第184話:スキル覚え愛
全ての換金を済ませて家に帰ってくる。まず着替えて、その後自分の防具の匂いを嗅ぎ、まだ大丈夫だったので消臭スプレーだけで済ませておく。彩花は洗濯を申し出てきたので、洗濯をしておくことにした。
「さあ、ドロップの鑑定作業に入りましょうか。いつものサイトがまだやってくれてると良いんだけど」
「あそこのサイトにもいい加減いくらか寄付をする方法があるなら寄付をしても怒られない気がする。お金の使い方としても、普段お世話になってるし、何十万とするスキルを鑑定してもらってるのにタダでは申し訳ないって話したら爺ちゃんでも納得はしてくれると思うんだよな」
「幹也、お爺ちゃん子なのね。意外だわ」
「というか唯一生き残ってる肉親だからな。早く楽をさせてやりたい意味でも大卒じゃなくて高卒で働く道もあるって話はしてたんだが、爺ちゃん的には勉強して良いところ入ってお前のやりたいようにやれ、って言われてる」
「放任主義……というわけではないのね。気にせずやりたいようにやれって言われてるのは良いことだと思うわよ」
彩花が取り出したサイダーを一口飲みながら、二の句をうまく告げずにいる。俺がちょっと前に両親は死んでもういない、と言ったことを少し思い出したんだろう。
「まあ、そんなわけで寄付するかどうかはさておき、鑑定タイムだ。そしてこれが付箋紙。順番に撮影して、撮影したものに貼り付けていく。火魔法が出たら彩花が覚えて、マジックミサイルか雷魔法が出たら……どっちにしようかな。この先も確実に入手と使いまわしができるのはマジックミサイルだろうけど、手に入れに行きやすいのは雷魔法のほうなんだよな」
しかし、大量にあるな。午前中の分はもう全部見たとしても、まだ数枚ある。ほとんどがマジックミサイルの可能性があるが、まあ、それでも今日中に終わらないほどではない。ゆっくり鑑定していこう。
しかし、ここで問題が発生した。鑑定サイト、一日の鑑定枚数制限に引っかかってしまった。鑑定失敗を含めて一日十回までの鑑定しかできない上限に引っかかった。そして、これは寄付の有無にかかわらず、万人に平等、ということらしい。
仕方がないので彩花のスマホを借りて撮影をし直し、全ての鑑定をし終わる。まあ、常識で言えば一日に十枚もスキルスクロールを鑑定するのは企業人として探索者をしている人ぐらいだろう。俺みたいに個人所有のダンジョンをこっそりと持っていたとしても、ドロップ率や経験値効率まで同じようにおかしいことになっている人物はそうそういないだろうし、いたら目立っているだろうからもうバレていてもおかしくはない。
何とか彩花のスマホを借りてすべてのスクロールの鑑定を終わる。彩花のスマホで鑑定した中では、【マジックミサイル】が5枚、【火魔法】が1枚、【雷魔法】が1枚、という結果になった。さて、火魔法は彩花が覚えるとして、俺は雷魔法とマジックミサイルどっちにしようかな。エネルギーボルトがある分だけ雷魔法は今の所要らない、としておくのが良さそうかな。残りのスクロールは隠しておこう。
「じゃあ……マジックミサイルを覚えることにする」
「私は火魔法を重ねるわね」
それぞれ、【マジックミサイル】と【火魔法】のスキルスクロールを手にして、覚えると念じる。文字がスクロールから体に転写されていき、体内に入り込む。そして【マジックミサイル】の使い方が脳に刻まれていく。
マジックミサイルを一枚覚えたところで、次のマジックミサイルを再び脳に刻み、威力の増加を感じ取る。そしてそれを合計5回。マジックミサイルレベル5というところになった。これ、エネルギーボルトレベル8と比べてどっちが便利なんだろう。物理的に影響がない分エネルギーボルトのほうが使い勝手がいいのか、それとも物理的にも保護してくれるマジックミサイルのほうが潰しが効くのか。
実際に使ってみて比べるしかないな。今度オーク肉を集めに行くついでにオークチーフで使い分けをしてみよう。今年中にもう一回、ソロで三層とボスだな。威圧で道中のモンスターにも出会わなくなったおかげで三層に行くのも気軽になった。オークチーフも三十分に一回確認に来ればいいわけだから、あえてその場でオークを探すよりも、ひたすらボス狩りだけを目的にするためにダンジョン内で勉強してればそのほうが捗るのでは?
