表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兎にかく、あるべき生は要らぬ  作者: 健安 堵森
第一章 自分のことは自分だけが知っている
19/66

十八話 いざ、迷宮へ

何だか訳が分からないけどアクセス数がいつもの四倍でした!

あざっす!あざっす!

ブクマしてくれた人にもあざっす!

これからも頑張るッス!




「おはよー!起きてー!」

『ぬぅ........後三時間』

「何言ってんの!それだけ寝てたらお昼過ぎちゃうよ!ほら早く!」


 そういって俺の掛け布団を掴み飛ばすルエ。

 俺がルエと一緒に寝た時に起こった、恐怖!真夜中の幼女()圧死事件以来、俺はノーサさんに特注のベット、まあ大きめのバスケットなんだがそれを用意してもらい別々で寝ることにしている。

 そのおかげで第二の圧死事件は起こっていないが、お昼前になるとこうしてルエが遊びに誘ってくるのだ。


『午後も勉強しとけ........』

「やだー!ほらぁ!行くよー!」


 ちなみにネオクロさんから下った丸一日勉強のお仕置きから三日が経っている。昨日まではお仕置きが効いていたのか、まだ静かだったが今日はやけに元気だ。


「もう!いいよ!」


 お、諦めたか。


 と思ったのも束の間、体全体に妙な浮遊感がまとわりついてきた。


『あ、おまっ!こら!籠ごと持ってくな!』

「ふーんだ!」

『わかった!出るから!遊びますよ!遊べばいいんだろ!』


 案外気に入っているのだこのベットは。

 外にでも出されて汚されちゃあたまったもんじゃない。


 俺はしぶしぶベットから這い出ると、ルエの頭の上へと陣取る。


『よし、進むがいい』

「もー、そんなところに登ってまたぶつかっても知らないよ?」

『ふっ、衣紋掛けの出っ張りにぶち当たる馬鹿が何処にいるのやら』


 いるなら会ってみたいものだな。


「じゃあいくよ!」


 そういってルエは走り出す。扉を勢いよく開け、ルエの元気な挨拶とノーサさんの注意の声が飛び交ってくるのがいつもの風景だった。


『ん、今日は街の方に行くのか』

「そうだよ!ディーたちと遊ぶんだ!後で紹介するね!」


 街の子供たちか。案外貴族だから~みたいな理由でぼっちかと思ったけどちゃんと友達がいるんだな。うん、良いことだ。


 ちゃんと友達がルエにしみじみしている俺とは別に、ルエはずんずん街の中を突っ走って行く。

 そして、家で出来た迷路を抜けると小さな原っぱの上に男の子三人、女の子二人の計五人の子供たちが立っていた。


「ごめーん!遅くなったぁぁ!」

「遅いぞルエ!お前はいっつも........」

「ちょっとクネス!いっつも言ってるでしょ、女の子に乱暴な言葉は使わないって!」


 到着するや否や騒ぎ始める子供たち。

 元気があるのは良いことだがあり過ぎるのも困りものだ。


「……ルエちゃん........頭に兎が乗っかってるよ........」


 大人しそうな女の子が俺に気付く。

 だが言葉からして、ルエが頭の上に兎が乗っていても気が付かない馬鹿というふうに思えるのは俺だけだろうか。


「ん?あ、そうそう!ありがとねカイネちゃん!実は皆に紹介したい友達がいるんだ!」


 そういって俺を頭の上から下ろし、皆に見せ付けるように構える。


「兎のネキロム!五日前から家に来て一緒に暮らしてるんだ。」

「いやいや兎が友達って.........喋れないだろ」

「珍しい色ですね」

「わ〜、ふわふわしてて可愛い~♡」

「へぇ、大人しいね」

「........気付いてたんだ……」


 五人の反応は様々だった。一人だけ俺への反応じゃない気もするが…...。


「ふっ、クネス。今、ネキロムのことを喋れないって言ったね?」


 やっぱり食いつきおったわ、このルエって子は。

 ノーサさんからはあまり喋るなって言われてるけどまあ、いいかな。どうせ子供の言うことなんて信じないだろうし。

 しかし一応、念には念を入れておくか。


『おいルエ。別に俺は喋ってもいいがコイツらに俺が話せるってことは、絶対に他人に漏らさない様に約束だけでもしとけ』

「うん、分かった。あのねみんな、ネキロムが喋れるってことは私たちだけの秘密だからね」

「........もしかして今会話してたの?」


 優しげな眼鏡をかけた男の子が少し驚きながら自身の考えを話してくる。中々に察しがいいようだ。


「はっ!何処がだよ。全然声なんて聞こえなかったじゃねーか、どうせルエの演技だろ」

「こらクネス!」


 やんちゃという言葉がぴったりと当てはまりそうなクネスという男の子はすぐに否定する。

 このままではどうにもケリがつかなさそうなので俺は“繋がる心”を全員と結び言葉を発した。


