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メタリッカー  作者: 小高まあな
第六章
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28/33

6−7

「失礼します」

 アリスの部屋に入ると、

「白藤!」

 アリスが心配そうな顔をして出迎えてくれた。

「お嬢様、さきほどは急に中座してしまい、申し訳有りませんでした」

「そんなこといいんだけど、大丈夫?」

「はい」

 まっすぐにアリスを見つめると頷く。

 もう迷わない。

「シュナイダーさん、少し外して頂けますか?」

 控えていた執事長にそう願うと、彼は少し微笑んで部屋を出て行った。

 二人っきりの部屋。

「……いつだかと、立場が逆ですね」

 ついこの前も似たようなことがあったな、と思って小さく笑う。

「……ああ」

 アリスも苦笑いした。

「座ったら?」

 アリスがベッドの横の椅子を指差す。

 素直にそれに従って腰掛けた。

「平気?」

 もう一度問われて、頷く。

「少し迷ったりもしたのですが、平気です」

「……そう?」

「はい、お嬢様」

 笑顔をひっこめて、真剣に彼女を見つめる。

「お嬢様、一つだけお願いがあります。私が乗っ取られたらそのときは」

「そんなことない!」

 言いかけた言葉を、アリスの悲鳴が遮った。

「そんなことないありえないさせないつ」

 怯えたように叫ぶ彼女の手を、そっと握る。

「お嬢様、万が一、です」

 これだけは絶対に彼女に言おうと決めておいたことだ。

「そんなことがあったら殺してください。貴方を傷つける前に」

 そんなこと、耐えられない。

 アリスは大きく目を見開き、銀次の顔を見つめ、やがて全てを飲み込むような沈黙のあと、

「……億が一、そんなことがあったら」

 少し泣きそうな顔をしながら、銀次に告げた。

「わたしがやるわ。貴方は私のものよ、全て」

 そうして銀次が握った手を、アリスがそっと握り返す。

 見つめ合い、どちらからともなく顔が近づいたところを、

「失礼します!」

 妙にはきはきした声がして、飛び退くように二人、距離を取り直した。

「おや、おじゃまでしたか」

 飄々と呟いたのは、有能なる執事長だった。

「……シュナイダー」

 アリスが苦々しく呟く。

「なんの用?」

「はて、なんの用でしたか。わたくしとしたことが、忘れてしまったようですね」

 微笑む。

 そんなわけあるまい。優秀な彼が用事を忘れることなんてありえない。おおかた、外で聞き耳でもたてていたのだろう。

 アリスもそれはわかったらしい。アリスの柳眉が吊り上がり、なにか怒鳴ろうと口を開きかけて、

「……ああもう、いいわっ!」

 投げやりにそういうと、怒鳴るのをやめた。

「ここで怒ってもばかばかしい! でも腹立つ! だから私はもう寝ます! 二人とも出て行って!」

 それだけ早口で言われるので、男二人部屋を後にする。

「いいとこだったのにっ」

 ドアが閉まる直前、アリスのそんな声が聞こえた。

 いやはや本当にまったく。

「銀次君」

 低い声で名前を呼ばれて、ざわっと肌が粟立った。恐怖で。

「清い交際以外認めませんよ」

 睨まれた。こえー。ことによるとXよりも怖いかもしれない。

「わかっています」

 だからしぶしぶ頷いた。

 わかっているさ、今は。

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