悼の章-6
「ええ? 蘇らせることができるって、まさかぁ」
「ん」
疑る年子の妹に双子の弟が読んでいた本を突き出します。なかなか受け取らないのに苛立ってか、ばっと開き、親切にページを示しました。
「んー何何? "既に亡い者を呼び戻す方法"? 何これ黒魔術か何か?」
「祈祷の一種」
「小学生なのに変わった趣味してるわね」
双子の弟の淡白な答えに年子の妹は顔をひきつらせます。
妹の横から顔を覗かせた姉が本の中身を見て、こてんと首を傾げました。
「何これ、難しくてわかんない」
「"死せる者に新たな肉体を与うべく、術者八人を欲するなり"」
横合いからの静かな声に姉は驚きます。見ると、引っ込み思案の子が訥々と読み上げていました。
「"捧ぐべきものは内腑、四肢、頭部、目、耳なり"」
「ナイフ? シシってライオンかな」
「シシは鹿じゃない?」
当てずっぽうな年子の姉妹に引っ込み思案の子がまごまごしてしまいます。
その様子を見て、上のお兄さんが苦笑いしました。
「違うよ、二人共。ここでの"ないふ"は内臓のこと。"しし"は胴体から四つに伸びる手足のことだよ」
「へぇー。じゃあ"とうぶ"ってのは? 東?」
「"耳鳴り"っていうのも変」
年子姉妹のお惚け解答に上のお兄さんは頭を抱えました。
「あのー、"とうぶ"は頭で"耳鳴り"は耳也で、"なり"は古文の助動詞……意味は"〜である"……だと思う」
自信なさげに引っ込み思案の子が言います。
つまり、この文に書かれているのは"死んでいる者に新しい体を与えるために術者が八人必要で、内臓、手足、頭、目、耳を捧げる"ということでした。
内容の解読が終わったところで年長組(一番上、年子の姉妹)は顔をしかめます。なかなかに厳しい内容だったからです。
内臓、手足、頭、目、耳……どれも失うと命に関わったり、そこまではいかなくとも生活に多大な支障をきたすものだからです。
引っ込み思案の子と双子は黙ったままです。ほとんど無表情なので、何を考えているかわかりません。
沈黙が続く中、末っ子が嬉しそうに声を上げました。
「それやろうよ! お父さんに会えたら、お母さんきっと喜ぶ。元気になるよ」
お母さんが喜ぶ──それは兄弟たちにとって願ってもないこと。
「やろう」
一番上のお兄さんが宣言しました。それに反対する声はありませんでした。
七人兄弟は力を合わせてその祈祷術を実行することにしました。
そのために話し合いをします。
それは、誰がどの部位を捧げるか。
「ぼく、内臓がいい!」
一番最初にそう言ったのは末っ子です。末っ子のとんでもない発言に上のお兄さんは目を剥きました。
「ねぇ、わかってる? そこって一番危ないところだよ?」
内臓を失ったら、人間は生きていられません。末っ子はそれをわかっているのでしょうか。
すると末っ子は言います。
「ぼく、お父さんに会ったらちゃんと顔を見たいから目はあげられないし、お話ししたいから口のついてる頭もあげられない。お話しするには聞く耳も必要でしょ? あと、だっこしたり、一緒に遊んだりしたいから手足がないのは困るなぁ。だったら内臓しかないよ。だからぼくはそれ」
末っ子の割に理路整然とした語り口で、他の者たちは反論できませんでした。
「それなら、俺は左手あげる。いらないから」
「ええっ?」
「僕右足。いいでしょ?」
平然と双子が告げます。上のお兄さんの開いた口が塞がらないうちにそろそろと引っ込み思案の子が手を挙げました。
「わ、私、目いらない……です」
すんなりと差し出す年下四人に上三人は唖然とするのでした。




