90 ポコポコの妹
『だったら、あんないをつけるよ。もりのたみのむらへいくには、ほくとうにすすまなければならない。あそこのちけいは、けわしくてふくざつだからね。』
ウホウホは、住居を出て、誰かを呼びに行かせた。
しばらくして現れたのは、小柄で精悍なメスの角猿だった。
『オクサンのイモウトの、プニプニ。からだはちいさいけど、はやくてつよいよ。』
プニプニは、険しい目でこっちを見ている。
『にんげんのあんない? にんげん、よわいのに?』
プニプニは、人間が嫌いなようだ。
『ごめんね、ゴロゴロ。たいていのツノザルのニンゲンにたいするかんじょうは、こんなもんだよ。ニンゲンがよわくないって、おしえてあげたらどうだい?』
ウホウホが、いたずらっぽく笑っている。
『こんな狭いところで手合わせするのか?』
『そんなことしなくても、いかくするだけでだいじょうぶだよ。どうくつのなかでやってただろ? よわいやつがたくさんたかってきたときに。』
ああ、あんなことでいいのか?
僕は、精気を極限まで凝縮させ、怒気を爆発させる。
「ズンッ!!!」
空気が弾け、唸りを発する。
住居が暴風にさらされたようにきしみ、震える。
ポコポコとプニプニは声こそあげないが、おびえた顔をして、防御の姿勢をとっている。
住居の外からは、小猿の悲鳴も聞こえてくる。
『また、つよくなったんじゃない? おどろかされるね、ボクのししょうには。』
ウホウホは、怯えるプニプニを見て、続ける。
『ツノザルはやせいのけものだから、つよいよわいにびんかんなんだ。よわいものをあなどり、つよいものにしたがう。もう、ニンゲンをばかにしたり、しないんじゃないかな。こんな、バケモノじみたニンゲンばかりじゃないとおもうけどね。』
そう言って、ズッキーニを振り向く。
『そうともいえないか?』
僕らは翌朝、ウホウホたちに見送られて、出発した。
見送る角猿たちの顔には、恐怖がうかんでいた。
ウホウホは、それを見て愉快そうに笑っていたが、僕は苦笑いを返した。
プニプニは、僕を意識して、距離をとって歩いていた。
僕は、そのうち慣れるだろうと、放っておいた。




