第16話 母娘と僕とで歩いた
「お母さん、離婚するの?」
「そんな浅はかはことはしない。ただ・・・」
シズルさんは僕を見る。
「先代さんのおばあちゃんと話がしたいの。お家にお邪魔してもいいですか?」
「は、はい。もちろん」
断る理由など無かった。
僕は自転車を押しながら、3人で歩いた。徒歩だとさすがに時間がかかる。途中でお昼時になったので、ハンバーガー屋で食事にした。
「防災用、って言ってたけど、こういう時のために準備してたのよ」
シズルさんが持ってきた荷物は小振りのデイパック一つだったけれども、中にはシズルさん名義の預金通帳と印鑑、いくばくかの現金に2人の健康保険証と加ノ上さんの通院カードも入っている。
「まだしばらくは薬を飲み続けないといけないから」
シズルさんは娘の病状を説明してくれた。
「薬が切れたら、またホルモンのバランスが崩れて以前の体型に戻るんです。でも、本当に心配なのは、体型なんかよりもその反動。パーキンソン病の投薬治療もそうなんだけど、急に薬をやめると体が全く動かなくなる程の影響があるの。だから、この治療法を選ぶかどうかも最初はすごく悩んだんだけど・・・」
加ノ上・父が世間体を気にして強引に踏み切ったのだろう。
イメージとは反対に、シズルさんはすごく明るい人だった。多分、これが本質なのだろう。加ノ上さんも母親と話す時はけらけらと笑う。ちょっとだけこの2人が羨ましい。




