第十話 燃やされたけど別に何ともなかったから結果オーライよね
長くなったけど、いつもの事なのでゆるちて♪
太陽が水平線の向こう側で沈みかけている茜色の空が綺麗な夕暮れ。
私はMasterから見学がてらに今夜の狩りに同行するよう命じられ、愛と一緒に外へ出ていた。
昼にはあんなに賑わっていた人々はすっかり姿を消しており、人気がすっかり消えた街並みにどこか寂しさを感じる。
だけど、そんなことはどうでもいい。
「夜になる、夜になる。化物共が蔓延り、人間を喰らう狂気の時間がやって来る…… ふふふ、何だかぞくぞくしてきちゃうわ」
夜になったら、またあの恐ろしい姿の化物が街に現れる。
そんな事を考えていたら、胸がドキドキし、心が跳ねる思いだ。
「真奈って本当に変だよね…… 何でそんなに嬉しそうなの? 何だかラスボスっぽいし」
愛が若干引きつった笑いで私に問いかける。
私は彼女の質問に笑顔で答え、それから彼女の肩に手を置いた。
「自分でも分からないわ、確かに愛の言う通り変ね。だって自分の心が分からないもの…… きっと人間様に仇なす敵を殺せると思ったらまるでヒーローみたいで素敵だと思ったからかしら?」
「ま、またそうやってはぐらかす……」
素直に答えないでいると、愛が頬を膨らませて不満を口にする。
私はそれに更に笑っていると、今の今まで忘れていたけど、今夜の狩りメンバーであるあの小さなお人形さん、アメリアがため息を吐いて話した。
「お二人さんいちゃつくのは後にして、そろそろ準備したら? もう、太陽が沈み切るわよ」
そう言えばそうね、彼女から言われてようやく私は、周りが薄闇に包まれている事に気づいた。
太陽が完全に没した瞬間、足下から蠢く黒い液体じみた物がごぽっという音を立てながら現れる。
やたらリアルなどす黒いスライムを私はまじまじ眺めていると、そのスライムが私の足に絡みついた。
「真奈!?」
化物が絡みついた足から粘っこい感触がして気持ち悪いうえ、何だかじわじわ痛みがしてきだし、愛が真っ青な顔でナイフを取り出して私の足下に居るスライムを払いのけようとしている。
しかし、ナイフはあまり効いていないらしく、逆に愛のナイフを自分の身体に取り込んだ。
「愛、離れないと貴女も私と同じ目に遭うわよ!」
「うぅぅ、ごめんなさい!」
愛は私に謝ると、即座にその場から離れる。
スライムは取り込む相手が減ったとみるや、再び私の身体を侵食しようと、じわじわ動き始めた。
気持ち悪い、おのれスライム。
「ったく、世話が焼けるわね!」
隣に居たアメリアがどこから取り出したのか、自分の身の丈以上の大きな鋏を持つや私にこびりついているスライムへ向かって一直線に駆ける。
ちょっと待って、愛の短いナイフなら良いとして、そんなでかい鋏で私の足に引っ付いているスライムを攻撃したら、私の足が切断されるのでは?
「あ、アメリア! ダメ! それだと真奈の足が切れちゃうよ!」
「切れちゃえば良いじゃない、彼女の不用心が招いた事なのだし」
「一理あるわね、でもちょっと待って、自分で何とかするから」
私はアメリアに攻撃を中断してもらうよう、自信満々に自分で何とかするっと断言。
だが、全く頭の中で考えて居なかったから取りあえず何とかなるかみたいなやけっぱちな気持ちで、首に掛けてあるネックレスを握り、『現れろ』っと呟いた。
何とかなる、多分何とかなる。
ズブズブズブっというまるで肉をじわじわ刃物で貫いているような例の音と共に、魔法陣が現れて三匹の可愛いゾンビ犬が目の前に姿を現す。
ゾンビ犬の三匹は早速主人である私が襲われていると判断するや、すぐさま私の元へ駆け、足から若干腰辺りまで侵食しつつあるスライムに思いっきり噛みつく。
「グアアアア!」
即座に噛みついた一匹は雄叫びを上げながら喰らいつくが、それでもスライムは剥がれない。だが、噛みついている一匹とは別の一匹がおもむろに口をガパッと開け、ドラゴン宜しく炎を吐き出した。
ジュワァァァァァァァァァっという音を立てながら燃えるスライム。それと、私。
「真奈ぁぁぁぁ!?」
「自害するなんて、とんだ勇敢さね! 貴女の事をみくびってごめんなさい、そしてさようなら!」
愛が私の名前を叫び、アメリアが私に対してお別れの挨拶を述べる声が聞こえる。
どうやら、私の冒険はここまでのようだ……
っと思っていたら、あら?
何故か周りの景色は炎でゆらゆら景色が揺れているのだが、どういう事かしら、全く自分の身体に焼けるような熱さを感じない。
おかげで、あのぬめり気のある気持ち悪い感覚が解放されたのは良いけど、ただただ呆然と燃えている私のような構図が出来ており、全く面白味が無かった。
これは…… あえて、二人を騙すような感じでリアクションを取ったら良いのか……
そんな事を考えていたら、炎はすっかり鎮火し、二人の驚愕した表情が私の視界に映る。
まあ、確実に死んだと思ってただろうからね、仕方ないわ。
「実は私の制服、防火製なの」
「面白くない嘘は良いからさっさと説明しなさい! 全くほんのひとかけらでも心配して損した!」
いや、全く心配して無いでしょ、貴女。
まあそんな事はどうでもいいわ、しかし、これをどう説明すれば分からないので正直に「私も分かりません、全く持ってさっぱりよ」っと首を振って答えた。
「本当に良かった…… 多分だけど、召喚者を殺せないように何かの魔法をかけてるのかな?」
「愛の言う通りかもしれないわね、でも、今はそんな事を考えている暇は無いわ」
先程の驚きからほっと胸を撫で下ろした彼女は、今度は思考の渦に飲まれようとしているので、私はすかさず行動するように促す。
すると、アメリアが感心したような表情で、腕を組んでからふてぶてしく私に話しかけた。
「あら分かってるじゃない、貴女? 確か名前は真奈だっけ?」
「Yes,I am Mana」
「全く分からないわ、どこの言葉よ……」
わざとらしく英語で答えると、彼女は目を細めてから訝しく私に質問する。そういえば忘れていたけどこの世界は日本の言葉しか伝わってないのだった。
あれ、でも皆はMasterって主を英語で言ってるし、何故だろうか?
……まあいいわ、そのうちその謎も解けるだろうから今は考えないでおこう。