『おいおいクネス。そうやってすぐに否定するのは良くないぞ』

「っ!?誰だ!」


 俺が喋った時クネス以外はこちらを見つめて驚いた表情をしているが、クネスはまだ周囲を見渡している。


『おーい、目の前にいるだろ?白くて愛くるしいのが』

「白........え、まさか!」


 クネスも驚いた表情でこちらを見てくれた。これでようやく自己紹介が出来る。


『あらためまして、俺がネキロムだ。よろしくな』


 そういって軽く手を挙げておく。

 兎が喋る、その確信が得られた子供たちの反応は目をつぶっていてもわかる程単純だった。


「す、すげぇー!」

「まさか人間以外が喋るだなんて........」

「信じられない、でも言葉が聞こえる…...」

「すごいすごーい!ねえ、ディーって言ってみて!デ・ィ・ー・!」

「........ルエちゃんが本当のこと言ってた……」


 子供たちのキラキラとした眼差しが眩しいぜ。そんなに驚かれちゃあ喋るくらいじゃあ物足りないよなあ?


『チッチッチッ、おい子供たち、誰が喋るだけだなんて言った?俺は魔法だって使えちゃうんだぜ!《土人形(バルトラシバ)》!』



 地面に一つの魔法陣が浮かび上がり、土で人の形が創られていく。

 その姿は色さえ付いていれば見間違えるほどの、寸分狂わずのルエの姿だった。


「おお、おお!ルエが二人だ!」

「ま、魔法まで使うなんて、本にも載ってないのに」

「すごい、髪の毛まで再現されている........」

「うわぁ、本物みたい!」

「........ルエが二人、これはやっかい........」


 俺の威厳の為に表には出さないが、これほど反応を返してくれるとは高笑いをしたくなってしまうではないか。


「どう?ネキロムもみんなと一緒に遊んでもいいよね?」


 みんなの反応を見て聞くルエ。しかしそんなことを聞くまでもなく、皆から返ってきたのは色良い返事だった。


「もちろんだぜ!」

「僕もネキロムと友達になりたいです。こんな機会、絶対に今日だけですから」

「俺もエスと一緒だ」

「私も賛成ー!」

「........同じく........」


 皆の答えに笑顔になるルエ。

 良かったねと頭を撫で回してくるのは毛並みが乱れるのでやめて欲しい。

 その後、子供たちは一人一人自己紹介をしてくれた。

 やんちゃで短髪の男の子がクネス、金髪の眼鏡をかけたのがエス、クネスとは対称的な冷静そうな子がラウナ、クネスに強く注意を促していた女の子がディー、最後に大人しそうな子がカイネ。

 この五人とはルエがこの街に来ている時はいつも一緒に遊んでいるらしい。近場の森へ探検に行ったり、街でのお宝探しなど冒険者の真似事をしているそうだ。


「なぁ、ラウナ、エス、ちょっと........」


 俺がディーたちから皆のことを聞いていると男子たちは何やらこそこそと話し始めている。


「えぇっ、まだそれは........」

「俺は賛成だぞ、待ち侘びてたんだからな........」


 何やら話が決まったのか男子たちがこちらに近付いきた。


「みんな、ちゅうもーく!今日やることが決まったぜ」

「お、なになに!」


 ルエは興味あります!と言わんばかりにキラキラとした眼差しを向けている。


「ふっふっふ、今日やることは俺ら“竜と剣と本と花と人形と魔法”にとっての長年の夢........迷宮探索だ!」


 そう右手を掲げて叫ぶクネスと拍手を贈るルエ。ちなみに“竜と剣と本と花と人形と魔法”とは子供たちのチーム名みたいらしく皆の好きなものを詰め込んだらしい。


「いや、この近くに行ける場所はないでしょ」


 が、すぐさまディーの否定が入る。

 それもそのはず、迷宮とは簡単に言ってしまえば様々な魔物たちの巣みたいなものなので、危険性を考えればその近くに人が住む街などがあってはならない。

 しかしクネスはチッチッチッと指を左右に振る。


「俺がそんなこともわからないと思ってたのか、ディー?」

「うん」


 即答され、クネスは少し苦い顔をする。


「........まあいい。そんなことは俺だって分かってる。だが俺とラウナとエスで発見したんだ!一週間前、森の中の崖の下で迷宮になっている洞窟を!」


 クネスは鼻息を荒くして答える。隣のラウナとエスも頷いてはいるので話としては本当なのだろう。


「でもそれが本当なら大人たちに知らせないと!」

「バカ!そんなことしたら俺たちが入れなくなるだろ!」


 心配性のディーとどうしても行きたいクネスの口論は止まることを知らない。


「大丈夫だよディー。俺が一層だけ偵察をしてきたけど[駆ケ巡ル角兎(アルミラージ)]や[醜悪二生キル小鬼(ゴブリン)]しか発生している様子しかなかった。俺たちでも充分に倒せる範囲だ」

