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作者打たれ弱いので、作品への誹謗中傷は一切見なかった事にします。酷い場合は警告無しに対処したりもしますのであしからず。
誤字脱字や引用の間違い指摘などはとてもありがたいので、知らせてやろうという奇特な方は宜しくお願い致します。
また、全ての作品において、暴力や流血などの残酷な描写、性的な表現がある可能性があります。不快に感じる方、苦手な方は読まないでください。
2012/11/25:公爵→侯爵に訂正
同 :「聞かせれて」→「聞かされて」に訂正(内容変更無し)
眠れなくても朝は来る。エヴルで迎える8回目の朝は、白々しいほどじれったくやって来た。
明け方、夜でも朝でも無い時間にカーテンの端から空を見上げて、黎明とやらをゆっくり鑑賞してしまったほどだ。
黎明の空は静かで、穏やかで、ひんやりしていた。
変わらぬ1日のスケジュールの中、それでも出発までに整えなくてはならない準備が沢山あり、伯爵様との授業時間はほぼ全てそれに充てられた。
「え?師団長様のご様子ですか?」
昼食のために取った休憩時間、たまたま思い出した風を装った伯爵様に今朝の師団長野郎の様子を聞かれたので、もったいぶって聞き返してやった。なんだ、伯爵様も昨夜はちょっとやり過ぎたと思ったのか。内心苦笑しながら小首を傾げてぶってみると、途端苦々しい顔をされる。
「カレン、まだご機嫌斜めだったのかね。しつこいよ」
「心外です。私だって一晩経てば多少は落ち着きます」
嘘じゃない。一晩悶々と過ごして、悶々疲れを起こして開き直る事に成功していた。
朝、アンマリちゃんが置いて行ってくれたワゴンから、私と伯爵様の昼食を持って来てテーブルへ並べる。手で摘める程の軽食なバルバトリア昼食事情も、囚人用と貴族用では質も量も違う。それはまあ当然だけど、囚人用はメニューもやっぱり毎日同じ。心底飽きて来た。
それでも本当の囚人なら、お昼ご飯が与えられるかどうかも怪しいのだ。文句言わずに食べる。
・・・美味しく無い。
心境に少々変化があった所為か、無性にお味噌汁やおにぎり、醤油ラーメン的な物が恋しくなってしまった。
ううう、死ぬほどスキヤキ食べたい。
いかんいかん。これ系の感傷は浸れば最後、二度と振り払えなくなる。
「いつもとお変わりありませんでしたよ」
感傷を振り払うためにも、明るく笑って言ってみた。伯爵様は一瞬手を止めたが、すぐに笑みを漏らしてお食事を再開なさる。看過の笑みだ。見なかった事にします。
「やはりそうかね。 まったく、あの頑固者」
昔、3人には何があったのだろう。その問題が解決すれば良いのにと思う反面、何故か昨夜の廊下での師団長野郎の様子を、伯爵様へ報告する気分にはなれなかった。
いや、誰にも言うつもりは無い。アンマリちゃんが喋る分には良いが、なんでか、私の口から語るのは違う気がする。迂闊に首を突っ込んで良い話でもないだろうし。
自分の事も上手く出来ない内は尚の事。
と、午前中に詰め込まれた新しいエヴル常識について、少し復習しようと伯爵様へ顔を向けた時、リーンと素っ気無いベルのような音が鳴り響いた。
会議中でも中断せざるを得ない程の音量にびっくりしたが、なるほど、これがこの部屋の魔導式ノック音なのね。どっちかって言うとやっぱインターホンよね、コレ。部屋によって音が違うのは知ってたが、お勉強部屋にお借りしているこの会議室の音は初めて聞いた。
・・・え?!インターホン?!
