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私の奴隷はとても可愛い。〜XXXXX〜  作者: せろり
忍び寄る影 〜心に灯る嫉妬〜

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2-7


「Sランクの群れって珍しいね。てか私初めて聞いた。イクスは?」

「……俺も」


 Sランクは一体でも防塞都市が滅ぶか滅ばないかと言われる程の強さとされている。一年前に王都で暴れていたドラゴンがSランクだったらしいけど、群れとなると厄介そうだな。


「イクス、どうする? ……もぐもぐ」

「もぐもぐ……俺はS級なら、魔石欲しいから、行く」

「ああ……なるほどね……もぐもぐ」

「…………二人とも、食べ終わってから会話しろ」


 ルカに行儀悪いと注意されて私とイクスは黙った。私は単純な食い意地だが、イクスが良く食べるのは【暴食】が理由だ。【暴食】とは彼特有のスキルのようなもので、内容は食べた物を魔力に変換するというもの。それに加えて悪食。……魔力のこもった物なら何でも食べて自分の糧に出来るのだ。その供給源として食べ物は勿論、普通の人は食べれないもの、例えば魔石や他人の魔力も含まれる。本人曰く、魔力の無い普通の食事から魔力に変換するよりも、魔力含有量の多いものの方が楽で美味しいとのこと。その言葉を聞いて好奇心から昔ペロッと魔石を舐めた事があるが……私には分からない世界だった。というか魔力が含まれていること以外ただの石でしかないのに、一体どんな経緯で魔石を食べようという発想になったのか。そちらの経緯の方が気になる。


「ごくん。……私も行こうかな」

「ミサキ」


 実はこの世界に来てからこの国、アルカナ王国を出た事が無い。村に落ちて、そこからいくつかの町を経由して王都に辿り着いたけど、なんだかんだで世界のことあまり知らないんだよね。

 この先未知の魔物と戦わなければならない時もあるだろうし、戦闘力の高いイクスがいる内に経験を積んでおきたいという思いもある。


「いくらミサキが強いからと言っても、一体と群れでは難易度が全然違う。Sランクなら知能も高い。きっと数の利を活かした戦い方をしてくるぞ」

「ルカ」

「金には困っていないのだろう? ならばイクス殿に任せてミサキは先に進むべきだ」


 乗り気な私にルカが青い顔をして必死に止めようと説得する。彼の言い分はもっともだ。この前のドラゴンは一体だけだったし、しかもあの時は私じゃなくて街に注意が向いていたから倒せたようなもの。条件が良かったことは私も理解している。けれどイクスがいるといないでは大違いであることも、また事実なのだ。彼はこの世界で一番強い魔法剣士。近距離戦において、彼に勝る人を知らない程に。


「大丈夫だよ、ルカ。それにイクスが一緒にいる内に今後似たような状況になった時、どう対処すべきか慣れておきたいの」

「……それは、そうだが」


 反対するルカだが、私が言うことも一理あると思ったのだろう。語尾が小さくなる。


「心配してるなら平気だよ」

「?」


 王都にいた時みたいに変わらず私を心配してくれる彼の心が嬉しい。でも、本当に大丈夫なのだ。私はその理由を口にした。


「イクスは”世界最強の剣士”なんだから」


 それが彼の異名。通り名。その言葉の通り、きっと近距離戦で彼に敵う人はこの世界でいないだろう。そう断言出来る程、イクスは強いのだ。


「……それは、ミサキもだろ。……異名は確か」

「やめーい!」


 私がルカを説得している横で口を挟んできたイクスの口を塞いだ。余計なこと言うな……! 王都でも竜喰いとか変な名前で呼ばれてたのに、()()()()あだ名までルカに知られたくない! 三人のS級冒険者にはそれぞれ通り名があるのだ。……私だけ何故か大変不名誉なやつがな。

 それに彼とは何度も組んだことがある。お互いの長所や短所、癖を把握しているため、連携練度が高い。また近接戦のイクスと中遠距離型の私の魔法は相性が良い。私たち二人が手を取れば、無敵なのではないかと思える程だ。


「と、とにかく! 世界最強と私が組めば、敵なしってことよ!」

「……ん。まあ、そうだな」


 食べ終えたお茶菓子に小さく両手を合わせているイクスが同意する。彼も私同様、お互いの力を信頼しているからこその言葉だ。


「それにSランクの群れなら他に対応出来る人少なそうだし、被害広がる前に倒しに行った方がいいでしょ」

「そう、か。……ミサキがそこまで言うなら、反対はしない」

「心配してくれてありがとう。嬉しいよ」


 隣に座るルカの両手を握ってお礼を言う。この世界では私に戦えって言う人ばかりだから、こうやって案じてくれる人がいるのは本当に嬉しい。


「ピ、ピピ……」


 そんな私の心とルカの心の温度差にリッカだけが察知して、せわしなく私たちを交互に見ていた。







「…………」

「…………」

「お、おおう。なんかどんよりとした村だね」


 私の風の力でグラッツィアのギルドマスターに教えてもらった場所に降り立てば、天気のせいか暗い雰囲気の村に辿り着いた。外に人気は無いが、家の中から伺うような視線をいくつか感じる。


「Sランクの魔物の群れが近くにあるのだから当然かもしれないな」

「滅んでないだけマシ……」

「こら! イクス!」


 縁起でもないことを言う彼の頭をぱしーんと叩く。思いの外良い音がした。


「……もしかして貴方たち、魔物を倒しに来てくれた人?」

「?」


 イクスを嗜めていれば第三者の声。横を向けば塀の影から女性が顔を覗かせていた。


「貴方は?」

「あっごめんなさい、私はパーラ。ここに住んでるの」


 おずおずと出て挨拶をしたのは三つ編みの少女。色々話を聞きたかったが皆外に出てこないので丁度良かった。私は手招きをし、申し訳ないが目つきが悪いせいで彼女が怯えるので、イクスには少し離れてもらった。


「こんにちは、私はミサキ。冒険者。依頼を受けてこの村に来たの」

「え! あの依頼受けてくれたんですか?!」

「うん」

「え、え、え。助けて欲しいのは山々ですが、見たところ三人ですよね?! 止めた方が良いですよ!死にますよ!!」

「ピピ!」


 パーラの言葉にリッカが憤慨したのでよしよしと頭を撫でる。うんうん。三人じゃなくて三人と一匹だね。まあ今君は小鳥だから戦力に見えないのも仕方がないさ。


「心配してくれてありがとう。でも大丈夫、私と彼はとっても強いから」

「え、えーと……」

「ほら、これ」

「!!」


 一応善意から忠告してくれているのは分かるので、安心させる為にギルドカードを見せた。そこにはひし形を五つ並べた星……つまりS級冒険者を示すマークが彫られている。世界に三人しか持っていない証にパーラは絶句した。


「え、え、え、え、これ……まさか()()()?」

「そうだよー」


 ()()()。それはS級冒険者を指す俗名だ。現在その地位にいる者は三人しかいない事からまとめて『三天星(さんてんせい)』とも呼ばれている。まあ、S級冒険者って長いし言いにくいからね。毎回そう呼ばれる度に美味しいレストランのやつを思い浮かべてしまう私は何だかいたたまれない気持ちになるが。


「……本物?」

「うん。私だけじゃなくて彼もだけど」


 少し離れた位置に立っているイクスを指さすと彼は視線をこちらに向けた。そんな彼と私の顔を何度も見比べるが、なかなか信じられないらしい。


「星持ちが……こんな辺鄙な村に、二人も……」





毎回S級冒険者って書くのが長くて…理由付けしました。

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