第177話:いつもの結果発表
期末テストの結果が返ってきた。ほぼ100点か90点代後半のテストが返ってきて、この点数数点の差で順位が入れ替わるデッドヒートレースを味わっている立場としては、100点で帰ってきたテストを見てほっとするところではある。
そもそもトップ狙いで期末テストのランキングに参加しているわけではなく、ただそこにランキングがあるから参加せざるを得ない、ということでランキングに名を連ねている側としては正直順位なんてどうでもいい……と最初の一回は思っていたが、後から追いかけられるスリルと自分の前に圧倒的な実力で立ちふさがる石畑さんの実力を考えると、上には上がいるものだということを実感させられる。
ダンジョン探索もそうだが、いくら簡単にレベルを上げられると言っても積み上げられてきた実践的な勘や積み重ねてきたスキルの差を埋めて頭一つ抜けられるかと言えばそれもまだ難しい。もっと極端なレベルアップやスキルの習得が必要だろう。そのためにももっと自宅ダンジョンには頻繁に通ってスキルやレベルを上げていかないといけないな。
冬休みは勉強も大事だが、基礎能力向上のために十層から十二層を回って自分のレベルそのものを上げていくことも考えていかなければならないか。うむ、毎日潜るとは言わないが、頻繁に潜ってちょこちょことレベルを上げていくつもりで行こう。換金できるかどうかは後回しにして、しっかりやっていこう。
一通りの答案が返ってきて、自分の合計点は把握した。後は他の人の頑張りと、俺より上の順位に何人いるか、だけが気になる点だな。いくらランキングに乗るだけとはいえ、二回連続2位を維持していたんだから続きで維持できているかどうかは気になる点だ。
……そうだな、そういう意味では一年からひたすら2位を維持し続けてきた薬師寺君の気持ちはものすごくわかる気がしてきた。内心では凄く焦っていたのだろう。自分が手を抜いたのか、それとも賢さが維持できなくなってきていたのか、と。その不安があの中間テストの後の詰問だとするなら、俺も同じことをしていたかもしれないな。
さて、昼休みになって貼り出されているいつものランキングの場所へ行く。今回は受験も控えているとあってか、順位を見定める学生が多いその分だけ、三年生の貼り出しのはひときわ人口密度が高かった。
さて、俺もそんな人口密度の中の一人なのだが……と、ランキングに近づく前に隆介と彩花と合流。いつも通り三人で掲示板に向かう。
「三人とも一枚目いきなり見ていいのか? 成績が下がった様子は? 」
ランクダウンしてないよな? と暗に茶化す隆介。
「なんだ、隆介はそんなに自信がないのか? 」
「俺は……手ごたえあったから問題はないかな。流石に俺がここからランクダウンするのはないと思うぞ」
「彩花は? 」
「私は合計得点がかなりいい点だったから問題ないわよ。一枚目には載ってる気がするわ」
「ということだ。素直に一枚目だけ見に行こうぜ」
すたすたと歩いていくと、人だかりに紛れながら前を目指す。さすがに自分の順位を見て落胆する奴も、掲示の前で喜ぶ奴もいて人それぞれってところか。
さて、大分前にきたことだし、そろそろ見える頃だ。何位かな……と。20位から順番に見ていく。
まず、10位までの間に見知った名前なし。彩花もまだいないのでもしかしたら落ちたのか?と不安になったが、7位に彩花の名前を見つける。
彩花も手応えの分を感じ取れただけの順位にはなっているようだ。
そして、隆介が5位。隆介も最高記録だったようで、ガッツポーズを決めていた。そして俺は……2位。3位は薬師寺君で固定のようなので、へたれず頑張ったのは間違いないらしい。しかし、石畑さんがほぼ満点で1位を維持していることを考えると、彼女の強さの源泉はどこにあるのだろう。ちょっと気になってくるな。
石畑さんは相変わらずの1位。取れた得点の多さよりも、落とした点数のほうが何だったかが気になるほどに完璧だ。もう彼女はこのまま期末テストまでトップをひた走って、自分の行きたい道に進めるようになっているのだろう。多分このレベルで維持できているなら東大にでも入れるような気がしてきた。自分が東大に入れるレベルだとはとてもじゃないが思えないが、石畑さんなら出来るんじゃないかという期待を寄せざるを得ない。
ちなみに俺と薬師寺君の得点差は3点。俺と石畑さんの得点差は5点だ。本当にギリギリの勝負だったと言えるだろう。なかなかこれは、次回も楽しみになってきたな。
ふと視線を感じたので視線の持ち主を探すと、物陰から薬師寺君がこっちを見ていた。また負けた……という視線なのか、それともグギギギ……くやしい! という視線なのかは距離があってわからないが、とにかく一方的な視線ではあるが、侮蔑や差別、それから憎しみみたいなものが積み重なったものでないことは確かだな。
「ふむ、幹也は2位維持か。流石と言える」
「隆介こそ、よく5位まで順位を上げたな。しっかり勉強してたようで何よりだ」
「若干上から目線なのが気に入らんが、まあ三回連続後塵を拝している立場だからな。甘んじて受け入れよう」
