第65話 させておけ
数日後。今度は庭に植えてある仏壇用の花がただれて枯れていた。
「除草剤だ」
「大志、警察に言おうよ」
「うーん」
ばあちゃんは花が枯れたので花屋で仏花を買ってくるよう、志成に頼んだ。
僕と志成が警察に言おうかと相談すると、
「させておけ」
と言っただけだった。
次の日。
志成が膝から血を流して買い物から帰って来た。
「転んじゃって・・・」
「え? どこで?」
「スーパーの駐輪場で」
「どうしたの?」
「なんか、針金が引っ掛かってて」
タイヤの泥除けと駐輪場の支柱に針金が絡まっていたらしい。それに気付かずに自転車をこぎ出したら、ビン、と針金が張ってから、ぶつっ、と千切れ、その勢いで手もつけない状態で転倒したという。左ひざをすぱっつ、と切った感じの傷口で、跡が残りそうだ。出血はなんとか止まった。
「ごめん、べダル曲がっちゃった。修理代かかるね」
「いや、志成が無事ならそれでいいんだけど、針金が引っ掛かるなんて。大体その針金はどこから出て来たの」
「まさか、とは思うんだけど」
「ユウ、か・・・ばあちゃん」
「させておけ」
「でも、志成が怪我したんだよ!」
「私だって志成ちゃんや大志の身が心配だわい! だが仏様が、”今はさせておけ”、とおっしゃるんだ。何かお考えあってのことだ。おっしゃる通りにするしかない」
「ねえ、ばあちゃん。”ユウ”、は3人目の敵なのかな?」
「それはまだ分からん」
「分からん、て・・・」
「本当に分からんのだ。私も仏様に伺ってみたい気持ちはあるんじゃ。だがまだその時期ではないとおっしゃるんじゃ」
「分かったよ」
とにかく気を付けるしかない。防犯カメラを設置しようかとも思ったけれども、僕らにはその出費の余裕はない。
買い物も2人で出掛けるようにした
バイトは仕方ないのでバラバラだけれども、それ以外の時間はほとんど志成と一緒に行動するようになった。
ちょっと、嬉しくはある。




