冒険の始まり
題名の通り、ついに冒険開始です。
「おはようございます!いよいよ出発ですね」
クルアがノールの手を引いて、スキップしながら来た。ノールは赤面しすぎて潰れた顔をしている。
「クルア、お前寝てないのに元気そうだな」
「あー、いえ、そのぉ、実は爆睡しちゃってて。目が覚めたらノールさんのお腹を枕にしちゃってて。ノールさん、金縛りにあってたらしくてぐっすりと寝れてないらしいです。私が付いていながら金縛に合うなど!不覚を取りましたあ!!」
いやそれ、金縛はクルアが原因じゃねぇのか?
「だから朝から祈祷してました。これで金縛の悪霊は退散しましたっ!」
なるほど、占いとかそういう文化なのだな。だから金縛の原因が自分と気付けない。しょうがない気もする。
「勇者様方、どうかお気をつけて。困った時はいつでも戻って来てください。それとクルア、ご迷惑をかけないようにね。」
村長が深々と頭をさげる。それに応じ、ノールとドフが頭を下げて、俺も頭を下げた。
「改めてよろしくお願いします。」
クルアの小柄な体と同じほど背の高い杖を背中に背負いながらお辞儀をしてきた。クルアの髪の毛が下に垂れる。それが朝日を反射して神々しい美しさだ。恋情の有無に関わらず見とれてしまう。
俺たちは歩き始めた。クルア曰く、山を越えると大きな町があるらしい。こうして、呑気に歩いていると今までいかに自分の仲間を見れていなかったかがひしひしと感じられる。俺は仲間を観察し始めた。
ノールの黒髪が俺の肩に当たる。ノールの髪の毛は長めで耳が半分隠れている。
「あ、ごめん」
ノールが振り返って謝って来た。俺は頷いて済ます。
ドフは俺より背が高い。俺より頭半分くらいデカい。焦げ茶色のおかっぱだ。本当に真っ直ぐ切れている。
クルアの背丈は俺の肘くらい。妹みたいでちょこまかしてる。長い髪の毛は腰まで垂れている。重くないのかな。
「ああ、そういえば何歳だ?お主らは」
「あー。ちょっと待って………。16歳だと思う」
ノールが自信なさげに返答する。
「俺もそんな感じする」
「おー、若いな。我は20歳だ」
20歳って言うと大人な感じするけど喋り方がどうも何かを間違えた子供みたいなんだよなあ。でもまあ、ドフが俺たちよりも年上ってことは何となく察していたが……。
「あ、私は14歳です」
下から声が聞こえると思ったらクルアだ。
「ほーう、歳下か」
「でもいいよ、僕たち仲間だから年齢なんて気にせずに、ね」
必死だな、ノール。露骨に必死だな。ドフと目が合う。くすっとお互い笑った。
「町に着いたら装備とか買いましょうね♪」
クルアは鼻歌を歌い始めた。よっぽど町が楽しみらしい。
「改めて、我は皆のことを呼び捨てで呼ぼうぞ。」
一々確認するのか。何があったか知らねえが俺は呼び捨ての方が気楽で良いや。
「おう」
「うん」
「はい」
3人一斉に返事。
「坂が急になって来ました。この辺は魔物が多いです。気をつけて進みましょう」
町に行くにも大変だな。だからクルアは楽しみなのか。滅多に行かないから。
「皆!伏せろっ!!」
ドフが叫び、慌てて伏せた。数本の矢が頭上をかすめる。
「ゴブリンのようです」
「敵のお出ましか」
冒険らしくなってんじゃん。楽しみだ。
「武器を持ってるのが私とドフ様だけ。お二人は下がってください」
この世界の戦いってものを見てやろうじゃねえか。俺はクルアの後ろへ下がった。ノールは不服そうに後ろへ下がった。
「クルア、行くぞ!」
ドフは剣を構えた。クルアは杖を抜き魔力を込め始めた。
ドフの一撃で戦いは始まったのだ。
登場人物の大まかな設定を書きました。若いとか思った方もいらっしゃるかもしれません。