10 街の人
住み始めて1年半ほどたった頃、遠くに人の気配がしたことがあった。
それをばあちゃんに言うと、ばあちゃんは目を見開いた。
「ほんとうか?ワシには感じ取れんが、お前は感覚が強いからな。」
ばあちゃんは、僕を案内にして、人の気配の方へと向かった。
「探りに行けば、相手からこっちが気づかれるおそれもあるが、どんなやつらが近づいて来るのか知る必要がある。」
ばあちゃんが、僕に説明した。
「人間が一番、邪悪になれる生き物じゃ。」
険しい顔で、吐き捨てるように、ばあちゃんは言った。
なんか、こわいことを言っている。なんか、あったのかな。
人の気配までの距離をばあちゃんに教えながら、慎重に近づいて行った。
すぐに、ばあちゃんにも人間の気配を捉えられるようになり、ばあちゃんは僕を振り返った。
「うむ、気配を上手に消しているな。」
ばあちゃんは、満足気にうなずいた。
小高い丘の上に伏せて下を見下ろすと、遠くに3人の人間が歩いているのが見えた。
僕は目に精気を集中させると、3人を詳しく見た。
1人の女と、2人の男。
杖を持ち深緑のローブを着た女が先頭を歩いている。
皮の鎧に鉄の胸当てをした背の高い男は、大剣を背負っている。
ゴツくて背の低い男は、クサリカタビラを着ていて、腰に斧を下げている。
全員、穏やかではない気配を放っている。
その中でも、ローブの女は、紫色の嫌な気配を漂わせている。
あれが、悪意というものなのかもしれない。
ばあちゃんは、しばらく観察したあと、僕を振り返った。
「街の者たちじゃ。たいしたことはない。小者じゃ。」
安心したように、僕にうなずきかける。
「おおかた、森で素材を取るか、自分の力を磨きに来たんじゃろう。あの程度の力じゃ、じきに森に浄化される。」
また、こわいことを言っている。
でも、確かにあの3人からは、こわさは感じなかった。
あの3人の実力では、1人で大うさぎを倒すこともできないだろう。
ましてや、3人でも大猪にはまったく刃が立たない。
ばあちゃんと僕は、3人を放って、帰ることにした。




