悼の章-7
「じゃあ、お兄さんはどうする?」
年子姉妹の姉に問われ、お兄さんは神妙な面持ちになりました。
そしてしばらく考えて、こう口にします。
「ぼくは頭と耳にしよう」
その決断に年子姉妹は息を飲みます。
「な、ななな」
「そんなの兄さん死んじゃうじゃん!」
取り乱す姉妹。それをお兄さんは宥めます。
「死んじゃうかもしれないのはみんな一緒だよ。末っ子が内臓をって自分から言ったのに、一番上のぼくが逃げるわけにはいかないだろう」
なるべく穏やかな声で言うお兄さんですが、本当はやっぱり怖いようで、手が少し震えていました。
姉妹たちがそこまで注意がいかないうちに双子の兄が言葉を次ぎます。
「兄さんが頭っていうのはいい考えだと思うな」
「何言ってんの!?」
平坦な声で放たれたあっさりとした意見に年子の妹が激怒しました。その激情に臆することなく、双子の兄は続けます。
「この兄弟の中でお兄さんの顔が一番父さんにそっくりだよ。母さんもよく言ってたじゃない。父さんに顔のそっくりな兄さんが頭を捧げれば僕たちが知ってるそのままの父さんが戻ってくる可能性がぐんと高くなると思うよ」
「それを言ったら、父さん譲りで足の速い上の姉さんは左足、手先の器用な二番目姉さんは右手にすればいいんじゃないかな」
双子の弟が続けた言葉に年子姉妹は言葉を失います。怖いけれど理論的で、末っ子や兄が最も危険な部位をやるというのですから、それこそ断りようがありません。
「あんたたちちょっとどうかしてるわ! いくら父さんや母さんのためとはいえ、冷静すぎやしないかしら?」
承諾はしましたが年子の妹は言い返さずにはいられませんでした。
双子はわけがわからないとでも言うかのように同じ方向にこてんと首を傾げます。年子の妹はそれに苛立ちますが、そこへ引っ込み思案の子が仲裁に入りました。
「お姉さん、落ち着いてください。私たちはただ、お父さんに会いたくて、お母さんに笑ってほしいだけです。それ以上に何も望みません」
それはそのまま年下四人の思いでした。少しおかしく感じられるほど、四人の思いは純粋でした。みんな、子どもだからでしょう。
気弱な妹の真っ直ぐな瞳に年子の妹は何も言い返せません。
年子姉妹にはどうしても、お父さんを蘇らせるための儀式に疑問を抱いてしまいます。果たしてこれはおかしいことなのでしょうか。
ひとまずその日はパーツ決めだけで終わりました。そのまま儀式を行えればよかったのですが、夜も更け、末っ子が寝てしまったのでこの日はそこまででした。




