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あの時助けていただいた地蔵です ~お礼は俺専用ダンジョンでした~  作者: 大正


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第179話:汚名返上

「なるほど、レベルアップはある、個人差はあるがレベルは上がっていく、レベルが上がることで見た目や賢さや力が……そういえば本条は体育祭でもしっかり活躍していたな。あれもレベルアップの恩恵だと考えていいのか? 」


 鬼沼先生がふと思い出して尋ねてくる。そんなこともあったなあ。


「綱引きの最後尾に鬼がいたとか言われてましたね。あの時点である程度のレベルアップをしていたのは確かです。おかげで目立ってしまったので、ダンジョンのおかげなのか、と聞かれそうになったのは間違いないでしょうけど」


「あれもダンジョンのおかげということは、一学期を捨ててでも自分のレベルアップに賭けてダンジョンに潜り出す……あぁ、でも誕生日が来るまではダンジョンには潜れないんだったな」


「そうなります。俺も結城も誕生日が四月だったのでシンプルに潜り始めることが出来ましたが、生まれが遅いか早いかだけで差が付くのは納得いかないでしょうね」


「まあ、四月生まれや五月生まれのほうがスポーツの分野では得になる、という統計結果もあるぐらいだし、実際にダンジョン探索でも同じく四月五月生まれのほうが得になる、という意味ではそこも一つあり、ということにはなるのか」


 自分で勝手に納得して鬼沼先生は黙りこくってしまった。


「実際の所、どんなふうに変わるんだ? 賢くなるって言っても色々意味とか方向性が違ってくるだろうとは思うんだが」


 学年主任はレベルアップで感じる賢さについて質問がしたいらしい。風向きがちょっとずつ変わってきたな。


「そうですね、まず常に頭がすっきりしてて単語や文章がスウッと頭に入ってくるようになります。あと、明らかに計算結果や暗算する時の桁数が増えましたね。それから……ちょっと聞いた話をすぐに思い出せるようになりました。頭の近いところに引き出しがあってすぐに引っ張り出せるような感覚、という伝え方で通じるかどうかはわかりませんが」


「ああ、たしかにそうだな。俺もレベルアップ? を味わって以来今まで以上に英単語が素直に頭に浮かぶようになったし、リーディングもヒアリングも素直にできるようになったし、多分ライティングやスピーキングもよどみなく出来るんじゃないかと思ってるところだ」


 そう言えば隆介は英語が少し苦手だったな。本当に少しなのが基本スペックの高さを見せつけられているようで気にいらないが。


「そんなわけで、今でも時々潜ってダンジョン巡りの勘を失わないようにしているのと、ちょびちょびと上がっていくレベルに対して体を慣らしているところではありますね。決して無理して長く深く潜るんじゃなくて、勉強の合間のリフレッシュ時間として潜ってるぐらいにとどめているので、他の生徒に見られたりしている可能性はかなり低いと思います。あと、こっちのほうがおそらく階層深くに潜っているのでそれもあると思いますが」


「なるほど……で、そこまで実力をつけられたのもレベルアップのおかげで間違いないのか? 」


「間違いない、とまでは言えないですが、影響があるのは否定できないと思います。実際モンスターヘの手ごたえが段々小さくなってきていますし、そろそろ次の階層へ潜りたいところではありますね。また予定があえば、ですけど」


「佐々木先生、そういうわけですのでカンニングの線は薄いと思ってよいのでは? 」


「あのー、そもそも、どこからカンニングしてるんじゃないかって話になったんですか? 」


 疑問になっていたカンニング疑惑について問いただす。


「それは……」


 全員が佐々木先生のほうを見る。佐々木先生は誤魔化すように咳払いをして、それから自分の主張を曲げずに俺に言いがかりをつけ続ける。


「いきなり生徒の得点が上がるなんて普通はあり得ないからな。まず疑うべきはカンニングだろう? 」


「つまり佐々木先生は、教科が複数あって、それぞれ担当の先生も違って、保管方法も違うだろう、と思われるのに全部をいっぺんにカンニングすることができるとおっしゃるんですね。そんな力があるなら普通にいい点とれると思うんですが」


「しかし、それ以外に考えつかないだろう! 」


「それだけ努力したと、生徒を評価しない先生であることはわかりました。高校生活が終わりに近づいたその時期に、教師に対してそんな評価をつけることになるというのは非常に悲しいことですね。最後まで綺麗な思い出だけを残して学校を去りたかったですね」


 さあ、地味に煽り続けよう。佐々木先生の顔が更に赤くなり、しかし言い出す言葉も思いつかないのか、顔が赤いまま「失礼! 」とそのまま生徒指導室を出ていってしまった。言い過ぎたかな。


「本条、ちょっと言い過ぎだぞ」


 鬼沼先生に注意される。まあ、俺も言い過ぎだとは思う。


「すいません、でも、学生生活が終わってしまうかもしれないという状況で何の証拠もなく疑いをかけられて今までの努力を消し去られることに我慢できなかったので、このぐらいの嫌みぐらいは許容範囲にしてくださるとありがたいのですが」