「い、如何致しましょう、伯爵様」
素直にどもってしまった私に、真っ黒魔導師はオーバーアクション気味にローブを翻して立ち上がり、にっこり笑顔で答える。
「貴女に来客予定が無いならそのまま居なさい」
「ありません。よろしくお願いします」
間髪入れず即答。昨日の今日なので侯爵様の可能性もあると思うが、女のなんたら、嫌な予感がした。余計な人物に姿を見られたらどうしよう、と引き攣っている私を置いて、伯爵様がいつもの調子を取り戻したらしい、大きなストライドで滑る様に扉へ歩み寄る。
演劇かオペラを見ている様だ。過剰で優美で悠然としている。案外これ、視覚効果が強いかも知れない。気を付けようっと。
「この部屋は現在貸し切りで来客予定もないのだが、どなたかね」
言い終わらない内に、少しも警戒していない素振りであっさり扉を開けた。相手は勝手に扉を開けて入って来るような無礼者では無いらしい。人ひとり分だけ扉を開いた伯爵様の、その長身ローブ姿に隠れて全く見えない訪問者の第一声は、意外な声と言葉をしていた。
「どーもー、お久しぶりです導師。覚えてらっしゃいます?ランスです。ここの、第一連隊の。レーダですよ、ランスロット・レーダ。あん時はどーもお世話んなりましたー」
異世界初の砕けた調子に、陽気な若い声に、一瞬ぽかんとしてしまった。何て言うか、王宮内しか知らない弊害だったと言うか、私はこの瞬間まで、この世界の人は皆物腰が丁寧で洗練されているセレブっぽいもんなんだと思い込んでいた。なので驚きも一入だったけど、冷静に考えれば間抜けな話。
「・・おお!あの時の!」
「あ、思い出して頂けました?いやあ、良かったー。ちょー緊張しましたよー。覚えて貰えてなかったらどーしよっかーって」
日本人価値観での普通っぽいヒト、居るんだ。しかも若干お軽い。
勤め先の営業部の森本君を彷彿とさせる。甘え上手なもりもっちは、お局ポジションの私に無駄に懐こうとした経歴の持ち主だ。お局なんて面倒な事とは縁遠い私のキャラにすぐ気付いてくれて、しつこかったのは1ヶ月程度で済んだが、未だにもりもっちと呼ばないと仕事の話も聞いてくれない困ったクソガキである。
ちなみにミキちゃんとは1回イイ仲になっちゃったらしい。内緒。
うん、つまり、チャラい感じなワケです。
しかも、伯爵様に通されてひょっこり現れた姿がまた、あの師団長野郎の部下とは思えないようなチャラさだった。
「あ、どーもー、お邪魔しまーす。ランスロット・レーダっていいますー。ランスって気軽に呼んでくださいねー」
入室するなり目が合い、目が合うなりニッカリ笑ってそう言った彼は、その笑顔が似合う明るいレッドブラウンの髪と瞳の、20代前半だろう若者だった。口角がきゅっと上がっているのが印象的なイケメンだが、体格はやはり私には見慣れない軍人のもの。隣に立つ伯爵様より5センチ以上は背が低いけど、首とか肩とか、特に袖を捲くって剥き出しの肘から手にかけてのゴツさが怖い。
うん。腰にはしっかり長細い剣もある。
でも、師団長野郎とお揃いの軍服をだらしなく着崩しているのが、何とも言えないです。
警戒して良いのか、警戒しなくて良いのか、判別が付かないタイプのヒト。今までにこの世界で見た誰よりも、平凡に近い顔立ちと話口調の所為だろうか。体育大学の学生に見えない事も無い。
・・・ああでも、警戒し難い、というのはそれはそれで怖いものが。
ぐるぐると渦巻く困惑は綺麗に隠し、初対面用の控え目な笑顔でご挨拶。自己紹介する時一瞬悩んだが、カレンだけ言っておいた。場合によっては数日後から私はコーサカでなくなりますので。この人がどこまで聞かされてるか分からないし。
表面上は遠慮も何も無く普通に自己紹介し返す囚人の私をどう見たか、ランス青年は爽やかに笑ったままつらっと喋った。極普通に。今日も晴れましたねーくらいのノリで。
「オレ、黎明師団の者なんっすけどー、さっき師団長に、今日からみっちりカレンさんを警護しろって言われたんで、よろしくっす」
「「そうきたか」」
うっかり伯爵様と被ってしまった。嫌過ぎる。
「はいー。上官命令は絶対ですから断っちゃイヤですよ?ってゆーかあ、断られても実行しますからアシカラズ的な?」
・・・・・・ですよね。
気負わせないへらりとした笑顔の若き騎士は、以降、夜寝てる間以外はずーっと傍に居る事となるのだ。伯爵様とのお勉強タイムは外してくれるアンマリちゃん以上の密着ぶりである。
という事はつまり、私と伯爵様の全てが綺麗に、師団長様へ筒抜け状態って事で。
とうとう私の首にがっつりと、本格的な首輪が嵌ったのでございました。
「なんて言っている場合でも無いのだがね」
「・・・・・・ですよね」
いけない。あんまりな展開に現実逃避した挙句、途中から口に出して言ってたよ。ええもちろんわざとですが何か?