「もう!倒せる倒せないとかじゃなくて危ないって言ってんの!」


 ラウナもディーに納得してもらおうと発言したが、火に油を注いだだけで自体は治まりきらない。


「お、落ち着いてよ二人とも。どっちも諦められないのなら多数決で決めようよ」

「........そうね、それがいいわ」

「はんっ、望むところだぜ」


 勢いよく燃えていた火に水が掛かる。エスの助言によって、クネスとディーは少しだけ冷静さを取り戻したらしい。


「じゃあ賛成の人は右手、反対の人は左手を挙げましょう。せーのっ!」


 そうディーの掛け声によって挙げられた手はクネス、ラウナ、ルエ、カイネの右手四本とディー、エス、俺の左手三本だった。


「えっ、嘘!カイネも賛成なの!?」

「........ごめんね、ディーちゃん........」


 そこは俺も正直意外だった。ルエは絶対に賛成するだろうとは思っていたので反対と賛成で票が一緒になると思っていた。

 正直な話、俺も迷宮には行ってみたいが危険が付き纏う可能性が無いとは言い切れない。

 そこで俺が反対に手を挙げれば、迷宮に行かなくなると予想していたのに。


「決まりだな」


 笑うクネスは本当に嬉しそうに笑っている。その笑顔からは冒険への憧れがじんじんと伝わってくる程だ。

 そんな笑顔に負けたのか、多数決の結果で諦めたのかは分からないがついにディーの反対の意志もぽっきりと折れてしまった。


「はぁ........、もう、行くのはいいけどホントに危なくなったら帰るんだからね!で、帰ったらちゃんと大人たちに迷宮のことを言うんだからね!」

「わかったわかった」

「ホントに分かってるの!?クネスはいっつも昔から——」


 ディーの注意事項と昔話は止まらない。さすがのクネスもこれには引き攣った顔をしている。


『なんだか長くなりそうだな』

「ディーはああなると止まらないからね。まあそれほどクネスを心配しているってことだけど」


 ラウナは温かい瞳で二人を見守る。

 そして、俺の耳元まで近付くと


「それにね、ここだけの話ディーはクネスのことが好きなんだ」


 そう囁くように教えてくれた。


『ほほー!じゃあクネスもディーのことが?』


 俺はすぐさまラウナだけと会話出来るようにし恋愛事情を尋ねる。

 他人の恋愛事情ほど面白いものはそうそう無い。


「そうだといいんだけどね….....」


 ラウナの視線の先には先程の二人に混じり、ルエもいた。ディーの注意に乗っかるようにルエもクネスに言いたい放題に言ってる。

 その二人にクネスは色々反論を返してはいるが、ルエの時だけ視線が少し横向きで頬が赤い気がする。


『あ〜はいはいはいはい!』


 ディーはクネスが好きでクネスはルエが好き。

 はぁ~、若いっていいですなぁ!


『んで、ラウナはカイネが好きと』

「ぶっふ!ななな、何をいきなり」

『おんやぁ?顔が赤いぞぉ、ラウナ?』


 ディーとルエには見向きもしていなかったから適当に言っただけだったが、思いのほか当たっていたようだ。


『んじゃ、ちょっくらカイネとも喋ってくるわ』

「ん、え?」

『カイネ~、さっきラウナがね~』

「ちょっちょっと!ネキロム止まれ!」


 止まれと言われて止まる馬鹿はここにはいない。

 クールそうな奴が取り乱しているのが面白いという不純な動機ではなく、愛のキューピットになってやろうという俺の優しさからの行動だ。

 素直に受け取ってくれればいいものを。照れ屋さんめ。


「なんだか迷宮に行くのはお昼を過ぎてからになりそうですね........」


 皆の様子を見ていたエスが、ぼそりと呟いた言葉はそのまま現実となってしまうほど、俺達はお昼まで騒ぎ続けるのだった。


ブクマ、感想、評価よければお願いしますっ!ッス!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