「まあ、多少の問題はあるにしろ、基本的に品行方正であることに違いはないからな。結城も小林もだが、本来疑うべきではない所を三人一緒にいることがたまにあるようだからまとめて呼び出すような形になってすまなかったな」


「まあ、俺も考えなかったわけじゃないですからね。幹也だけ解答知ってるんじゃないかとか」


「おい」


「まあまあ。でもこれで疑いは晴れたようだし、これで大手を振って歩けるってもんだろう? 良かったじゃないか」


 元々大手を振って歩いていたのを変なやっかみを付けられて日陰者にされそうになった自分自身も含めて、これで一安心というところだろうか。彩花も緊張が解けて何よりといったところだろう。


「さて、疑いが晴れたところで一つ頼みだ。今日の話はここだけの話にしてやってほしい。佐々木先生の評判はお前たちの中でだけ最低点をつけておいてくれて構わないから、外に向かって大騒ぎしながら証拠も何もないのにカンニングを疑われた! と評されるのはいろんな意味で他の生徒を刺激してあまりよろしくない結果を生みがちだからな」


 隆介と彩花とそれぞれ見合いながら、コクリと頷き合う。よし、ここだけの話にしておこう。いつまでも恨みたらしく心に引っかかりを残すぐらいなら、あいつは最低な教師だと一言で片づけてその先を気にしないほうが心の健康にもいいはずだ。


 話を終えたところでチャイムが鳴る。どうやらキリの良いところで話し合いは終わってくれたらしい。


「ちょうど昼休みも終わりか。次、移動教室だったりした場合は遅れた理由は俺のせいにしてもいいからな。貴重な昼休みを奪って悪かった。今日はありがとう、おかげで少し探索者について知れたよ」


「いえ、こっちも疑惑が晴れて良かったです。いらん疑惑でしたが」


「あんまりいじめないでくれ。こっちもこれ以上は佐々木先生に何も言わせないつもりだし、これ以上生徒のプライバシーや罪の捏造を続けたりお前たちの非難を続けるようなら、学校側としてもいくら生徒指導部長だと言っても限度はあるからな。それなりの対応をさせてもらうことになる」


 言ってしまえば上司であっても容赦せん、ということなんだろうが鬼沼先生はこちらの味方のようだし、他の先生方も俺の説明である程度納得してくれたようだ。本当に効果があるかどうかまでは保証できないと断言しておいたしな。


 それに何より、生徒の誕生日によっては何の効果も生まないことをきちんと説明したわけだし、金もかかる話だし何よりも自分の命を懸けてやる仕事になるわけだ。そこに自分の将来を賭けてまでやり抜くものじゃないというのはわかってもらえたと思う。


「では、品行方正な生徒としては授業に戻りますので失礼します。あと、これは独り言なんですが。うちの両親が教育熱心な親でなくてよかったですね。もしも普通の家庭であったなら、怒鳴り込んで県の教育委員会へ直接怒りをぶつけに行くところだったかもしれませんね」


「そこまで考える頭が佐々木先生にあったなら、そもそも今日の呼び出しはなかったと思うぞ。少なくとも俺たち三人は味方だ、それだけ覚えててくれればいい」


 そういうと、お茶を淹れに向かう鬼沼先生。やっぱり、前のクイックインスタンスダンジョンの時も思ったが、基本的にこの人は生徒思いなんだよな。三人立ち上がって頭を下げると生徒指導室を出ていく。


「さて、教室に戻るか」


「私移動教室だから急がないと。お先に」


 彩花はタタタッと真っ先に駆け出して行った。隆介と二人になる。


「なあ、幹也」


「なんだ? 改まって」


「お前の言い分だと、俺が覚えてる限りの範囲で少し時系列に違和感が残っているんだが……それについてはいずれ説明してくれるのかな? 」


 流石に気づいたか。多分最初の中間テストのことだろう。あれについてはどう頑張っても追いつけるような内容ではない、ということだろう。


「そうだな。話せる日が来たら必ず話す。今の所はさっきの説明で納得しておいてくれ」


「……わかった。信用しておくことにしよう」


 そのまま隆介は教室に戻っていったので、俺も遅れないように教室へ戻る。教室に着くと、古文の担当教師が俺の姿を見て一言「おう、そっちの話は終わったか? 」と話しかけてくれたので、「ええ、無事終わりました」と報告すると、遅刻にもせずにそのまま素通しにしてくれたので安心して自分の席に戻ることが出来た。


「本条、なにしたんだよ」


 前の席の関口が振り向いてこっちにちょっかいをかけに来る。


「何もしなかったんだよ」


「なんだそりゃ。まあいいや。何事もなく帰ってきたってことはカンニング疑惑でもかけられてたのか? 生徒指導部長の佐々木は何でもまず生徒を疑ってかかるからな。お前もその被害者だったってことだろう」


 どうやら、あの生徒指導部長は生徒を信用しないことについては天下一品の信頼度を誇るらしい。これでまた落ち着いて探索に出かけられるし……隆介のほうはどうしようかな。いつになったら本当のことを話せるようになるか。受験が終わってそれからぐらいのほうがいいかもな。

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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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