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古代語の文法について  作者: なし塩


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2/2

▶️またお前か。

「……っ、つーーー……。

つーか、寒っ。マジで寒っ、どこだよここ……!!」

夜風は容赦なく体を包み込む。ガタガタ震えながら目が覚めた。

見上げた空は、真っ暗。

……は?

嘘だろ?昼間だったじゃん。今はもう完全に夜。時計なんて持ってないけど、体の芯まで冷え切ってる感じからして、多分これ、ざっと10時間くらいはあのまま倒れてたっぽいな。

のろのろと上体を起こして、泥だらけの手で地面を触る。アスファルト。綺麗に舗装された道だ。

で、辺りを見回すと――ちょっと離れた場所に、図書館と書かれた大きな施設。その反対にはなんか不気味にデカい学校の校舎。

「……もしかしてここ通学路か?っていうか、人っ子一人いねぇじゃん」

静まり返った暗闇。

じわじわと、いや、一気に怒りが込み上げてきた。

「……あのアマ。マジで、俺をここに放置して消えやがったな? ガチでクソアマすぎるだろ」

未練?

1ミリもあるわけない。あるのは純粋な殺意だけ。こいつの失恋のせいで死ぬほど痛い目にあわされて、挙句の果てに夜の道端に完全置き去り。しかも、ここの生徒は俺をそのまま放置ときた。どんだけ嫌われてんだよこいつ。

…はぁ、…まじ、元の世界帰りてぇよ、なんでこんな所にいるんだよ、どうやったら帰れんだよ……寒っ。

一先ず生きなきゃな。このまま凍死しちまったら本末転倒だ。

とりあえず、こいつの家に帰ろう、と立ち上がった。

立ち上がった、のはいいんだけど。

「……いや、家どこだよ」

こいつの体に入ったはいいものの、記憶が全然リンクしてない。

頭の中にモヤがかかったみたいで、右も左も分からない。なにこれ。詰んだ?

途方に暮れて髪をかきむしっていると、学校の正門から誰か歩いてくるのが見えた。

ちょっとふくよかで、優しそうなおばちゃん。残業終わりって感じの雰囲気。もしかして先生か……!

背に腹は代えられない。俺はわざとらしく頭を押さえて、ふらふらと駆け寄った。

「あの……すみません。ちょっと頭を強く打っちゃったみたいで、自分の家の場所が分かんなくなっちゃって……」

「あらあら、大丈夫!? 高山くんじゃない。そんなに泥だらけになって……。ほら、あっちが学生寮よ。一緒に行ってあげるからついておいで」

おばちゃん先生、めちゃくちゃ心配して親身に案内してくれた。マジで神。

なるほどね、こいつは──いや、高山ってやつは家じゃなくて学校の「寮」に住んでるわけか。先生が優しくてよかったー。会話から情報を必死に拾い集める。

先生に連れられて着いたのは、それなりにデカい寮だった。

お礼を言って先生と別れた後、今度は心臓をバクバクさせながら受付へ。

「あの、部屋番号をど忘れしちゃって……えっと、高山、です」

受付の男に一瞬「は?」みたいな顔をされたけど、名簿をめくって「高山は302号室だよ」と教えてくれた。

「あ、ありがとうございます……!」

心の中でガッツポーズ。

階段を二段飛ばしで駆け上がり、302号室の前に立つ。

やべ、鍵どこだろ…こんなか入ってないかな。バッグを漁ると、中から小さな鍵が出てきた。あぶねー、詰み回避した。それを鍵穴に突っ込んで、回す。カチャリ。やっと、やっと休める。

