12 大イノシシ
ばあちゃんと生活を始めて、2年ちょっと。
もう、ばあちゃんに剣の指導をしてもらうこともなくなった。
もちろん、1人では毎日練習を続けている。
今では、僕のほうが動きが早いし、力も強い。ばあちゃんの巧みな技も、全部僕は、身につけた。
僕が、ばあちゃんに勝っても、ばあちゃんは悔しがらずに、喜んでくれた。
最近では、狩りは僕が1人でやっている。
解体と料理は、ばあちゃんがほとんどやってくれる。
今日は、大イノシシを狩りに来た。
2年ぶりの対面だ。
同じ個体とは限らないけど、大イノシシは、だいたい同じところを縄張りにするようだ。
それに、大イノシシはなかなか長寿だと、ばあちゃんが言っていた。
別に、借りを返す、なんてことは考えていない。
僕は弱かったから、ヤツのエサになりかけた。
でも、僕はちょっと丈夫で、大イノシシには噛み切れなかっただけだ。
でも、剣の修行をした今なら、大イノシシにも勝てそうな気がする。まぁ、ひとつ腕試しだ。
彼らの精気は強いので、簡単に見つけられる。
木の陰からのぞくと、巨大な大イノシシが寝転んでいた。休んでいるから、体から立ちのぼる精気は緑色だ。怒っていないし、攻撃的でもない。
大イノシシの前に出て、抑えていた気配を開放してみた。
大イノシシは目をカッと見開き、サッと立ち上がった。
大イノシシの体からたちのぼる気配は、赤く激しいものに変わる。
瞬間的に、大イノシシは突進してきた。
僕は、横によける。
僕には、余裕があった。
通り過ぎた大イノシシが方向転換し、もう一度、突進してくる。
やはり、余裕を持って横によけることができた。
が、大イノシシは僕の横に並んだ瞬間、勢いのついたまま自分が転がることもかまわずに、体を目一杯、振った。
大イノシシは自分の遠心力で、激しく転がっていったが、僕も大イノシシの尻に跳ね飛ばされ、空中を飛んだ。
狩りというものは、何が起こるかわからない。まだまだ自分は未熟だ。と、ぶざまに空中を飛びながら反省する。
大木に打ち付けられる寸前、腹筋に力を集中、強く回転し、大木の幹に真横になって両足を着いた。
大木を力強く蹴り、大イノシシに向かって飛びかかる。
大イノシシが近づくと短剣を抜き、精気を込める。
大イノシシの頭に精気を流し込むと、大イノシシは崩れ落ちた。
その瞬間、身体に力がみなぎる感覚があった。
今までに感じたことのない感覚。
僕はこの瞬間、少しだけ強くなった気がする。
大イノシシは重かった。
下に潜り込み持ち上げたが、大きすぎて両手両足を引きずってしまう。
河原に転がして、ばあちゃんを呼びに家に帰った。




