
あと二十年待てばいい――そう考えていたからだ。
しかし噂が広がる。
皇帝が老化を止める薬を作っている。
永遠の命を得ようとしている、と。
不死のダークへの恐怖が、人々を一つにした。
北の首都。
都市の上には皇帝の巨大な宮殿がそびえている。
そこへ世界中の軍勢が集まった。
騎士団、同盟国、未来兵器。
すべては一つの目的のためだった。
首都を破壊し、皇帝を永遠に生かさないために。
軍勢は北へ進軍した。
空は飛行兵器と魔法砲撃の煙で覆われる。
ダークはすでに老人になっていた。
白髪に、長い銀色の髭。
だがその威圧感は変わらない。
彼は最後の戦いのため、空へ飛び上がった。
彼の手には強化の薬があった。
今回は力を二倍にするものだ。
それを飲んだ瞬間、凄まじい力が身体を駆け巡る。
筋肉も動きも、すべてがさらに強化された。
だがそれだけでは終わらない。
ダークは巨大ゴーレムを召喚した。
一体につき二キロもの高さを持つ超巨大ゴーレムだった。
巨大な石の巨人たちは地平線の向こうから現れ、すべてを破壊しながら進軍する。
世界軍との戦いは凄まじかった。
ゴーレムたちは軍勢を踏み潰し、攻城兵器を破壊していく。
だが、それほどの力を持っていても運命は変わらなかった。
皇帝の都は陥落した。
人々は自らを犠牲にし、首都を破壊してダークから不死の可能性を奪ったのだ。
軍勢は命を捨てる覚悟で、城壁へ、攻城兵器へ、ゴーレムへ突撃していく。
皇帝もまた、すべての軍勢を呼び集めた。
残ったゴーレム、魔法軍団、そして最後の力。
そして彼は、それらを世界へ向けて放った。
目的はただ一つ。
すべてを滅ぼすためだった。




