9 マグマの短剣
ここに住み始めたときに、僕は14歳ということになった。
「おおかた、そんなもんじゃろ?」
僕を上から下まで眺め回して、ばあちゃんが言った。
「ふ~ん。」
住み始めてちょうど1年経った日に、ばあちゃんが誕生日を祝ってくれた。
いつもより品数の多いおかずに、滅多に捕れない珍味である、大トカゲの丸焼きも出してくれた。
食後には、プレゼントも用意してあった。
透明感のある赤黒い刃が、妖しく輝く短剣を、ばあちゃんはくれた。
刃は赤い力を放っていたが、それは攻撃性の赤とは違う、マグマの赤だった。
「気をつけて使うんじゃぞ?この剣は普段は冷たいが、お前が力を流し込めば、灼熱のマグマを放つ。大火傷をするぞ。」
短剣を持って、ばあちゃんと外に出た。周りに燃えるものが少ない、岩場に来ていた。
ばあちゃんは、マグマの短剣を持ち、岩に向かって集中していた。
しばらくすると、ドロリと、赤いマグマが剣先からたれた。
仔犬のフンくらいのマグマだ。
地面にたれたマグマは、ジュージューという音を立てて、草を焦がしていた。
何に使うんだよ?とは思ったが、言わなかった。
「ありがとう、大事にするよ。」
かわりに言った。
ばあちゃんは、満足そうにうなずいていた。
1人で外に出るたびに、マグマの短剣を持ち出していた。
「奇妙」な短剣にしておくには、美しすぎたからだ。
僕は、いろいろな精気の流し方を試した。
力加減、感情によって、反応が変わる。
マグマが出たり、熱気が出たり、熱湯が出たり、炎が出たりする。
出方もまちまちで、扱いにくい。
思い通りにならずに、苛ついて力を込めたときがいちばん勢いよく炎が出たが、出る方向を制御できずに、自分が火だるまになりかけた。
やはり、穏やかな気持で扱ったときがいちばん制御しやすかった。
マグマの短剣は「奇妙」な短剣から、「微妙」な短剣に格上げになった。
そしてマグマの短剣は、物騒なので、普段は持ち歩かないことにした。