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さすらいのロザリー  作者: 村松希美


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第二幕 第十八章 新しい朝



ロザリーが戻ったその日から、下町の路地裏には、以前よりも力強い「声」が響くようになりました。


ロザリーはジャックから贈られた温かいコートを、最も寒さに震えていたサムに着せ、自分は再び、下働きの少女らしい簡素な服に身を包みました。けれど、その瞳には、かつての「宿屋の囚人」だった頃の怯えは微塵もありません。


(私は、もう誰にも自分の心を渡さない。バーバラ女将にも、エレンにも。そして、自分自身の孤独にさえも)

ロザリーは、土の上に再び小枝を走らせました。


(ジャック様がくれた時間で、私の体は癒えた。でも、私の魂に命を吹き込んでくれたのは、この子たちとの約束だった。……私には、まだやらなければならないことがある。この場所から、本当の意味で自由になるために)


彼女の心は、澄み切った冬空のように晴れやかでした。物質的な豊かさを捨てた代わりに、彼女は「自分の足で立ち、愛する人を守る」という、真の自立を手に入れたのです。



ジムは、戻ってきたロザリーの横顔を、眩しそうに見つめていました。


(ロザリーは変わった。前よりもずっと、強くて、優しくなった気がする。……俺も、いつまでも守られてるだけじゃダメだ。字を覚えて、計算を覚えて、いつか自分の店を持つんだ。そして、ロザリーとサムを、今度こそ本物の『家』に住ませてやるんだ)


ジムの心に宿ったのは、盲目的な怒りではなく、建設的な「野心」でした。彼は、ロザリーが教えてくれる一文字一文字を、未来を切り拓くための剣のように、一所懸命に胸に刻んでいきました。


サムは、ロザリーの隣で、彼女が話してくれる物語に静かに耳を傾けていました。

(ロザリーお姉ちゃんの手、あったかいな。……物語の中の船は、もうすぐ宝島に着くんだよね。僕も、お姉ちゃんと兄ちゃんと一緒なら、どこへだって行ける気がするよ)


サムにとっての世界は、もはや恐怖に満ちた場所ではありませんでした。大切な人が隣にいる。それだけで、明日のパンの心配さえ、冒険の一部のように感じられるようになったのです。



数日後。


ロザリーは、バーバラ女将の元へ戻り、自ら「辞める」ことを告げました。奪われた給金や、思い出の本の代わりを求めることはしませんでした。そんなことに時間を使うより、一刻も早く新しい一歩を踏み出したかったからです。


驚くことに、彼女が宿屋を出る際、一人の執事が現れ、彼女に小さな包みを渡しました。


ジャックからの、最後の贈り物。中には、彼女が欲しがっていた、まだ誰もページをめくっていない真っ白な「帳面ノート」と、一本のペンが入っていました。


そこには一筆、ジャックの端正な文字でこう記されていました。

『君たちの物語を、君たち自身の言葉で書き記してほしい。友よ、良き旅を』


ロザリーは、その帳面を抱きしめ、冬の光の中へと歩き出しました。


「さあ、始めましょう。私たちの、本当の物語を」

雪解け水が街路を濡らし、春の足音が聞こえてくる路地裏。



三人の笑い声が、青空へと吸い込まれていきました。

それは、物質的な飢えを乗り越え、精神的な豊かさを手に入れた少年少女たちの、美しく力強い旅立ちの朝でした。





読んでいただきありがとうございました。


44年前に未完成だったさすらいのロザリーは、AIで完成させることができました。


長生きしてみるものですね。AIを使える時代になったので。


でも、国民の心は44年前よりも病んでいるような気がしますが。


小説や物語は、現実はそうでなくても、心の栄養剤だと思っています。


現実はつまらないという方は小説や物語に触れるのが良いですよ。

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