表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/109

39 結社

 アイたちはその日、ツァータの街に戻ると、宿を取った。

 グレイはまだ意識が戻らず、ベッドに寝かせる必要があった。


 そして、それ以外のみんなは部屋に集まり、情報を共有し、今後のことを話した。

 ネロ、エス、グレイはそれぞれ、アイを助けるために奮闘し、実際にこうしてアイを解放することに成功したのだった。


「みんな本当にありがとう」


 経緯を聞いたアイは、まず感謝を述べた。


「アイさん……本当にごめんなさい」


 ビィフは酒癖のせいでアイを連れ去られたことを後悔しており、深く謝った。


「いや、いいんだよ。私も油断してたし。それはそれとして、ビィフはお酒をやめたほうがいいかも」


 言いたいことを全て言っていたビィフの、あの時の態度を思い出し、アイはそう言った。


「気を付けます……」


「それにしても、あのマドレーヌがグレイを騙してこんなことを起こしたなんてね……」


 マドレーヌには何かあると思っていたアイも、そこまで積極的に動くとは思っていなかった。


「ご希望とあらばいつでも二人を処分しますよ」


 エスは笑顔でそう言った。


「絶対ダメだから。勝手なことをしないこと!」


 アイはエスに念押しをした。


「お嬢様はお優しい……」


 エスは少しがっかりしたように言った。


「でも実際、私は殺されそうになってたんだ。カラムさんがミストから言われた通りに。それに失敗したから、ルカが来た」


「ルカはなぜ、アイ様が追われるように、色々な事件を起こさせたんだろう?」


 ビィフが疑問を口にする。


「うーん……ルカは、そうやって幾つか事件を起こさせたあと、私を殺せと指示されていたみたいだね……だけど、ルカはそうするつもりはなかった」


「指示しているのは誰なんでしょう?」


 アイにビィフが尋ねる。


「ミスト、かもしれませんが、ミストも上からの指示で動いているような口ぶりでしたね……」


 エスがそう口を挟んだ。


「アイ様が悪い評判を抱えて亡くなれば、ミスト達も事後処理がしやすいということでしょうか……」


 ビィフはルカがわざとアイに街を襲撃させた理由を、そう考えたようだ。




「みんな、これを見てくれないか」


 突然そう切り出したネロが、金のボタンを、みんなに見せた。


「キメラでしょうか。旧教団のシンボルですね」


 知識豊富なビィフがすぐに言い当てた。


「ああ。どうやら、これをモチーフとしている、”結社”とかいう連中がいるらしい。カラム団長が、交渉の際、ミストの部下を倒したが、そいつがこれを身に着けていたようだ」


「つまり……結社とか言う連中が、裏で糸を引いていると……」


 エスは思案した。


「結社の話は聞いたことがあります」


「何で……?」


 エスが結社を知っていたことに、アイが驚いて聞き返す。

 ネロとビィフも驚いてエスを見る。


「実は……執事の前は少々裏の仕事をしておりまして……」


 だからエスはこんなに強いのか、とアイは思った。


「そこで聞いたことがあります。仲間内での認識は……”結社の仕事に手を出すな”でした。請け負うにしても、敵対するにしても、関わるべきではないと」


「そんな組織に私は狙われてるってことね……」


 アイは頭を抱えた。

 自分が狙われているというよりは、カラムが狙われているのかもしれないが。


「でも、そんな連中と関わりを持っているなんて、マドレーヌとかいう子は、何者なんでしょう?」


 ビィフは疑問を口にしたが、誰も答えられるものはいなかった。


「とにかく、帰れば全て分かります。そこでマドレーヌを問い詰めればいい」


 エスがそう言った。


「我々が協力してお守りすれば、無事帰れますよ」


 ネロはそうアイに笑いかけた。


「ありがとう、みんな」


 アイは再び、感謝の言葉を述べた。





 ルカが目を覚ますと、身体の自由が利かなかった。

 暗い部屋の中央の、ベッドにしては硬い、手術台のようなところに、ルカは縛りつけられていた。


「ここは……」


 隣を見ると、長い赤毛をした女が、もう一つの台の上に、同じように横たわっていた。

 眠っているのか、動きはしなかった。

 正面に視線を戻すと、白髪の、眠そうな顔をした女が、ルカの方を覗き込んでくる。


「やぁ、目が覚めたかい?ようやく準備が整ったんだ」


 医師のような白衣を着ていたが、手術をするような格好ではなかった。


「何をするつもりだ……」


「あれ?ミスト君から聞いてない?君の目をもらって、あっちの赤毛ちゃんに移すの。なんでも、部長ちゃんの妹ちゃんらしいよ~」


 赤毛の女は眠っているようで、反応は無かった。


「や、やめろ。この目は”あの方”からもらったものだ」


「”あの方”は、君のこともういらないってさ」


「嘘だ……俺のためにあの方は……人形の為に……」


「タダより怖い物はない、ってね。この目は、仕事の報酬の前借りみたいなものだったんじゃないの~?それなのに仕事に失敗してたら……当然取り上げられちゃうよね」


「よせ……もう一度やらせてくれ!きっとやり遂げてみせる……俺にはできる!」


「もう十分楽しんだろう?これで君の夢はおしまい。あとは消化試合を、何も見えない暗闇で過ごすんだねっ」


 そう言うと女は、器具を取り付けると、ルカの目を開かせた。


「やめろ……やめろ!やめろぉぉぉ!!!!!」


 ルカの叫び声が響いた。




 その部屋の扉越しに、外までルカの悲鳴は響いてきた。

 部屋の前で、ミストがまた別の、赤毛の女性と話している。


「あーあーあー……あのサド医者め。麻酔かけてないのか?」


「手段はどうでもいい。妹にあの目が、無事移植されればな」


「あいつの腕は確かですよ、姉御。俺の腕も一回離れたのがくっついたんだから」


「知っている、だから任せた」


「それで?次はどう動くんです?」


「妹が目を手に入れれば、やりようはいくらでもある……アイとかいうガキも放っておけ。いつでも消せる」


「そうかい……全く……こんなややこしいことしねぇで、騎士団のガキも、婚約者もみんな殺して、鍵を奪っちまえばいいんじゃないですか?」


「それができればとうにやっている……全く。強大な力には、面倒な約束事が付きものなんだよ」


「そういうもんですかね……」


「手順を間違えば全てがパーだ。慎重にいくぞ」


「へーいへい、一番嫌いな言葉だね、慎重ってのは」


 ミストが放った愚痴は、薄暗い地下通路の中で、小さく響いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