しかし、レベルが十代後半まで上がっている彩花よりも点数が上の時点で隆介も充分異常な順位であると言える。レベルアップの基本的な人間の能力の上がり方も、人によって違う、ということなんだろうか。だとすると、仮に俺と同じレベルまで隆介が上がってしまうとすると、どれだけの実力を持ち合わせることになるんだろうな。
レベルアップの恩恵を充分に得られた俺や彩花がここで足踏みをしていることを考えたら、まだまだ勉強が足りないな。次は石畑さんに更に追いつけるように研鑽していこう。
すると、昼休みなので……というわけではないが、呼び出しの放送がかかる。
「3年C組、本条幹也、3年B組、結城彩花、3年E組、小林隆介。昼休み中に、なるべく早く生徒指導室まで来なさい。繰り返す、3年C組、本条幹也、3年B組、結城彩花、3年E組、小林隆介……」
お呼び出しがかかった。しかも俺たち三人だけピンポイントに。多分、期末テストの結果についての聞き取り調査みたいなものだろう。最近ダンジョンにもそこそこ潜っているにもかかわらず成績が向上しているのはどういうことなんだ? という話でもしたいのだろうか。
「お呼び出しみたいだな。どうする? サボるか? 」
「サボったら放課後になるだけだろう。授業をサボる口実にもなるし、話を聞きに行くのは悪くないな。とりあえず飯食って、それからで良いんじゃないか? 腹が減っては説教や説得されるにしても脳に栄養がないと上手い返しが出来ないかもしれない。昼休み中になるべく早く、って言ってるし、飯ぐらいは食う時間は用意してくれるってことだろうさ」
「そうね。たまには教室で食べましょう。呼び出しトリオということで一緒に食事してても不思議はないかもしれないわ」
「じゃあ、とっとと食べるか……隆介は急いで購買行ってきてくれ。あんまりゆっくりしてると本当に怒られそうだからな」
「そうだな……サッと行って帰ってくるから先に食べ始めていてくれ」
そういうと急いで購買に出かける隆介の後姿を見送って、彩花と二人教室に戻り、俺が彩花の教室へ出かけることになった。
「机借りるけどいいかな? 」
彩花の隣の机の人に声をかけておく。無断で机使って汚しただのなんだの言われる前に一言声をかけておく。
「ええ、もう好きなだけ使っちゃってください、どうぞ、イチャイチャして、早く」
何やら勘違いをされているみたいだが、さっきの放送を聞いていなかったのだろうか。
「さあ、早く食べて移動する準備しましょ。小林も急いで来るだろうし、こっちが食べるのが遅くて時間がかかって昼休みギリギリに……なんて話になったら困るわ」
「そうだな……って、隆介が走ってくるのが聞こえる。本当に早いな」
こっそり【聞き耳】を使うと、こっちの教室に向かって走り込んでくる足音が一つ。足音の大きさと歩幅と近づいてくる方向を考えるに、隆介である可能性が一番高かった。
そして食べ始めて一分ほどして、教室で合流する隆介。その手にはしっかり焼きそばパンとサンドイッチが握られていた。
「おう、お待たせ。さあ、さっさと食べて早く教師陣の質問に答えてやろうぜ」
「その口調だと、途中で出会ったみたいな感じに聞こえるが」
購買からこっちへ来るまでに教師の内誰かと遭遇したのかな? そう考えるのが自然だな。
「ああ、鬼沼に早めに来てくれよって言われたんで、急いで飯食って三人で向かいますって伝えておいたぞ」
「なら、ちょっとは時間の余裕もあるし、教師側にも時間の余裕ができたってことになるんだろうな。少しだけ落ち着いて食べる余裕がありそうだ」
精神的に落ち着きを取り戻したところで、今日の昼食をちゃんと味わって食べる余裕も出てきた。彩花と弁当のおかずを交換しながらゆっくりではないにしても手早く食事を終えて顔をそろえて生徒指導室へ向かう。
「前に生徒指導室に呼び出されたのは……確か一学期の期末テストの直前か」
「そうだな、ダンジョンに潜らないでくれのお願い以来か。基本的に生徒指導室には縁がないほうが学生としては好ましいところだろうが、はてさて俺らの場合はどうなんだろうな」
「そうね……今回も怒られると決まっているわけでもないんだし、気楽に構えていればいいんじゃないかしら。なんでダンジョン通ってるのに成績が向上してるんだ? お前らどこかから答案盗んだり、ダンジョンでそういうスキルを身に付けたりして事前に知ってたりするんじゃないだろうな? ぐらいのことは言われそうではあるな」
「その場合の切り返しは幹也としては考えてあるのか? 」
「うーん……一応隆介にも説明はしたが、レベルアップの恩恵ということで押し通そうと思っている。ただ、この話は他の生徒にはしてないからひいきみたいになるかもしれないが、俺も俺もとダンジョンに通い出す生徒が増えないためにもできるだけオフレコで話を通しておきたい、ということにすればいいんじゃないか? 」
「そうだな。その線で行ってみよう。詳細は幹也に任せる」
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