英単語カードとか用意しておいて、ダンジョン内でもそれを見ながら適当に回るほうが効率的かもしれない。今後のことも考えて用意しておこうかな。
よそごとを考えながらベッドの下の箱に残りの使わないスクロールをしまい込んでいると、彩花が目隠し用のえっちなDVDを手にして、そして呟く。
「幹也はこのぐらい胸があるほうがいいわけ……? 」
何やら要らぬ誤解を与えてしまったようだ。たしかにそのDVDはどちらかというと巨乳系のDVDだが、俺自身は大きさより形、形より味だと思っている。そう思いたい。
「それはあくまで目隠しだから。俺の趣味でそれ、というわけじゃないから。それに百回DVD見ても一回触れる方が大事だから。だから……気にするな。俺も定期的に見たりしてるわけじゃないし」
「そ、そう……それならいいんだけど」
ちょっと言葉を濁す彩花がかわいく見えてしまった。DVDのパッケージのお姉さんはたしかによく発達しておられるので、自分の胸と比べて劣っていると感じてしまったのだろう。これはフォローが必要だな。
ベッドの下の隠し財産を元に戻した後、彩花を後ろからそっと抱きしめる。
「もうすぐクリスマスだけど、当日受験生がフラフラしてるのはアレだしな。今日時間ギリギリまでイチャイチャしよう」
「……うん」
彩花の耳が真っ赤になるのが後ろからでもわかる。ある程度温かいダンジョンにいたからか、ほのかな汗の香りもする。いつもの嗅ぎ慣れた、でも嗅ぎ慣れたと言いたくない彩花の汗と体の香りだ。スウッと吸い込んで、よく匂いを咀嚼し、この匂いが少なくとも肉親以外では俺の物であることをしっかりと楽しむ。
「汗臭い? 」
「いや、良い匂い。俺のほうこそ汗臭いだろう」
「ううん、落ち着く匂いがするわ」
そのまま後ろから彩花を抱え込み、二人で抱きしめ合っていると、アカネのただいまーという気の抜けた声が聞こえてきた。
「ママのお帰りだわ。どうする? 」
「あえて気づかないふりでもしておこう」
「二人は帰ってきて……あら、あらあらあらあら」
アカネのことを考えないように、彩花のことだけを考えてひっしりと抱きしめ合ってキスを続ける。自分と彩花の周りから青い光が少しづつ出始め、アカネに吸い取られていくのがわかる。どうやらそれなりに大量の養分になっているらしい。やっぱり、神様はみんなスケベだというのは間違いないんだろう。アカネは部屋を出ていき、扉の向こうからそっと顔だけ出してこちらを覗き込んでいる。
それに気づかないふりをしてそのまま彩花とイチャコラし続ける。彩花がこっちに向きなおり、再びディープめのキスを始める。彩花はバッチリ目を閉じて、舌先の動きに集中しているらしいが、俺は薄ら目を開けてアカネと彩花両方を見るような感じでぼうっとしたような表情でその舌を受け入れる。
アカネが青い光を充分に吸い上げて、口元の涎をぬぐうようなしぐさをしたタイミングでアカネに声をかけるために唇を彩花の舌から離す。
「神様がのぞきとは中々良い趣味をお持ちのようで」
「神はあなたをいつでも見守っているものなのよ、そう、いつでもね」
彩花がわざとらしくアカネに気づき、そして顔を軽く赤くする。
「いやー、信者同士仲睦まじくてうれしいわぁ。高校卒業してすぐに妊娠出産なんてことにもなるかもしれないわね。そうなったら親子で信者ってことになるのかしら。楽しみね」
「ちゃんと避妊はするから大丈夫だ。むしろ、そうならないように神様にお祈りするぐらいだからな。その辺よろしく頼むよ神様」
「そこは神様に頼むところじゃないかもしれないわね。授け物はするけど奪う神様は悪霊の類よ。そして少なくとも私は悪霊ではないから、子供が欲しくなったらすぐ言いなさいね」
「俺と彩花の子供かあ。しかも神様の祝福付きなんてのは幸せなことなんだろうな……と、そろそろ彩花が持たなさそうだからその辺にしておいてやってくれ」
かなりの熱を持ち始めて、アニメや漫画だったら蒸気を上げているであろう彩花の頭を手で冷やしながら、よしよしよく頑張ったと背中をさすって応援する。手に当たるブラの感触が少し俺の下半身に反応をさせて、アカネがそれを敏感に読み取りニヤリとする。
「さて、そろそろ帰る仕度をしたほうがいいかもしれないぞ。もう暗いしな」
「そうね。今日はお疲れ様、そしてごちそうさま」
アカネがしっかりお礼を言って彩花を玄関まで見送る。彩花は「だからもう……」と言いつつ、外の寒い空気で頭を冷やしつつ帰っていった。
「あのまま帰って彩花が風邪ひいたらアカネのせいだからな」
「その時は神様特典で少し楽にしてあげるわよ。そのぐらいのことはできるようになったんだから」
万病の元と言われる風邪を楽にできることは地味にすごいことなのではないかと突っ込みそうになるが、あえてスルーしていこう。健康でいるのが一番だ。
「今年ももうすぐ終わりか……なんか早かったな、今年は。色々あったはずなのに気が付けばもう年末だ」
「年が明けたら共通テストと大学入試ね。気を抜いたらダメよ? せっかく私という神様の力を、十全と言わずとも扱えるのだから、使えるものは精一杯使ってうまく生き抜きなさい。他の人より損をする得をするなんて考えては駄目よ。人に限らず生あるものは生まれつき平等でいられることができないのだから、あなたはあなたのできる範囲でできることをするべきだわ」
「そこを無駄にしないということも大事……ということか」
薬師寺君のことがふと頭に浮かんでは消えていった。彼は俺の平等ではいられない部分の犠牲者、ということでもあるんだろう。後はやれるだけやる……か。
「よし、ご飯食べたら勉強するか。新規学部だから傾向と対策はできないにしろ、似た学部で出された問題は出てくる可能性が高い。もしそうでなくても、問題をこなすこと自体が勉強になるはずだ。今日はレベルも上がったし、更にオツムが賢くなっているはずだ。それに体をなじませていこう」
「その調子よ。頑張ってね、私の可愛い幹也」
こっから先はまた書き溜めて、出来上がったらまとめて予約投稿していきます。
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