24 選ばれた女
「カラム様……全ての廃屋の捜索が終わりましたが……」
「どうだった」
広場のベンチに腰かけたカラムの元に、部下が報告に来る。
マドレーヌはその隣に寄り添っている。
「何も見つかりませんでした」
「何もだと!よく探したのか!」
「はっ……言われた通りに、人がいた形跡まで細かく探しましたが……マドレーヌ様が閉じ込められていた廃屋以外はどこも、人が立ち入った形跡すらありませんでした」
「馬鹿な……もっとよく探せ」
「わかりました。しかし、そもそも他のところで殺されてしまったという可能性も……」
「言うな。もう一度探せ……」
「はっ」
部下は素直に聞き入れ、その場を去った。
「カラム様……少し落ち着いて……」
マドレーヌが心配そうに、カラムの腕を撫でて言った。
「落ち着けだと!」
大声を出したカラムに、ビクッとマドレーヌの身体が硬直した。
「いや、すまない……マドレーヌ。俺のせいで君もひどい目に合わせてしまった……本当にすまない」
「いいんです……こうして助けて頂けましたから……」
カラムは少し呼吸を整えた。
そして身を寄せるマドレーヌの肩を抱いた。
「ただ、何か、覚えていることはないか?何でもいいんだ」
カラムは既に先ほど、一度マドレーヌに聞いていたが、再度尋ねた。
「申し訳ございません……馬車が襲われ、アイ様が相手を倒したのですが、その後それぞれ意識を失ったんです。それで、私は目が覚めるとさっきのお家にいて、ずっと見張られていました……」
「アイとは顔を合わせていないのか?一度も……」
「何か薬で眠らされたのか、記憶が曖昧で……」
「思い出してくれ!少しでもいい。何でもいいから……」
カラムは両手で、マドレーヌの肩を掴んで、問い詰めるように言った。
「カラム様っ……痛いですっ……」
「あっ、あぁ……すまなかった。駄目だな……」
カラムは我に返ったように、手を離した。
「カラム様、私は気にしていません。嬉しかったんです」
「嬉し……かった?」
「私を、助けてくれたことが」
「聞いていたのか……?」
どちらかを選べと言われ、マドレーヌと、口走ってしまったこと。
あれは、ミストにしか聞かれていないと思っていた。
実際、騎士団員には聞こえていないようだったが、マドレーヌはそれよりも近い位置にいた。
「ええ。あの廃屋から……聞こえていました。私は……ずっと迷っていたんです。アイ様という相手がいる、カラム様に好意を持っていいのかどうか……」
「マドレーヌ、よせ……」
「でも、あの状況下で私の名前を口にしてくださったとき、私は決心がつきました。何があっても二度と、自分の気持ちに嘘をつかないと。あなたの傍を、離れないと……」
「マドレーヌ、私は……」
「どうか、強い部分も、弱い部分も、全て、私に見せてください。私も、そうしますから……」
マドレーヌはそう言い、カラムの腕を抱いた。
カラムは、何も答えることができなかった。
カラムはその後、マドレーヌを部下に送らせ、数人に村を守るよう指示すると、アイの家族のところへと赴き、経緯を説明した。
両親二人は悲しむばかりで、決してカラムを責めはしなかった。
「きっとどこかで生きているはずです……お願いです。探してください……」
アイの母は泣きながらもそう言った。
「私もそう考え、動いています。必ず探し出します……」
カラムは心から謝った。
その間、マドレーヌを選んだ罪悪感は、ずっとカラムの心を締め付けていた。
グレイはミルフィーユから、アイが行方不明になったことを聞いた。
「グレイさまぁ……」
ミルフィーユは村で泣き、保護されてからも泣き続け、屋敷についても泣き続けていた。
「マドレーヌはどこ?」
「えぇ?」
「マドレーヌはどこだって聞いているんです!」
グレイは物凄い気迫で、ミルフィーユに迫った。
ミルフィーユが泣いていようが、構わず問い詰めた。
「村に帰ったはずです」
「出かけてくる」
「遠いです!お待ちください!」
「僕に構うな!」
走り出したグレイの前に、執事のエスが道を塞いだ。
「何の用だ?」
「お邪魔をするつもりはございません。馬車を出しましょう。私もご一緒します」
「結構だ」
「いえ、客人ですので。村の前までお送りして、その後のことは知りません」
「……だったら急いでくれ」
どうでもいい、といった風に、グレイはそう言った。
誰から見ても育ちのいい好青年だったグレイが、今は怒り狂っており、ミルフィーユはそれを不安そうな目で見ていた。




