第七話 ウキウキ気分で居たらお嬢様とぶつかったりする二日目の昼
またまた一日遅れ申し訳ございませぬ…… 次はちゃんと期限守って投稿しますから許して下さい!(三度目のしょうじ……ry)
二階まである広いエントランス、外の景色を一望できるバルコニー、客人が何人も座れるような縦長に広い食堂、そして客室等エトセトラエトセトラ。
正に裕福な貴族の買うような豪華で煌びやかな洋館で、私は歩きながら目に映るもの全てが興味深く楽しかった。
「最後に図書室だけど」
「図書室もあるのね…… 素敵だわ。後で何冊か本を借りて読もうかしら」
「真奈は勉強が好きなの?」
「そこまで好きっというわけでは無いけど…… この世界に興味があるからちょっとね」
「私はちょっと読んでみたけど…… うん、頭が痛くなりそうだから途中でやめちゃった」
彼女はてへへっと笑うとチロッと小さく舌を出す。
きっとこんな愛嬌のある姿を男に見せたら男は何かに目覚めそうになっちゃいそうね…… 何かとは言わないけど。そういえば某有名な絵本の数学者が正にあれだったらしいわね、真偽の程は分からないけど。
そんなどうでもいいことを考えていると、途中、私の腰辺りに何かがぶつかり、私は少しよろめいた。
それと同時に、ぶつかった所から女の子の声が聞こえた。
「いったぁぁぁぁ!! ちょっと、前を見なさいよ! そこの変質者!」
いきなり他人に変質者と言ってくれるとは、この声の主は中々肝が据わっている。
多分、子供だろうと思って、私は顔を下に向けるとやはりというか、青いワンピースを着た陶器の様な美しい肌白い色をした女の子が私に指を差して猛抗議していた。
「貴女! 親にちゃんと前を向いて歩くと習わなかったの!? このあたしにぶつかるなんて良い度胸ね!」
「ごめん遊ばせお嬢様、前を見ていてもあまりのお嬢様の光輝いたお姿に太陽と貴女様の後光が乱反射を起こして、お嬢様のお姿を消していたのです」
「なるほど、一理あるわね。じゃあ次からは気を付けて目にウルシノキの濃厚なウルシをを塗って来なさいな」
漆塗ったら「目が、目がぁぁぁぁぁ!!!」と慟哭して失明するはめになるでしょうが。
しかし、拒否したら彼女はまた烈火のごとく怒りそうだし、取り合えず「分かりました、本当に申し訳ございませんお嬢様」っと若干棒読みになりつつも謝罪する。
すると、機嫌を良くした彼女は自身の美しい、まるで太陽の光の束を集めたような金髪ふぁさっと掻き揚げて口を開いた。
「結構結構、こんなにもあたしの言葉に耳を傾けるなんて中々見どころのある子ね、あたしの名前はメイ・ウォルターズ! かの有名なウォルターズ家の血を引いた由緒正しき長女よ! 血は通ってないけど」
彼女は何故か矛盾した言葉をボソッと呟いて溜息を吐く。
血を引いて、血は通っていない?
私が頭にクエスチョンマークを浮かべていると、愛が少し困ったような笑顔で答えてくれた。
「メイはね、私と同じで一度死んでいるの」
「っという事はもしかして彼女も?」
「うーん、どちらかというと…… 違うかな……」
「あたしはね、あの婆に魂をこの小さな人形に閉じ込められているの。ある意味貴女達仲間なのだから違わないわ」
彼女は先程のお転婆そうな雰囲気から一変し、どことなく冷たい印象を受けるような感じの無表情で、淡々と答える。
それから、彼女はそのまま歩き出して私達の傍を過ぎ、どこかへと行ったのだった。
一瞬だけ見えた彼女の背中が物寂し気に見えたのは気のせいではないだろう…… 多分ね。
「あまり気にしない方が良さそうね」
「う、うん。じゃあ、行こう……か?」
「えぇ」
私達は気を取り直して、最後の図書室へと向かった。
一時間後。
愛の案内を終えて、愛がメイによって御呼ばれされ、暇になった私は白い丸机と椅子が二つあるバルコニーで取り敢えず本を読む事にした。
小鳥の囀りが耳に心地よく、そよ風が私の身体を優しく撫で、気持ちが良い……
本を閉じて寝入っても良いぐらいである。
「真奈、待たせてごめんね」
「別に良いわ」
「そういえば昼のお仕事を見せて無かったね、今から喫茶店に行くけど良いかな?」
「勿論、どんな所かとても楽しみよ」
「期待してて、とても楽しい所だと思うから!」
彼女はそう嬉しそうに答えると、私の手を取る。
私は彼女に引かれるような感じで、本を机に置いてからゆっくりと立ち上がり、愛に手を引かれながら少し驚いた。
(昨日はあんなにオドオドしていたから、臆病な性格なのかな?っと思ってたけど、案外好きな事とかには活発的な子なのね)
彼女は余程好きなんだろうっとしみじみと考えると、ますますその喫茶店がどういった働きをしているのか、どんな所なのかが気になり、こちらも何だか楽しみになってきた。
「夜とはまた違った光景ね…… っというより、あの化物を殺した時に飛び散った血が無いわ…… っというより、あんまりにも平和で賑やか過ぎない?」
私は愛と一緒に昨日、私が大きな満月が輝いていたあの真夜中で走り回ったあの街道へやってきた。
確かここで私は男の壮絶な悲鳴を聞いたし、愛がマネキンの身体にナイフを突き立てて、化物の身体を血まみれにした光景は今でも覚えている。
「昼だけは絶対に化物が現れない…… からかなぁ…… 後、外に出ないで化物払いの印を家に貼ってあれば襲われないし……」
「そんなお得な印があるのね」
「教会のおかげだよー…… まあ、私も化物だからその印に追い払われちゃうけど」
「それは困ったわね、あれ…… じゃあ、あの洋館には」
「うん、付いてないよ。まあ、夜は基本皆外に出るから印を貼らなくても良いけどね」
彼女は苦笑しながら私に説明する。
私はそれが昨日の事なのだろうっと推測し、彼女に伺ってみた。
「それは、昨日と関係あるの?」
「うん、そうだよ」
「へぇ…… 本当はまだ聞きたい所だけど、あのお爺さんが説明してくれるだろうし今は良いわ」
「真奈って時々思うけど、まるで流れが分かってるかのように前へ前へ話を進めるね…… いいけど……」
彼女は何故か私から顔を離してそっぽを向く。何だか頬が膨らんでいるけど、もしかして何か怒らせるような事でも言ったかしら?