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作者打たれ弱いので、作品への誹謗中傷は一切見なかった事にします。酷い場合は警告無しに対処したりもしますのであしからず。
誤字脱字や引用の間違い指摘などはとてもありがたいので、知らせてやろうという奇特な方は宜しくお願い致します。
また、全ての作品において、暴力や流血などの残酷な描写、性的な表現がある可能性があります。不快に感じる方、苦手な方は読まないでください。
そうつまり、伯爵様が用意した予定は3つとも、私を囮に彼の邪魔になりそうな者達をあぶり出す為のもの。我が生命の危機×3である。暗黒魔導師め!
・・・うん。まあ、でも、悪い話じゃないよね?
「本当はもう2つ3つ用意したかったのだがね。流石にそうは問屋が卸さなかった」
無視してたらそんな呟きが聞こえたので、雰囲気でソレヤダアピールをしてみる。
って、ええっ?!更に倍?!聞き捨てならなくない?
それより「そうは問屋が卸さなかった」って意訳だよね?なんなのこの吹き替えの高性能さは。
「もちろん最低限の安全は約束しておくから、そう背中ばかり向けないで、こっちを向いてくれないかね」
最低限かよ!
「・・申し訳ありません。忙しいのです。この後も、この部屋と師団長様のご自室と執務室と廊下のお掃除がありますし」
そうなのだ。1日のお勤めの最後はお掃除なのだ。
これもまあ、独り暮らしのOLならそんなに違和感は無いスケジュールだ。それに、人の行き来が他の階より少ない幹部用の5階だけとは言え、異世界人犯罪者が日中廊下をウロウロしては、団員さんもご来客も堪らないだろう。そういった理由で、私は日中、伯爵様と小会議室へ放り込まれているのである。
うん、諸々の事は別に良いのよ。ただ、お隣2部屋の掃除が怖ろしいだけなのよ。
片付いてるっていうか、物が無いから掃除自体は楽なんだけどね。執務室の方は触っちゃいけない場所があるしね。
怖いのは7割以上の確率で部屋の主が居て仕事してる事だ。なんで居る時にするんだよ居ない時で良いじゃん、なんて口応えしませんよもちろん。
て、のんびり思い出してる場合じゃない。部屋はそうでも無いけど、廊下掃除は範囲が超広いからほんとに遅くなってしまう。今もう4隔が3分の2以上終わってるから夜10時は過ぎてるよ。もー。
「カレン。貴女にとっても悪くない話の筈だ。頼むからもう機嫌を直しておくれ」
私の様子に弱り切った苦笑をして見せて、伯爵様はアンマリちゃんにお茶のお代わりを要求する。やばい、質素なテーブルセットが優美な年代物に見えて来た。目を瞬かせる。
「カレン?」
結局、勿体ぶる間も殆ど無く、洗い物は完了してしまった。これでもこの1週間で一番量が多かったんだけどなあ。拗ねるフリも限界。アンマリちゃんの半目も怖いし。
「・・・はい。もちろん精一杯努めさせて頂きますよ。 個人的には伯爵様の弟子ルート1本が好ましいですけど」
てゆーかあ、他の2パターン、後腐れ有りまくり過ぎませんかね、先生。
魔導師の弟子もマシなだけだが、候爵ルートも黎明ルートも私を前面に出しまくる前提。個を特定されまくりですよね。政敵にがっつりロックされる感じですよね。その2つが合わさったらもう、どの方向にも真っ当な退路無いですよね。
そんなんじゃ、例えそれで囚人状態からランクアップできても知れてるじゃん。
いっそこのまま閉じ込められてた方がマシじゃね的展開が後々繰り広がる可能性大。いや、確かに処刑は遠ざかるよ?拷問もね?でもその為に多方面から命を狙われる立場になるって、究極の選択過ぎるでしょ。これって詐欺相当。
そもそも何よ政敵って。私の人生にそんな言葉出てくる予定無かったってば。もちろん重罪人も容疑者も囚人も。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
いやいやいや!詰んでない詰んでない!詰んでなんかないってば!うわーん!