部屋に入ると、そこは一人暮らし用の、なんてことないシンプルな学生寮の部屋だった。

半日以上続いたパニックと、あの激痛。

メンタルも体力も、とっくに限界を超えてる。

「ここがどことか……もう知らん。考えるのは明日」

服が泥だらけなのも、もうどうでもいい。俺は制服を脱ぎ捨てる気力すらなく、そのままベッドにダイブして、気絶するように深い眠りに落ちた。        


ちゅんちゅん、なんかの鳥の鳴き声。

……うわ、最悪。体バッキバキだし。

泥だらけの制服のまま寝たのだから当然か。のそのそとベッドから這い出て、部屋を見回す。一人暮らし感満載の狭い部屋。

ふと机を見たら、ポツンと朝ごはんが置かれてた。パンと、なんか変なスープ。

「この寮は朝ごはんを届けてくれるのか。」

腹がかなり減っていたので、まだ少し暖かいスープを胃に流し込む。急いで食べたせいで味はよく分からん。

文句言っても始まんねぇよな。ひとまず学校へ向かうことにした。

◇

で、学校に着いたはいいんだけどさ。

「は? なんだよこれ、意味分かんねぇ」

掲示板の前で、俺は頭を抱えてた。

この学校、時間割が最初から決まってる日本の高校とは違う。大学みたいに、自分で受けたい授業を登録してとるシステムだった。

周りの生徒たちは、手帳みたいなものを見ながら、時間割表に杖を向けている。

近くの奴らの会話を盗み聞きして、さらに絶望した。

「おい、お前もう『便利魔法』で履修届送った?」

「あ、忘れてた。今やるわ」

便利魔法。

……いや、何それ。

高山の記憶を必死に手繰り寄せる。だが何も思い出すことが出来なかった。その間にも、周りはみんなサクサク手続きを終えていくのに、俺だけ完全に置いてけぼり。

「クソ、まずは魔法が何なのか調べないと何も始まんねぇな」

便利魔法ってやつの習得方法も含めて、調べるならあそこしかない。

俺は履修登録を諦めて、重い足取りで図書館へ向かった。

◇

図書館は、引くほどデカかった。

ハリー〇ッターの世界かよ、ってくらい本棚が天井まで伸びてる。

「えーっと、魔法の基礎、基礎……って、本が多すぎてどこにあるかサッパリ分からん」

お目当ての「魔力の基礎」とか「初心者向け魔法」みたいな本を探して、広い館内をウロウロ彷徨う。完全に不審者だ。

「……あの、何か探してるの?」

不意に、横から声をかけられた。

びっくりして振り向くと、そこには女の子が立ってた。大人しそうな雰囲気だけど、こっちをじっと見つめる目は妙に好奇心に満ちてる。

「あ、いや……その、魔力についてとか、この世界の常識が書いてある本を探してて……」

「それなら、あっちの奥にある『基礎魔術・歴史』の棚にあるよ。上から3段目くらい」

「あ、そうなんだ。ありがとう、助かったわ」

「ううん、気にしないで」

彼女はそれだけ言うと、また自分の読んでいた本に目を戻した。

教えてもらった棚へ向かう。特別なイベントが起きるわけでもない、本当にただの、よくある日常のワンシーンみたいな出会いだった。

◇

「よし、これとこれだな」

教えてもらった棚から、それっぽい本を数冊引っ張り出す。

一回部屋に持ち帰ってじっくり読もうと思って、受付のカウンターへ本を持って行った。

受付のお姉さんに本を差し出すと、お姉さんはにこやかに言った。

「はーい、じゃあカードに便利魔法で貸出データを記録してくださいね」

「…………」

俺はフリーズした。

便利魔法。

またお前か。

「あの……使えないと、借りられない感じですか?」

「え? ええ、まあ、データの管理魔法と連動してるので……」

お姉さんが不思議そうな顔をする。

だめだ。本を借りるのすら、あの魔法が必要らしい。

「あ、じゃあ、ここで読んでいきます……」

すごすごと本を持って席に座る。

いくらなんでも便利魔法の壁が厚すぎる。

俺は大きくため息をつきながら、本を開いた。

「はぁ……。これ、しばらく毎日ここに通う羽目になりそうだな……」

窓の外の青空を眺めながら、俺の異世界生活の、地味で気の遠くなるような戦いが始まった。

自分が設定担当、相方が地の文担当という形で共同作成をしています!相方は現在カクヨムにて活動中です!!


『古代語の文法について』の更新について

更新頻度についてのお知らせです。

本作は、2週間に1話程度の更新を目標に投稿していく予定です。

不定期更新となりますが、楽しみにしてくださっている方は、しばらくお待ちいただけると幸いです。

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