第14話 彼女の父親
キッチン兼リビングの部屋に通された。
加ノ上家は、父、母、加ノ上さんの3人家族だが、テーブルは6人掛けだ。おそらく、お客を通すのがすべてこの部屋なのだろう。
「高校で同じ、先代くん」
彼女の紹介を待って挨拶する。
「先代です。志成さんにはお世話になってます」
彼女とは昨日会ったばかりだけれども、そう言ってお辞儀した。
「わたしの父と母」
加ノ上・父はいすに座ったまま。先にもう立ち上がっていた加ノ上・母がまず挨拶してくれた。
「志成がお世話になっております」
そう言って深々と丁寧なお辞儀をしてくださった。
加ノ上さんとよく似ている。顔もそうだけれども、雰囲気とか立ち居振る舞いが、どことなく。もちろん、加ノ上さんがお母さんのそれを吸収して育った、ということのはずだ。
加ノ上・母は遠慮がちに加ノ上・父に声を掛け、挨拶を促す。
「雅人さん・・・」
加ノ上・母の名前は何と言うんだろうとぼんやり考えながら加ノ上・父の反応を待つが、何の動きもない。
「お父さん・・・・」
加ノ上さんも声を掛けるが、全く反応しない」
「みなさん、お休みの所、お時間を頂き、本当にありがとうございます。志成さんから、僕が何のためにここへ来たか聞いておられると思いますから、早速話させていただきます」
一方的に言って、失礼します、と僕は席に着く。
加ノ上・母も、父の横に並んで座る。テーブルを挟んで、僕と両親の1対2で対峙する形だ。
もっとも、僕が向き合うべきは、加ノ上・父なんだろうけれども
「先代くん。コーヒーと紅茶とどっちがいい?」
加ノ上さんの声に、ふっと心に余裕ができる。
「コーヒーを」
コーヒーとケーキを給仕し、彼女は僕の隣の席に座った。
意外だったけれども嬉しかった。
これで2対2だ。




