第一幕 第七章 小さな復讐
その日の夕方、宿屋に戻ったロザリーを待っていたのは、厨房の床にバラバラに散らばった「紙の残骸」でした。
「あら、ごめんなさい。あまりにボロボロだったから、火を熾すのにちょうどいいと思ったの」
エレンが、暖炉の前で冷たく笑いながら最後の一ページを火の中に投げ込みました。ロザリーの目の前で、父さんと母さんの思い出が、ジムと語り合った冒険の夢が、黒い灰になって消えていきました。
一瞬、視界から色が消えました。叫ぶことも、泣くこともできません。あまりに深い衝撃は、心を真空の状態にします。
(……消えた。私の、たった一つの宝物が)
しかし、次の瞬間にこみ上げてきたのは、これまでとは違う「静かで鋭い怒り」でした。
(泣いてあげるものですか。あなたが欲しいのは、私の涙でしょう? ……いいわ、エレン。あなたが守りたいものを、今度は私が揺さぶってあげる)
ロザリーは無言で灰を掃き清めました。その横顔は、バーバラやエレンがこれまで見たことのない、凍てつくような美しさを湛えていました。
ロザリーが泣き叫び、地面を這いずり回るのを期待していたエレンは、その静けさに微かな恐怖を感じました。
(なんなのよ、その目は。ただの下働きのくせに。……あいつはいつもそう。汚い格好をしていても、私よりずっと『お嬢様』みたいな顔をする。それが我慢ならないのよ!)
エレンの心は、歪んだ劣等感で溢れていました。相手を屈服させたはずなのに、自分の方が惨めな気持ちになる。その苛立ちが、彼女をさらなる残酷さへと駆り立てていました。
バーバラは酒場のカウンターでその様子を見ていた女将は、鼻で笑いました。
(本の一冊くらいで。そんな暇があるなら、もっと手を動かせばいいんだ。……だが、あの娘の目は少しばかり気に食わないね。従順な犬の目じゃない。いつか噛みつかれる前に、もっと徹底的に叩き直してやる必要があるね)
バーバラにとってロザリーは「壊れない便利な道具」でしかなく、その心がどうなろうと知ったことではありませんでした。
ロザリーの「小さな復讐」
その夜、宿屋で「上客」を迎えた晩餐会が開かれました。エレンは自分の美しさを誇示するために、一番いいドレスを着て、着飾って給仕を手伝っていました。
ロザリーは、エレンが密かに想いを寄せている街の有力者の息子の前に、一皿の料理を運びました。そして、エレンが通りかかる瞬間に、床に落ちていた「エレンがわざと捨てた果物の皮」を、目立たないように彼女の足元へ滑らせました。
「きゃあああ!」
派手な音を立てて転ぶエレン。その拍子に、彼女が持っていたスープは、あろうことか想い人の少年の服を真っ黒に汚してしまいました。
「なんてことをするんだ、汚らわしい!」
少年の冷たい言葉に、エレンの顔は真っ赤に染まりました。ロザリーは素早く駆け寄り、少年の服を丁寧に拭きながら、エレンにだけ聞こえる小さな声で囁きました。
「……火で燃えるのは、紙だけじゃないのよ。エレン」
恥ずかしさと怒りで、エレンは震えが止まりませんでした。自分が完璧だと思っていた「社交の場」で、最も見せたくなかった姿を晒してしまった。
(ロザリー……あいつ、わざとやったのね!? 私の恋も、プライドも、全部台無しにしたんだわ!)
しかし、周囲の客たちの白い目がある以上、ここではロザリーを怒鳴りつけることもできません。自業自得という檻の中に、彼女は閉じ込められたのです。
少年を介抱しながら、ロザリーの心は冷え切っていました。復讐を遂げた瞬間に感じたのは、爽快感ではなく、虚しさでした。
(あんな子と同じレベルに落ちて、何が楽しいのかしら。……私はこんなことをするために生きているんじゃない。ジムやサムと、もっと違う場所へ行きたいのに)
物質的な勝利(エレンを恥じかかせること)を得ても、ロザリーの精神的な飢えは、一向に満たされることはありませんでした。
むしろ、この復讐がきっかけで、宿屋での彼女の立場はさらに危険なものへと変わっていくのでした。
あらすじを入力してAIが書きました。
名作アニメの主人公は復讐なんてしないですが、AIに任せています。




