会話
「私の完敗だ。疑ってすまなかったね」
「まさか、アルイトが負けるなんてな。大したもんだ」
アルイトの部屋でカイズとアルイトは、目の前の少年を称賛した。
あの後、討伐の件の話をするために三人はアルイトの部屋に移動していた。
少年は、二人の称賛に軽く礼をするのであった。
「これが、ダート達を討伐した時の報酬だよ」
そう言ってアルイトは少年の前に金貨の入った袋を置いた。
少年は、手探りで袋をとると袋の口を開けて中身に手を入れて確かめる。
「偽物じゃあねえぞ。しかし、お前本当に目が見えねえんだな」
カイズは、感心して呟く。
「・・・」
少年は、再び正しいと言う感じで頷く。
その様子を見ていたアルイトがあることに気づき、より信じられないといった表情を浮かべた。
「君、もしかして、声が〝出ない〟のそして、耳も〝聞こえて〟いないんじゃ」
アルイトは、恐る恐る少年に尋ねた。
少年は、数秒もしない内に頷いた。
「何だとぉ!!」
「そうとしか考えられない。私達の受け答えにそして、馬車の受付嬢の子の話だと彼女の言葉が分かっていない様子だったらしいからね」
アルイトの話にカイズは信じられない気持ちになった。しかし、自分が見たダート達の討伐の瞬間を今でも鮮明なため自然と納得がいっていた。
そんな二人をよそに少年は、受け取った報酬を自分の懐へと入れていた。
『さてと、二人とも驚いているなあ。まあ、普通な反応だって師匠も言ってたし』
「なあ、君、君は一体何者なんだい?」
少年は、聞こえているのか、さあ、と手を挙げるだけだった。
アルイトは、少年の表情がここに来て初めて苦笑しているのを見た。
それから暫くして新しい馬車が来たためさっきまで乗っていた人達はそれに乗って護衛とともに街を出ていった。
出発前。
「今回は、盗賊は出ないと思うけど」
「何、念だよ。念。それにダート達がいなくなったからって安心できるわけじゃあないからな」
アルイトにカイズは、言う。
ダート達がいなくなり街に平和になった。しかし、だからといって盗賊が全て消えたというわけではない。そして、今でもどこかで活動をして襲っているとも限らない。そういった可能性からカイズは再び馬車の護衛を引き受けたのだ。
「それに、馬車には俺達なんかじゃあ歯が立たない奴が一人、乗っているしな」
「確かに」
アルイトは苦笑した。
今回は、例の少年が馬車に乗っていた。
つまり、カイズ達以上に頼もしい客(?)が乗っていることになるのだ。
「所で、あいつの名前を知らねえか?」
「名前かい?」
「ああ、そうだ。あんなすげえ奴滅多に見ないからな。次に会うか分からねえが記憶しておきたいのさ」
「えっと、確か、乗車名簿に書いてもらったんだ。私も彼に対する印象は大きかったからね。」
あの時の試合を頭に思い浮かべながら呟いた。
「白羽…天木 白羽だ」