しかしこれだけ刺激的な言葉が並んでも、どのパターンでも、綺麗に脇役なのが私の凄いところだ。
暗躍する美貌の魔導師、の弟子。
悩める義足の王妃パパ、の使者。
世界規模で有名な英雄、の虫除け。
年季が違う。このままでは何らかの賞を受賞してしまいそうだ。頑張ってぼんやりしなければ。
「・・まあ、そうだろうね」
「ええ、そうですよね」
少し素っ気無い感じで鸚鵡返しにしてみたが、呆れた様な困った様な複雑な顔をさせてしまって、ちょっとだけ罪悪感。
「ロレンシア卿の依頼は貴女が引き出して獲得した仕事だろう?さっきの今で投げ出すのではないよ」
その仕事にこそ、多大な報酬がある。ええ。分かってますよ。
私が身を立てる為の、考え得る限り最良の最短距離を、伯爵様は用意して下さったのだ。自身の親密な友人であり、大きな権力を持つロレンシア侯爵様との取引の場を。
伯爵様の口添えだけで獲得したのでは意味が無い。伯爵様自身にヴァレンティヌス領の戸籍を強請るのと同じだ。それは甘えたオネダリ。得られるのはただの施しになってしまう。
私が自分で、私個人で、侯爵様と取引しなくては、何もこの手に残らない。
伯爵様は、どんな策略を裏に持っているとしても、私との対等性を、私がそこに見出している意味をちゃんと汲み取って下さっている。私が地球で言うところの人権的なものを得られるよう、ある程度はちゃんと真摯に考えて下さっている。
私を追い詰めて一方的に利用する方が、ずっと簡単なのに。
「・・・申し訳ありません。分かってます。皆まで仰らないでください」
分かってる。私は今、恵まれている。これ以上無く好条件のプランを用意されている。
最悪、現地まで伯爵様のローブに隠れて行って、預かった物を先方へ渡して侯爵様の名前を言えば良いだけだ。それだけで一般人としての戸籍と、彼らの権力が及ぶ範囲内での柔軟な保証を得られる。
分かってるんだ。分かってるんだけど、そこに身の危険がある以上、心から喜んで受け入れられる筈が無い。命を賭けなくては手に入らない安全なんて、聞いた事も無い。
人生を切り売りして、命を差し出して、漸く人間として認めて貰える。
ダメだ。こっち方向へ深く考えちゃ・・・。
剣呑さが隠し切れなかった私に、少し考える風を装った伯爵様は困った様に笑った。この儚げな表情は侯爵様のモノマネに違いない。バレバレですよ。
「私を怨むかい、カレン」
声までしおらしくしやがった。へたっぴ。
脇役だってね、捨て駒にされるの、しんどいんだからね。主役じゃ無いからって、何でもさっさと割り切って役に徹する事が出来るなんて思わないで欲しい。
完全に手が空いてしまったので、給仕よろしくお茶中の伯爵様から少し離れて姿勢正しく立つ。
「まさか。何度も申し上げるようですが、私の未来は貴方のものなのですから、遠慮なさらずお好きなようにお使いください。この度はその見返りを十分頂いたと解釈しておりますので」
あ、ちょっと言い過ぎた。この言い方は性格悪過ぎだ。でも、今無理めです。
とっとと終わらせて、早く独りになりたい・・・。
ささくれ立つ私の神経に、気付かない人でも無いだろう。伯爵様はふと妙なモノマネを止め、真顔で「その通りだ」と言った。
「・・・・・・」
うん、その通りだ。自分で言ったんだけど、何度も言ったんだけど、言わされてる感もあるけど、これ、ほんと冷たい言葉だ。
暫く、どこかひんやりとした空気が漂って、私と伯爵様の真っ黒な姿を隔てた。彼が掃うまで。
「・・・さて、ではそろそろ行こうかね。 慰めてくれるつもりは無さそうだし」
「ああ、夜伽をご所望だったんですか。すみません、気付かなくて。お掃除が終わるまでお待ち頂けるなら」
「分かった分かった、私が悪かったから、そう苛めないでくれ。泣いてしまう」
おや、今のはそんなつもりじゃなかったんだけどな。本気で身を捧げる覚悟を、こちとらもう1週間前にはしているのだ。ヤれと言われたらヤるさ。
と思ってんだけど、伯爵様はソッチ方面に関してはかなり紳士。嫌がらせや何か含みがあって肩を抱いたりはするが、性的な意味で体のどこかに触れられた事は、結局今まで1度も無かった。
まあ、しないで済むならそれに越した事は無い。30過ぎて若い頃に無かった事態が色々出始めている情けない体を、この超絶美形で長身痩躯でローブ姿でも9等身な男の前に晒すなんて、それだけで羞恥プレイの極みだよ。本来なら並んで立つのも避けたいくらいなんだよ。
・・・うん。感謝してますよ。本当。
このヒトが居なかったら、このヒトじゃなかったら、今頃どうなってたかなんて、考えたくも無い。
「・・・・・・泣かれたら、困ります」
言い過ぎた。甘え過ぎた。私が悪い。そう観念して、ちょっと殊勝な態度を取ってみた。やっぱりと言うか何と言うか、笑われる。
「分かってるよ」
そう言って去った赤い瞳の魔法使いは、とても優しい眼差しをしていた。
この様な稚拙な文章をお読み下さった皆様に、心から感謝いたします。
と言う訳で、今後後書スペースには更なる無駄文章が発生致します。
読後感をリセットなさりたい方のお役に立てれば幸いですが、もちろん、お読み下さらなくても全く問題ありませんので、興味の無い皆様はスルーなさって下さい。
内容は、たぶん本編では語られないであろう無駄小話や、本編に織り込めなかった設定などになる予定です。
以下小ネタ・小話
トリップ初日、黎明棟1階医務室にてアンマリちゃんがカレンの傷を手当した時、使用した魔導桶の水を窓からポイ捨てする件。
実は、バルバトリアでも本来窓からポイ捨ては非常識です。おまけに王宮内です。ぶっちゃけ有り得ません。
あの時の彼女は事態に慌てており、ちまちま排水処理してらんなかったのです。
物事を即座に順序立て、些事を些事としてきっぱり省けるヒトなのです。
アンマリちゃんはアンマリ悩まないタイプなんだゼ~?ワイルドだろ~?
・・・のような感じになります。
色々とごめんなさい。苦情が出れば即止めます。よろしくお願いします。




