鬼ヶ島4
大ピンチの桃太郎!
周りを鬼達に囲まれ、先代桃太郎も距離を詰めてきます。
『終わりだ。さあ、ハンバーグを俺に寄こせ!』
「……どうかな」
ももたろうはどこか落ち着いた表情で、周りの鬼達へと声を掛けました。
「鬼達! 君達が人間は愚かだと思い奪う側に回った事は知っている! でも……どうか、どうか、ほんの一瞬だけでいい! 私達を見て! もう一度だけ!」
その言葉に、先代桃太郎は思わず笑ってしまいます。
『ククク……何を言いだすかと思えば。こいつらは完全な悪だ! 人間などゴミ以下の存在だとしか見ていない! そんなヤツラに何を……』
「うっさい、黙ってろ! 引きこもり!」
グサっと桃太郎の心に突き刺さる言葉の刃。
ももたろうは引き続き、鬼達の説得を試みます。
「確かに人間は愚かかもしれない! 同じ過ちを何度でも繰り返す! でも……ただ人間は迷っているだけなんだ! 自分達が進む先が何処なのか分からないだけなんだ! 何の為に生きて……何の為に働いて……何の為に戦うのか……進むべき方向があり過ぎて、分からないだけなんだ!」
鬼達は困惑します。
ももたろうの真に迫る表情を見て、自分達と重ねているのです。
自分達はこのままでいいのか。先代桃太郎に怯え、指示に従って女達や食料を奪う。
これが”鬼”としての道なのか。
「私はそいつとは違う! でもそいつも人間! 私とそいつは同じ人間なのに、こんなにも違う! 世界には、もっと色々な……人の数だけの”人”が居る!」
『何を言ってるんだ、コイツは。おい、鬼ども! さっさとトドメを刺して……』
その時!
鬼の一人が金棒を振りあげ先代桃太郎を突き飛ばしました!
その威力たるや凄まじいの一言。
先代桃太郎は洞窟を突き抜け、浜辺まで吹き飛ばされてしまいました!
『っぐ……何が……?』
先代桃太郎は突然の衝撃で混乱します。
しかしそのスキを突いて、鬼達が次々と襲い掛かって行きました!
「うぉぉぉ! お前なんかに……お前なんかにぃ!」
『なっ! 貴様らぁ! 血迷ったかぁ!』
先代桃太郎は再び閃光を放ち、最終形態へと移行します!
☆
鬼達が飛び出していった洞窟の中、ももたろう達は倒れた犬の周りに集い、様子を伺っていました。
「ケーン! 最終形態?! 今までのは何だったんだ!」
「キー! 作者め! 熱血バトル漫画でも読みやがったな?!」
キジと猿のツッコミに微笑みつつ、ももたろうは犬を介抱します。
「犬さん、上手く……いきました。これで良かったんですよね……?」
「わん……良くやった、ももたろう……」
犬は、とても眠そうにしていました。
キジ、猿は犬の容体を悟り、口を噤みます。
「わん……ももたろう……君は……君の信じる道を……」
「……犬さん……?」
ゆっくりと瞼を閉じる犬。
ももたろうは溢れ出る涙をぬぐい、そっと犬の頭を撫でました。
その時、ももたろうは思いだしました。
自分が何の為に生まれ、先代桃太郎に何があったのかを。
「行こう。私の信じる道を。皆の信じる道を!」
ももたろう達は立ち上がります
その胸に溢れる感情を抱きしめ、今この時の決意を忘れぬように……
☆
鬼達は最終形態へと移行した先代桃太郎に次々と敗れ去っていきました。
しかし先代桃太郎も無事ではありません。本気になった鬼達の猛攻を受け続けているのです。
最終形態となったにも関わらず、その鎧は既にボロボロです。
『はぁ……はぁ……小癪な! あんな小娘の言葉に踊らされやがって……!』
「まだ……まだだぁ……」
最後に残った鬼が、先代桃太郎の足首を掴みました。
しかし既に虫の息。桃太郎は容赦なく、その鬼へと薙刀を振り下ろします。
『死にぞこないが!』
しかし、薙刀は鬼へと届きませんでした。
阻まれたからです。一人の少女によって。
『き、貴様!』
「やっとわかりました……貴方のその力の……理由が!」
ももたろうの体が光に包まれ、先代桃太郎と同じように黄金色の鎧に身を包みます。
其の姿は巨大化した先代桃太郎と同じ大きさに!
「すべて分かりました……自分が何者で、何で生まれてきたのかも……!」




