第16章 要塞の夜
第16章 要塞の夜
夕暮れが要塞に降りていた。最後の陽光が地平線の向こうへ消え、巨大な塔はゆっくりと影に沈んでいく。
その時、城壁の上で何かが閃いた――夜の闇に冷たく危険な光が走った。
広場に、異質な存在が姿を現す。
赤い瞳が闇の中で妖しく輝き、純白の髪、完璧な顔立ち――そこに立っていたのはヴァンパイアだった。
彼女は歩くのではなく、地面を滑るように移動し、支配と冷気を放っていた。その背後には下級ヴァンパイアの軍勢が続く。
しなやかで俊敏な体、鋭い牙と爪、血のように赤い瞳。
— 塔だ!警報だ!— 見張りの叫びが響いた。
瞬く間に要塞全体が動き出す。
ヴァンパイア軍は前進し、城壁を飛び越え、爪で石を掴みながら登っていく。狭い足場へとよじ登り、要塞内部へ侵入しようとしていた。
防御結界が光り、魔力の火花が夜を照らし、最初の攻撃を弾く。しかし攻勢は止まらない。
その時、空から新たな脅威が降り注いだ――巨大な黄褐色のコウモリの群れだ。
羽ばたきは強風を生み、甲高い鳴き声が夜を切り裂く。
彼らは塔の上空を旋回し、守備兵のバランスを崩し、魔法障壁を乱し、混乱を引き起こした。
— 持ちこたえろ!— 兵士長が叫ぶ。— 結界はまだ生きている!
その頃、2体の中級ヴァンパイアがすでに要塞内部へ侵入していた。
一見すると人間のような姿――細身で鋭い顔立ち、しかし瞳の奥には獣のような殺意が潜んでいる。
要塞内に潜んでいた冒険者の一団――かつてヴァーンを見捨てて逃げた者たち――は反応する間もなかった。
ヴァンパイアたちは一瞬で動いた。
1体は影から飛び出し、冒険者の肩へと飛び乗り、刃の一撃で心臓を貫いた。
もう1体は廊下を滑るように進み、次々と敵を制圧していく。
悲鳴と戦闘音が混ざり合い、夜風のささやきに溶けていく。しかし要塞全体の混乱の中では、それすら小さな音に過ぎなかった。
冒険者の一団はほぼ瞬時に壊滅し、その叫びは夜へと消えていった。
そして戦場の混乱も、まるで霧のように静かに溶けていく。
残っていた下級ヴァンパイアたちは形を失うように散り、要塞内へと不規則に広がっていった。




