第一話 罪人
罪人・咎人。知識としては知っていた。
だが、テレビやネット記事で見掛けることはあっても、
身近なものではないと。
まして、自分自身がそう呼ばれるとは、夢にも、少なくとも今までの自分は思ってもみなかった。
神。そう名乗った男は、見ず知らず場所で目覚めた私に、説明すらせず淡々と答えた。
「咎人よ。貴様を我が御先にすることに決めたぞ」
御先…?聞いた事のない言葉と咎人扱いする男に困惑する私に構わず、続けざまに神は話をした。
「貴様ら人間どもは群れになると世界を食い潰す。
近頃の貴様らは少々増えすぎた。それ故、貴様には人間の数を減らして貰う」
何を言ってるのだろうか。そう思った。
「待て待て待て、待ってくれ。勝手に話を進めないでくれ。先程から、貴方が何を言っているのか理解できない。
御先?とやらも私は知らないし、そもそもなぜ私がそんなことを引き受ける必要がある?それに咎人?私は生まれてこの方犯罪などは犯していない。」
私の言葉を聞いた神は驚きと呆れが混じった目で私を見つめた後、溜息を吐きつつも答え始めた。
「………御先とは有り体に言えば我が眷属のことだ。
次に、貴様が我が命令を受ける理由は、貴様が罪人だからだ。」
罪人と言われても先程言った通り私は罪を犯した事はない。
だが、目の前のこの男は自身を神と称した。だとするのなら…
「罪人と言うが…その罪と言うのは宗教的な意味での罪か?例えば十戒のような。例えそうだとしても、私は誓って罪は犯していない。傲慢であった訳でも、怠惰であった訳でもない。」
そうだ。私は会社でも勤勉に働き、おおよそ模範と呼ばれるように生きてきた。(その方が生きやすかっただけではあるが)
そんな私を罪人と呼び、あまつさえ小間使いの様に扱おうとしている。
例え神の法であろうと、私を罪人と断定する罪は無い筈だ。
私の抗議を聞いていた神は、疑問符を浮かべた様に、その言葉を言った。
「おかしなことを。人間として生まれた時点で、貴様は既に罪人なのだ」
「…………は?」構わず神は言う。
「貴様ら人類は知性を持ちながら、知性に従わなかった。
貴様ら人類は、愚かだったのではない。貴様ら種族は、自らの愚かさを認識できるほど知的でありながら、それを改めなかった。
それを罪と言わずして何と言う。愚かな事は罪ではない。知性が無いのは罪ではない。その逆もな。だが、知性を持ちつつ、愚かさを知りつつ、悔い改めることを放棄した。これ以上の罪は無く、これ以上の怠惰は無い。貴様ら人間はそれ故、生まれた時点で罪である。」
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