“笑い”と“イライラ”を堪えて
ニヤリと笑う心を、俺は堪えつつさとるに近づき、口を開いた。
俺:「あの・・・吉田探偵事務所のところの子だよね?」
:「僕の名前は本田剛って言うんだけど、君の名前は?」
自分で言っといてなんだが、“僕”って言うのはさすがにキモイ…っと思った。
そんなことはさておき、さとるは俺の言葉ににこやかに返事をした。
さ:「吉田慧って言うんだよ、僕の名前」
それを聞いて、俺は話を進めた。
俺:「そうか、さとる君かぁ…」
:「よろしくね?」
さ:「うん!!」
俺:「ところでさ、僕この前君のお父さんのところに相談しに行ったんだよ」
さ:「そうだったんだ!!」
:「僕はお父さんの仕事について詳しくは知らないけど、昔ね?」
:「お父さんは仕事のことを『やりがいのある仕事だ』って言ってたよ」
:「この間だって、女の人の事件を解決したし、その前だって、その前だって“う~ん”とすごい量の事件を解決してるんだ!!」
:「すごいよね!!お父さんって!!」
そう言って“う~ん”のところで空中で大きく円を書くさとるに対し、俺は心を燃やし続けた。
それからしばらく、聞きたくもない簡単な事件から難事件までの話を聞かされた。
そして、わかった。
奴は子供に愛を注いだ。
しかし、その愛の分だけ、奴は俺に憎しみを注いだ。
大きく膨らむ、憎しみという名の風船。
困ったことに、今にも破れてしまいそうだ。
そういったことを押さえようとすると、イライラする。
とてもイライラする…。
そんな気持ちをどこにぶつけよう?
そんな疑問を持ち始めた頃、俺はついに奴のところに到着した。