「んー、あんまり歓迎されてませんかね?オレ」
当たり前である。と、私は今度は内心で言ったが、伯爵様はフルスロットルのスマイルで実際に言っちゃった。
「当たり前だ、若狸め。忌々しい。 カレン、気を付けるのだよ。この餓鬼はこの若さで黎明の懐刀と呼ばれている強者なのだから」
うわあ、化かす上に強いんだ。てかこの世界の狸も化かすのかしら。
まあこの流れで普通の青年を寄越す筈も無いけど、それにしたってほんっとにあんまりだ。これ以上私の神経擦り減らしたって、良い事なんて何にも無いのに。あのやろー。
昨夜師団長ストレス野郎に同情しそうになった自分が恨めしい。
目の前で言われ放題の当人は、狸説が物語る通り、どこか楽しげな笑顔のまま動じた素振りも無い。
「心外っすよー。オレ、平民出で学も無いしー。 まあ強いのは否定しませんから、安心してくださいねー」
しっかり守っちゃいます、とか何とか言ってエヘンと胸を張られた。憎めないキャラ全開。
「あざといな」
「あざといですね」
「えええっ?ひっでえ!」
やっばい。何この馴染み度。それが策と分かってても、ペース、乗せられそうだ。乗ってやっても良いかな、と思わせるところが巧みの技なのね。そうなのね。
ある意味一番怖い気もするが、刺々しい空気で常時精神攻撃してくるタイプよりは遥かにマシだと考えよう。特に今の私には、何より有り難いキャラ、人材の筈だ。
伯爵様が最低限の身の保障はしてくれてるが、絶対の信頼とは程遠いものなのだから。
本来は私を監視し、下手な行動を取ったらその場で始末するための首輪だが、派手な首輪は牽制にもなる・・・と信じよう。それ以外は後々考えるので今はごめんなさいよ。
「・・えっと、それではこれから暫く、宜しくお願い致します。ランスさん」
「こちらこそー」
ここに居る人間は3人とも全員、満面の笑顔だ。なのに何だろう、この、背筋がちりちりする感じ。
これだから人間付き合いって嫌なの。めんどくさいの。
たぶん私の性格も原因の一つなのはすっかり自覚済みですが。
ともあれ、海外ドラマの脇役みたいなこのイケメンのおかげで、私はますます、いとおしい独りの時間を失うワケだ。
この様な駄作に貴重なお時間を割いて下さった方、まことにありがとうございます。
以下小ネタ・小話
長期休暇の過ごし方から見るキャラの性格
カ「お菓子と小説と映画BDは事前にネット通販で大人買いしといて、初日に美容院行って、服とか買って、その後は引き籠ってゴロゴロします。初日以外は一歩も外へ出たくありませんが、食材等の為に近所のスーパーへは行きます。それでも最低2日分は纏め買いしますので、長期休暇の半分は完全に籠ります。籠り中は模様替えとかもしたりします。至福。 訪問者はママぐらいのものです」
リ「実はウィルと賭けをしていてね。どちらが先にゲイルを泣かすか、とね。 無論アレはなかなか泣こうとしないので、今ではその賭けの為に休暇を作っている始末だよ。 ちなみに賭けたのは領地の半分だ」
ゲ「休暇など無い」
ア「休暇などありません」
ク「わたしお仕事をしたことありませんから、休暇とはどういったものか、実際には良く分かっていないのです。ごめんなさい。きっと休暇したこと無いと思います」
ウ「娘のクリスと過ごすよ。一緒にお散歩する時が、あの子が一番嬉しそうな顔をするんだ。欲目抜きで凄く可愛いんだよ。 え?賭け?リヒトと?何だったかな?」
ラ「ナンパ!」
王「私が休暇を取る時は、国が終わる時と思え」
はっきりとした苦情が来ないのを良い事に、こんなパターンも考えてしまいました。
私の息抜きの場と化しそうです。申し訳ありません。




