第96話 ハロー大阪
理系大学の割にキャンパスは狭かった。ただし、ここは主に1年生が基礎学を学ぶのをメインにしたキャンパスだ。医学部や研究を行うキャンパスはもっと郊外の広い敷地にある。
「学食にたこ焼きとかお好み焼きとかあるかな」
「大志、ふざけてると大阪の人に怒られるよ」
でも、あった。
僕はお好み焼き定食。お好み焼きにご飯と味噌汁と小鉢がついてる。志成はたこ焼きセット。たこ焼きにミニぜんざいとコーヒーがついてる。
「うまい!」
「うん、おいしい」
いきなりの ”大阪名物” にテンションが上がる。当たり前かもしれないけど、周囲には大阪弁が飛び交っている。
「どうしよう。わたし、大阪弁できないよ」
「いや、別にしゃべる必要ないよ。地方から来てる学生もいっぱいいるだろうから」
そう言ってる傍から、サングラスをかけ、アロハシャツを着た男が近づいて来た。
「なー、キミら1年かー? よかったら軽音部入らんか?」
「え、軽音・・・? その服装でですか?」
しまった、思わず口がすべってしまった。
「何言うとるんや、キミ。この恰好でやるゆうたら決まっとるやろ? ビーチボーイズや」
「はあ・・・」
「彼女、かわいらしい顔しとるね。どう? 入らん?」
「わたし、音楽だめなんです」
「えーよえーよ。キミならステージで立っとるだけで映えるよ」
「あ、時間なんで、じゃあ」
僕は強引に会話を打ち切り、志成を連れて学食を出る。
「何なんだ、今の人は」
「大阪の人だから気さくなのかな?」
「もっと距離感を考えて欲しいよ」
けれども、その後も同じだった。
「よ、彼女、空手やらんか?」
「飲み会行かん?」
教室に着くまでに5~6人に声を掛けられた。恐るべし大阪。
教室に着くと、階段型の机の前の座席に座ったレゲエ風の男子学生が振り向いた。
「代返頼めん?」




