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兄が好きな妹なんてラブコメ展開はありえない。  作者: 詩和翔太
3章 ヤンデレ妹の兄は先輩の彼氏を演じるようです。
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雛祭番外Ⅰ 秘密の女子会

 三月三日――雛祭り。


 日本では、女の子の成長を祈る節句、そして女の子が主役の年中行事としてよく知られている日。


 至る所で男雛と女雛を中心とした雛人形が飾られ、桜や桃の花などの春を代表とする花々をモチーフにした飾りを飾ったりと、色々なものを楽しむ節句祭りである。


 そんな、女の子の日といっても過言ではない今日。


 あかりと夏希、梨花と瑠璃。つまるところ、二次元部の女の子たちの姿は夜の家にあった。


 ちなみに、家主である夜の姿はない。それもそのはずで、簡単な話、女子会するから夜は出てってと追い出されたのである。俺、家主なのに……と夜が困惑していたのは言うまでもない。


 渋々といった様子な夜に罪悪感を感じないでもなかったが……、夜にいられると都合が悪いので仕方がないのだ。


「それで、瑠璃先輩。ナイトを追い出して何をするの?」

「追い出すって人聞きが悪いよ、夏希クン。夜クンにも言った通り、みんなで女子会を開こうと思っただけだよ?」

「女子会ですか?」


 梨花の言葉に、こくりと頷き肯定の意を示す瑠璃。


 女子会がどういうものかを知らない四人ではある。だが、イメージだけはある。


 おしゃれなカフェとかできゃっきゃうふふ的な話をするのだろう。コイバナとか、彼氏の愚痴とか、その他もろもろな話を。


 だからこそ、夏希と梨花は首を傾げる。僕たちが、私たちが女子会? と。


「まぁ、女子会といってもただ話すだけだよ? この前のバレンタインデーについてね?」


 バレンタイン、という単語にぴくりと肩を揺らす三人。


 思い出すのは先月のこと、夜にチョコレートを渡したこと。


 確かに、バレンタインデーのことについて話すのなら、夜はいない方がいいだろう。


 だったら、最初から女子会の会場を夜の家にしなければいい話ではあるのだが。


「まずは確認だけど……みんな夜クンにはチョコレートを渡したんだよね?」


 こくりと頷く三人。ただし、あかりと夏希は自信満々に、梨花は遠慮がちに。


 それぞれが渡したチョコレートが義理なのか、本命なのかなんて詮索するのは野暮というものだし、そもそも聞く必要すらないだろう。みんな、言うまでもなくわかっているはずなのだから。


「でも、それが今回の女子会と何の関係があるんですか?」


 梨花の疑問はごもっともだろう。


 確かに、女子会にコイバナは欠かせない……はずだ。本物の女子会とやらを知らないからあくまで予想だけど、男女問わず集まって話すとなれば定番はコイバナであることに変わりはない。


 故に、バレンタインデーなんかは会話の内容にはもってこいだ。それはわかる。


 だが、わざわざ女子会を開いてまで話す内容かと聞かれれば……別にそんなことする必要なくね? という結論に至ってしまうのだ。


「みんな、今日は何月の何日?」

「三月三日の雛祭りだよ?」

「そう、夏希クンの言う通り今日は三月三日。だったら、今日から十一日後は?」

「十一日後ってことは十四日ですよね?」

「……あ、ホワイトデーですか?」

「その通り!」


 びしぃ! とあかりに向けて指を差す瑠璃。テンションが何時になく高いのは雛祭りだからか、はたまた滅多にない番外編だからか。おそらく後者だろう。


「そろそろホワイトデーでしょ? だから、夜クンからどんなお返し貰えるかなって……」

「……え、もしかしてそれを話し合うためだけに今日集まったんですか?」

「う、うん……」


 恥ずかしそうに頬を赤らめながら頷く瑠璃。


 どうやら、お互いの理想や妄想を話し合いたいがために女子会を開いたらしい。


 女の子らしいというか、可愛らしいというか……。


「でも、そもそもの話、夜ってお返し用意してくれるんですか?」

「あ、それなら大丈夫だと思います。お返しどうしようとか部屋の中で悩んでるみたいですから」

「そっか……って、部屋の中? あかりクン、どうやって聞いたの?」

「盗聴しました」

「「「……」」」


 平然な顔で、さも当然と言わんばかりに、犯罪しましたと宣言するあかり。


 あかりが盗聴しているということを知っている三人だが、未だにどういう反応をすればいいかわからない。


 故に、三人は無言を貫く。私、何も聞いてませんよ? と、あくまで聞いていない振りをする。


 そんなこんなで、四人は何を貰えたら嬉しいとか、そもそも夜のどんなところが好きなのかだとか、まさしく女子会のような会話を交わした。


 幸せそうな笑顔を浮かべ、話し合う四人の姿は、先輩後輩など関係なしに仲のいい友達としか見えなかった。


 そうして、小一時間ほど経った頃。


「ただいま……」


 がちゃりとドアを開け、恐る恐る玄関を覗き込む夜。


 自分の家なのに、どうして泥棒のようなことをしなくてはいけないのだろうか。


 ご近所さんに間違われて通報とかされたらどうしよう……。


 そんなことを考えつつ、リビングに向かうと。


「……妙に静かだなと思ったら……」


 四人は自分の腕を枕代わりにして寝息を立てていた。


 疲れ果てて眠りについたのか、はたまた心地よくて眠たくなったのかはわからないが。


「……起こさないようにしないとな」


 幸せそうな寝顔を浮かべる四人を見て、夜はため息を吐きながらそう独り言ちるのだった。

※2020/03/03に改稿しました。

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