任せたぞ
「でっか……」
眼前に悠然と聳え立つ瑠璃の実家のあまりの大きさに、夜は素直な感想を零した。
瑠璃に実はお嬢様だったと聞かされた時から、予想もつかないほど大きい家なのだろうとは思っていた。
けれど、実際に目の当たりにした瑠璃の実家は、予想していたよりもとても大きくて。十円玉の裏と勘違いされやすいが表に書かれている平等院鳳凰堂とまではいかなくとも、視界に収まりきらないほど大きいお屋敷のような、否、お屋敷そのものだった。
その証拠に、遠目からでも見えるほど大きな門の前には黒スーツにサングラスという子供たちだったら某人気番組の鬼を彷彿とさせる姿の男が二人立っている。きっと、ボディーガード――侍衛の人たちだろう。雰囲気的には「よろしく」を「夜露死苦」とか言っていそうでも侍衛の人たちだろう。
「行こ、夜クン」
「あ、はい……」
呆気に取られていた夜の手を取り、瑠璃は震える葦に叱咤して門へと向かう。
すると、瑠璃と夜を視界にでも捉えたのか。侍衛の男二人は互いに顔を見合わせこくりと頷き、少しずつ近寄ってきて……。
「「お帰りなさい、お嬢様!」」
「た、ただいま……」
頭を下げる二人に、瑠璃は頬を引き攣らせながらそう言った。瑠璃の言葉に応えるように、再び「お帰りなさい!」と口にする。
「ほ、ほら夜クン、早く行くよ!」
よほど気まずいのか、ただ呆然とするしかなかった夜を連れてそそくさと歩き出す。
夜は現状に戸惑いつつも、されるがままに瑠璃の後を付いていった。
瑠璃と夜の背中を見送りながら、星城家の侍衛たちを纏める桐谷守はため息を吐く。
「どうしました、桐谷さん」
「いや、何。あの男が真璃様の言っていたお嬢様の彼氏なのかと思ってな……」
瑠璃が夜月夜という彼氏を連れてくる、と瑠璃の母親であり桐谷たちの雇い主であり主でもある星城真璃から聞いてはいた。
だから、瑠璃の隣に見知らぬ男が立っていても事前に聞いていたおかげで特に気になることはなかった。
だが、真璃から憶測とはいえ聞かされた事情を知っている身としては、あの男――夜が瑠璃を救うに値する人間なのかわからないのだ。
「まぁ、確かに気弱そうなガキだったっすね」
「口を慎めよ? その評価は否定出来ないがお嬢様が選んだ男なことに変わりはないんだ。俺たちに口を挟む権利はないしな」
部下の言葉は否定出来ない。だって、頼りなさそうで気弱そうで、何にも出来ないガキと思ったのは桐谷も同じだったから。
だけど、夜を選んだのは誰あろうお嬢様――瑠璃である。仕えるお人の選択を否定するなんて出来るわけがないしそもそもするつもりもない。
だって。
「それに、あの目は間違いなく男の目だった。だから、大丈夫さ」
「そうだといいんすけどね……」
覚悟が決まっていた。決意を宿していた。だから大丈夫だと、そう思えるのだ。
根拠なんかないけれど、それでも、そう思える。
まぁ、お嬢様の未来をあの年端もいかない少年に任せるのはどうかとは思うが。
「――任せたぞ、夜月夜」
桐谷はすでに見えなくなった夜の背中へと、激励の言葉を投げかけた。
ども、詩和です。お読みいただきありがとうございます。
さて、今回はいかがでしたでしょう。俺は書いていて心が痛みました。
瑠璃が選んだのは夜ではなく、家でした。まぁ、皆さん気付いていたと思いますが。
次回は、夜がいなかった空白の二日間でも書こうか、走り去った夜のことを書こうか、悩んでおります。もしかしたら、二日間の方は書かないかもしれません。そうなった暁には、ご想像にお任せします。
最後に……、やっぱりあかりはヤンデレでした。追いかけてくるとか……。夜、大変だね……。
さて、今回はこの辺で。
それでは次回お会いしましょう。ではまた。
この場でも感謝を。展ラブの総合評価が100を越えました。誠にありがとうございます!




