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第十五話

「謝る必要はない。仕方なくだとしても、俺たちはセイに救われている。ありがとう」


「そんな風に言われると、ますます重い」


 聖が唇を尖らせて言うと、オーウェンはくすりと声を出して笑った。


「聖をこの国に留め置くために、わざとそう言ってるのかもしれないぞ」


「王族ならそれが仕事でしょう。私はただ、あなたからはいやな感じがしなかったから信じてるだけだよ」


 聖女をこの国に留め置きたいのは、王族ならば当然だ。オーウェンは民の生活を守る義務がある。だからこそ度々申し訳なさそうに接してくるのだろう。


「いやな感じ?」


「私、人を見る目だけはあるんだ。なんとなく、人の内側にある悪意みたいなものが見えるって言うか。それがあなたにはないの。だから信じられる」


「その悪意は、誰から感じた?」


 オーウェンは真剣な表情で聞いてくる。


「名前はわからないよ。ただ、王城ですれ違う貴族の人たちから感じる。最初にこっちの世界に飛ばされたとき、ずらっと並んでた騎士たちからも。みんな「聖女様」って口では言いながらも、心の中で敬う相手じゃないって思ってるんだなってわかる」


「聖女部隊の隊員からは?」


 確かめるようにオーウェンに言われて、聖は首を捻った。


 聖女部隊の副団長であるエンベルト、ディーナ、カミラ、聖の近くにいるのはこの三人だが、見下されたと感じたことは一度もなかった。聖女部隊のほかの隊員からもだ。


 聖がそれを言うと、オーウェンは「本当にわかるんだな」と驚愕の表情で口に出した。


「あと、街の人たちが純粋に喜んでくれてるって言うのもわかるよ。だから、よけいに申し訳ないって思っちゃう」


「聖女部隊の隊員は、全員平民から構成されている。エンベルトを始め、ディーナたちは、聖女に救われた街の出身だ」


「へぇ、ほかの騎士たちは違うの?」


 聖が尋ねると、オーウェンは決まりが悪そうな表情で重い口を開いた。


「あぁ……第一騎士団である聖女部隊以外の騎士団員は貴族家の次男や三男である場合が多い。平民の場合、戦える男は街の警備隊に所属するのが普通で、その中から優秀な人材が聖女部隊に推薦される。当然エリートだ。給金もまったく違うからな」


 どうして聖女部隊だけ平民なのだろうと疑問に思ったが、オーウェンの表情を見る限り、あまり話したくはなさそうだ。ほかの騎士団にそこまで興味があるわけでもない聖は話を変えることにした。


「ねぇ、オーウェンは王子様なのに、どうして聖女部隊の騎士をしてるの? ほかの王子殿下はこの中で暮らしてるんでしょう?」


「そういう決まりがあるんだ。ほかの貴族への牽制という意味合いが大きい」


「それって、聖女を独占しようとする貴族がいるってこと?」


「あぁ、聖女を独占し富を得ようと考える愚か者が過去にいた。だから、第一騎士団の団長はずっと王族から選ばれているんだ。公平さを保つために」


「いやじゃないの? 王子様なのにさ。怪我をするかもしれないし、死ぬかもしれないんだよ?」


 戦闘狂でもない限り、好き好んで戦いに出る者はいないと思う。それは平和な国で自分が育ったからこその考えだろうか。


「光栄だと思いこそすれ、この役目をいやだと思ったことは一度もない。聖女部隊の皆も同じ気持ちだろう」


 オーウェンが扉の外に視線を向ける。扉の外にはディーナが立っているはずだ。


「君を守れることを皆、誇りに思っている」


「瘴気を祓うことしかできないのに?」


 そして、たった一度祓っただけで、魔力は空。その程度の力しか聖にはない。


「瘴気により強くなった魔獣を倒すには、戦闘や魔法能力に特化した者が何人も必要だ。だが、力のある者は名声やより多くの富を求めて王都へやって来る。だから村や町にいるのは戦闘に不慣れな者たちばかりなんだ。できるのは森に近づかず、家に隠れていることくらいだろう。君が瘴気を祓ってくれたことで、あの街の住民の命は救われたんだ」


「亡くなった人も、たくさんいるじゃない」


「でも、助かった者も大勢いる」


 すべての人を救おうとするのは、聖の手には余る。自分にできることをしてくれればいいとオーウェンは言っているのだろう。


「魔力が戻るまでは、動くのも辛いだろう。夕食まで休め」


 もう一度ぽんと頭を撫でられて、聖は目を瞑った。


 そのあとは夢も見ずにぐっすりと寝入ってしまった。初めてのことでよほど疲れていたらしい。夕食の時間になっても起きることは叶わず、聖が目を覚ましたのは翌朝だった。



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